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蛍火

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 「リーリエさん。シルクの心をどうか救って......お願い」
 「イザベラ。約束するわ。絶対にシルクロードを救ってみせる。もうあのバッドエンドにはさせない」
 「......」
 「イザベラ⁇」
 「私はもう行くわ。先に逝って待っているから......さよならシルク」
 「ま、待ってくれ!イザベラ」
 「わっ⁉︎シルクロード⁇何をやってるの?」
 「リーリエ!」
 「い、イザベラは?イザベラは何処に行った?」
 「もう居ない。先に逝ってしまったわ」
 「......」
 「シルクロード......」
 「もういい。こんな世界壊してやる!」
 「やばい!」
 「我の声を聞き......我の願いに応えよ」
 「リーリエ⁇」
 「何やってるんだ?」
 「リーリエが持っているのは精霊の涙の宝石⁉︎」
 「ええええええええええ⁉︎」
 「光の導きの元に我の願いを乗せて!」
 じわっ
 「駄目だ!これ以上は本当にまずい」
 「リーリエもういいからやめて!」
 「このままだと本当に死ぬことになるぞ」
 「ポープ」
 ズキン
 「ぐっ!」
 魔力を使えば使うほど痛みが増す。痛いけど苦しいけどまだこの戦いは終わってない!
 パキーン
 「精霊の涙の宝石が割れた?」
 「我の願いは......悪魔に捕られたかの者の契約破棄を願う!」
 「え?契約破棄?お前何をやっているのかわかっているのか?悪魔と敵対視することになるんだぞ⁉︎」
 「精霊を従えているのだから平気。私には精霊の力もあるし仲間も居る。だからひとりじゃないよ」
 「......」
 なんだろう⁇さっきまで沸々と湧いていた怒りが消えて行く。これが精霊の涙の宝石の力。ひとつの願いを叶えてくれる力。精霊が心から願う気持ちでできる宝石。リーリエはこんなどうしようもない自分も救ってくれた。あんなに酷いことをしたのに......見捨てないでくれて......。
 「ありがとう」
 「......っ!」
 「俺の怒りは今おさまった。もう誰かを襲うこともない。俺の怒りはもう何処にもない」
 「シルクロード⁉︎か、体が消えて......」
 「俺はもうとっくに死んでいたのだ。何百年と生きた。もう休める」
 「駄目!ど、どうしよう。シルクロードの体が消えちゃう」
 「リーリエありがとう。こんな俺を見捨てないでくれて嬉し......かった」
 「......」
 シルクロードは蛍火のように消えていった。とても温かくてほんのり光り続ける。そんな感じだ。
 「すごい。魔力が回復してくる」
 「シルクロードの最後の魔法だ」
 「シルクロード様はやはりお優しい方」
 ドサッ
 「リーリエ⁉︎」
 「あ、あはは......魔力は少し回復したけど......魔力欠乏症からは脱してないみたいね」
 「当たり前だ!普通は一週間は絶対安静なんだぞ」
 「そうだね」
 「リーリエ。お家に帰ろう」
 「うん......」
 「まぁ、お前らの故郷まで帰るには一ヶ月間は馬車から降りられないもんな」
 「休めるね」
 「そのぐらいならいいか。俺も着いて行くよ。お前らとまだ旅をしたいからな」
 「俺は此処に残って他の魔族達を説得してくる」
 「お前ひとりで大丈夫か⁇」
 「ああ。お前らが居ると逆にややこしくなる」
 「うっせ!」
 「シルクロードはイザベラに会えたかなぁ?」
 「会えてるよ。だって心が繋がっていれば必ず会える。私達が何よりの証拠でしょ⁇」
 「そうだね」
 「じゃあ帰るぞ」
 「リーリエは俺が背負ってやるよ」
 「なに言ってるの⁇背負うのは私よ。リーリエをおんぶしたいもん」
 「はいはい」
 「何それムカつく!」
 「あはは!」
 長い長い旅は戦いは終わった。私が読んだバッドエンドは回避した。
 でもまだ油断は禁物。この戦いは確かに終わった。だけど始まりに過ぎなかったのです。
               シーズン1終わり
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