路地裏生活をしていた私ですが、実は騎士様の実の娘でした

上野佐栁

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第二章

高木悠美

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 なにも思い出せない。前世の私はどうやって、アリスハートのことを知ったの?その漫画のタイトルすら思い出せない。

 「......ここは?」

 「アリス‼︎」

 「パパ、兄さん?どうしたの?」

 「大丈夫か?」

 「大丈夫ってなにが?」

 「アリスは倒れたんだよ」

 「えっ?」

 「丸一日目を覚さないで心配したじゃないかよ」

 「ごめんなさい」

 コンコン

 「誰だ?」

 「モウです。団長入ってもよろしいですか⁇」

 「ああ」

 ガチャ

 「アリス大丈夫か?」

 「モウ⁇」

 「やはり思い出せないか?高木悠美のことを......」

 「うん。何度思い出そうとしても思い出せない。何かが引っかかったみたいに記憶が止まってる」

 「......」

 「話は聞いたよ。本当に転生者なんだね?」

 「うん」

 「アリス。お前はどうやってこの世界のことを知った?それすらもわからないのか?」

 「何かの本で見た気がするけど、名前が思い出せない」

 「やっぱり誰かが消したんだ」

 「どういう意味だ⁇」

 「アリスが前世のことを思い出されたらまずい人物はひとりしかいない」

 「......メリヤス」

 「ああ、あいつしか僕も思いつかない」

 「じゃああいつを倒せば元通りってことか?」

 「いや。そうはいかない」

 「なんでだよ!」

 「きっと、禁断の魔術を使い、アリスの前世の記憶を消した。だからそう簡単には解けない。神である僕でもかなりの時間を要する」

 「そんな!」

 「だったら私が禁断の魔術を使えばいいの?」

 「なにを言っている!」

 「禁断の魔術は精神が崩壊する可能性だってあるんだぞ?」
  
 「でも同じ、アリスハートなら使える」

 「アリス!」

 「......」

 「アリス?」

 「なんでそんなに目が虚なんだ⁇」 

 「まさかもう禁断の魔術を使ったのか?」

 「いや違う!アリスの脳に誰かがリンクしたんだ」

 「そんなことができるのか?」

 「ああ、禁断の魔術ならできる。だが、それをできるのはメリヤス以外いないはず。こんなことをしてもメリットなんてないはずだ」

 「なんのつもりでこんなことを?」

 「わからない」

 「あれ⁇真っ暗?ううん違う。周りに何かあるけど見えない」

 「まだ思い出してはくれないの?」

 「だ、誰⁉︎」

 「......」

 「女の子?」

 見た目はそう五歳の女の子。黒髪黒目、どこで見覚えがある容姿。でも顔だけが見えない。どうして?

 「私がこの世界のことを......ううん。アリスハートを知ったのは五歳の時だった」

 「え、えっ?」

 「とある本屋さんで寂しく棚の隅に置かれた本がなんだが、魅力的に感じて購入した。その時から私はあの漫画のファンになった」

 「なにを言っているの?」

 「新刊が出るたびに購入をし続けた」

 「......」

 「おかしいって思わなかった?」

 「おかしい?一体なにが?」

 「あの漫画は私以外は誰も買ってない。だから普通は打ち切りにされて、新刊なんて出ない」

 「......っ!」

 「だからあの漫画は私だけが持っている。なぜならあれはアリスハートの魂のカケラからできた漫画たちなのだから」

 「......」

 一体なにがどうなっているの?目の前にいる女の子は敵?それとも味方?わからないけど、今思えば確かに誰もあの漫画は知らなかった。

 「そろそろ思い出す時間だよ。こんなところで立ち止まっている暇なんてない。私はあなたが思い出せるようにサポートをするだけ」

 「私の名前は......」

 思い出せそうで思い出せない。喉のところで何かがつっかえた感じだ。

 「私が誰なのかはもう知っているはずだよ。あの漫画のタイトルの最初の部分は赤きだよ」

 「......赤き騎士の物語」

 「そうだよ」

 「思い出した。あの時私はあの漫画がとても欲しくて欲しくて、お父さんやお母さんに無理言って買ってもらったんだ」

 「やっと思い出してくれた?」

 「でもどうして、あんなに欲しかったんだろ?」

 「それは......寂しそうだったから」
  
 「それだけ?」

 「そうだよ。まるで、今の私みたい」

 そうだ。あの時の私も引っ越したばかりでお友達がいない私となんとなく似てたから買ったんだ。あの漫画とお友達になりたくて買ってんだ。

 「......ありがとう」

 「私の顔も思い出してくれた?」

 「うん。あなたがいてくれたから私は思い出せた。ありがとう。高木悠美!」

 「どういたしまして」

 そう言い、光が見えた。そして、だんだんと目の前のみんなが見えるようになってきた。

 もう忘れない。私のこの世界に来るきっかけになった、赤き騎士の物語をもう忘れない。
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