路地裏生活をしていた私ですが、実は騎士様の実の娘でした

上野佐栁

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第三章

メリヤスの本音

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 前回のあらすじ。怪しい手紙をフランソワから受け取りひとりで本音の洞窟に来た私だったが、そこでメリヤスが襲いかかって?まさかの洞窟が崩壊し私たちは洞窟のさらに下へと落ちていったのであった。

 「アリス‼︎」
  
 「......本当に鬱陶しい」

 肝心のメリヤスは本音の洞窟にやられている。

 「アリスが好きで好きでたまらない‼︎」

 「あっそう」

 「冷たいよぉおおお」

 「いいから離れて。暑苦しい。鬱陶しい」

 ちなみに私も少しづつだが本音の洞窟に侵食されつつある。

 「アリス!私の側で死んでよ!」

 「嫌だって言ってるでしょ?」

 「アリス‼︎」

 「......ねぇ、ひとつ聞いてもいい⁇」

 「何を?」

 「どうして、私をこの世界に呼び寄せたの?何か理由があったんでしょう⁇」

 「......」

 「あの時のメリヤス......ううん。アリスハートは悲しそうな顔をしていた。それはなぜ?」

 「不幸だったから」

 「えっ?」

 「何も手に入れられずに死んで。死んだ後もずっと苦しかった。この目のせいで意識だがずっとあって、何もできずに何百年と時が流れて逝ったの」

 「ん?何百年⁉︎」

 「そうだよ。すぐにあの禁断の魔術を使えたわけじゃない。私だって使うのにそれ相応の時間の力を費やしたんだから」

 「......」

 アリスハートがそんなにも長い時間意識がありただ痛い思いをしていたの?

 「私だって、アリスが不幸になってほしいだなんて思ってない」
  
 「......メリヤス」

 「あの漫画を優しく抱きしめてくれた時は嬉しかった」

 「......」

 「やっと誰かに見つけてもらった。だから知ってほしかった。私の過去も人生も痛みや苦しみも......知ってほしかったの」

 「だから私を選んだの?」

 「そうだよ」

 「メリヤスは今後悔しているの?」

 「してないよ。後悔なんてしている暇ないもん」
  
 「私もメリヤスも大勢の人を殺しちゃったね」
  
 「そうだね」

 そっけなく答えるメリヤスだが、少し涙声になっていることに気づいた。

 「メリヤスは本当にケルベロスを復活させたいの?」

 「ううん。させたくない」

 「じゃあなんで!なんで、ああまでしてケルベロスを復活させようとしているの?」

 「血の契約だから」

 「えっ、血の契約?」

 「うん。私はケルベロスに死なれると困るの」

 「どうして?メリヤスじゃなくてケルベロスが困るんじゃないの?」

 「違うよ。血の契約の主人はケルベロスだから」

 「......っ!」
  
 そんなことできるの?血の契約は本来、人間が魔物を従わせるために行う儀式みたいなものだ。だから魔物が人間を従わせるだなんてそんなの暴力以外ないのに。なのにどうして?

 「私は人間とはまた別だから」

 「そんなことを言ったら私だって......」

 「アリスの魂は確かに砕け散ったよ。でもねぇ、砕けたと同時に新たな魂が生まれたの」

 「......」

 「私とは違う魂。だからアリスは正真正銘の人間だよ」

 「......」

 何も言えない。いや言えなかった。メリヤスの顔はいつもよりも暗く悲しそうだ。

 「私はメリヤスの人生を奪った」
  
 「そうなのね」

 前に聞いていたからそれほど驚かなかった。

 「メリヤスの人生を命を無理やり亡き者にして私だけがのうのうと生きている」

 「......そうだね。それは許させないことだよ」

 「だからもう死にたいの」

 「えっ?」

 「あなたの手で私を終わらせて」

 「そんなに言うなら俺が殺してやるよ」

 「今の声って......ヴィーナ団長‼︎」

 ドーン

 「やっと見つけたぜ!」

 「団長‼︎」

 「チッ!アリスハート。必ず私が殺してやる!」

 そう言ってメリヤスがいなくなった。きっとさっきの衝撃で解けたのね。

 「アリス‼︎」

 ギュッ

 「なぜひとりで行ったんだよ」

 「......ごめんなさい」

 パパが優しく抱きしめて肩を震わせる。本当に心配してくれてたんだ。

 「もう黙ってどこかに行かないから」
  
 私も抱きしめ返した。

 メリヤスの本音を聞けただけでも今回ここに来た意味があった。

 「メリヤス。私が必ず助ける。あなたの心を助けてあげるからね」

 アリスハートとの約束を思い出しそっと呟く。

 「メリヤスよ。いい加減にアリスハートを殺して俺様の食事にしろ」

 「ゔゔゔゔわあああああ⁉︎」

 「我が手となり我が忠誠を誓ったのだから約束を果たせ」

 「......はい」

 さらなる闇がアリスたちを襲うのであった。でもそれはもう少し後のお話である。
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