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18、地図とテイマーへの道
しおりを挟む工房に加入しただけであの効果だ。
メインクエストなら、さぞ凄い結果になることだろう。
そう考えた俺は、ただいま森までの道のりを、一人テクテクと歩いている。
今は【ゲームモード】を少しカスタマイズして、地図だけを視界の右端に表示しているんだけど、コイツがすっごく有能で助かっている。
地図を開くと道の途中途中に、謎の白い丸【○】が散らばっていて、初めはこのマークが何なのか分からなくて『なんだこれ?』状態。
そんな時には神様からプレゼントしてもらった、あの機能が役に立った。
ゲーム音痴の頼もしい味方【検索さん】
俺は早速、優秀な助っ人である【検索さん】を呼びよせると、この謎の白丸について聞いてみた。
彼女の話では、この白表示は『敵意のない人=村人』を表してるらしい。
この丸が黄色いと『こちらから攻撃しない限りは無害な獣/人』で、これが赤い色だと『敵』みたい。
これがすごく便利で、おかげで朝からいじめっ子軍団に遭遇する事もなく、森への道を平和に進めている。
あ、検索と言えば『試験』から戻ってきた後に、あの「不思議な空間」について聞いてみたら、やっぱりあそこは特別な次元になってるって。
あそこにいる限りは『時間』に左右されないらしい──というか、時間という『概念』自体がないそうだ。
だからあそこに連れて行かれたとしても、現実には一瞬の間でしかないらしく、側で見ている人には俺の『像』が一瞬ブレたかな?ぐらいにしか、感じないそう。
時間の心配がないなら、ついでに薬草工房にも入ろうかと思ったんだけど、こちらは < 実際に外に出る必要があります > とアナウンスされたので止めた。
この時間から外に出たら、母さんに怒られちゃうしね。
そんなわけで次の日。
午前の手伝いを終えた俺は、すぐさま家を出て森に向かっていたんだけど、途中で地図の見方を検索に教えてもらった俺は、ちょっと遠回りをしながら歩いている。
だって地図の『点』通りに、本当に人がいるか確かめたくなるでしょ。
実際本当に人がいたけどね。
どうやらこの白丸、家の中にいる人は表示されないけど、外にいる家畜や人はしっかり表示されるみたい。
そしてでっかい点のマークは大多数を表しているらしく、二本指で地図を拡大すれば、正確な頭数も把握出来るようになっていた。
そんな風に地図を見ながらがら歩いていると、
(う……っ、森の入り口からちょっと行った先に、誰かいる……)
白いマークは人の証。それが5つある。森の手前で遊んでいるのは大抵子供ばかりだ。
そこを避けるように道を迂回する。
人通りが少ない道は獣道になってるせいで歩きづらいけど、昨日の試験のおかげで能力が向上した【俊敏】と【回避】が全てを解決してくれた。
おかげで、木の根に足を引っ掛けることなく、簡単に林の中へと入って行ける。
(うん、よし。じゃあメインクエストに挑戦してみようかな)
地図を見る限り、近くに人も獣もいないから、丁度いい。
昨日薬草工房に加入しようとして、こちらはメインクエストに指定されているのを発見した。同様に獣をテイムすることもメインクエストに入っている。
「適正があるものは、メインクエストになってるんだな、このゲーム」
とりあえずモフモフポイントは早めに欲しいので、メインクエストの【まずはテイムしてみよう】という項目を、呼び出したパネルを使ってポチッと押してみる。
するとまた銅鑼の鐘の音と共に、目の前に可愛らしい桃色のオウムが現れた。
いきなりの光景に、思わずビクッと尻尾を立てる俺の前に、半透明の仕様書が浮かび上がる。
それによると
①テイムするには、自分と相手の力量差を確認する。5以下ならテイム出来るが、なるべく力量に差がないものを選ぼう。
(テイムに失敗すると、死ぬ危険性があります)
②テイムするには、自分の力量を見せつけるか、相手を弱らせてからテイムしよう。
(弱らせることが、成功への道標です)
③中途半端に弱らせると逆上する可能性がある。死亡前なら蘇生が可能なので、なるべく死ぬ手前まで弱らせるのが肝心。
< では、初めてみましょう >
とアナウンスされるが……俺、ドン引き。
なんという原始的なテイム方法。全く友好的じゃない。
(え……? 本当にこんな方法でテイムするの? このゲーム)
料理工房の時と同じく、いつのまに握らされたのか、俺の手の中には拳ほどの石が、投げろと言わんばかりにそこに存在している。
本当にこの方法でテイムするらしい。怖い……。
(これをあの目の前のオウムにぶつけろと?)
石を見つめて愕然となる。
1メートルくらい先には、地面の上に立つオウムの姿。
クリンとした目で、小首を傾げてこちらを見ている姿が、とても愛らしい。
これを今から痛めつけないといけないのか……。
ただのクエストとは言え、ちょっと鬼畜すぎじゃない? なんなんだこの仕様。
(でも、モフモフポイントのためにも……やるしかない!)
心を鬼にする。
うん、大丈夫! ちゃんと蘇生が出来るっていうし。
(でも……)
余計な考えが浮かんでしまう。
(もし当たりどころが悪かったら? 死ぬ手前まで痛めつけるってことは、何度も石で殴るってことだよね? 血とか出るのかな? 鳴き叫ぶかも)
考えると、なかなか実行出来ない。
それでも何とか石を握り込むと──えいっ!
ビビリすぎて最後は目を瞑ってしまったが、何とか石をオウムに向かって投げ飛ばした。
が、最後はやっぱり怖くて、ガッツリ狙いには行けなかった。
オウムじゃなく、足元の地面に落ちた石が、土を抉っただけだ。
それでもその攻撃にビックリしたのか、システム側で用意してくれた桃色オウムは、空高く羽ばたきながら逃げて行ってしまったんだけどね。
これは多分、クエストに失敗したんだろうな。
けど、オウムに当たらなくて本当に良かった。マジで怖かったよ、このクエスト。
案の上、このすぐ後に < コンティニューしますか?> の文字が現れたけど、もちろん却下だ!却下!
(む……無理! 俺には無理! なんなんだよこのテイム方法────っ)
ゲームの仕様を今すぐ変えてください、神様!!
応援ありがとうございます!
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