4 / 30
始めよう
1-4 怪しい取引
しおりを挟む
今日はとりあえず休みたい。
どこか宿を探そう。
「おい、にいちゃん、あんたこれからどうするんだい」
後ろから酒女に呼び止められる。
ついてきたのか。
「勇者パーティが解散しちまってさぁ、ヒック、行く宛てなんてあるのかい」
「……あんたには関係ないだろ。それに俺はさっきも言ったがパーティは組まないし実際組めない。悪いな」
「パーティの話はもういいのさ。けど、ヒック、あたしは勇者パーティの料理人だったあんたに興味があってねぇ、ヒック、その『事情』とやらも詳しく聞きたいし……」
そこで酒女はうーんと考える素振りを見せる。
「…そぉだ、こういうのはどうだい? 宿に無料で好きなだけ泊まらせてやるし、ヒック、プラスで最低限の衣食住は保証してやるからさぁ、あたしの頼みを聞いてくれないかい?ヒック」
「……は?」
一体何を言い出すんだこの女は。
泊めてやるって、こいつが金を出すってことか?
「ちょっとしたツテがあってねぇ。無料でいいのさ。見たところ金に困っていて、長旅で疲れている。早く休みたいが、ヒック、宿探しが面倒くさいって顔だなぁ。なのに料理人の性か、さっきの話を聞いて少し複雑ってとこかい」
ギクリとした。
当たっている。
ただの酔っ払いだと思っていたが、勘は鋭い。
「……何がのぞみだ?」
「けけ、やる気になってくれたみたいだねぇ。まぁお疲れのようだし、ヒック、明日またギルドに来ておくれよ」
「急ぎじゃないのか?」
てっきりすぐに無茶な要求をされるのかと思っていたが、酒女のあっけらかんとした態度に肩の力が抜ける。
酒女は質問には答えず、ゴソゴソと荷物を漁り始める。
「えーとぉ、宿への地図はどこだったかなぁ……あーあった。ヒック、あたしの名前と今から言う合言葉を言えば無料だからさぁ」
くしゃくしゃの紙を渡され、すっと耳に顔を近づけられる。
思わず後ずさりしようとしたが、肩を掴まれて動けない。
「合言葉は、マーカーティー」
小声で呟いたあと、「それじゃまた明日ぁ」と先程の調子でギルドの中に入っていった。
これほどときめきがない耳打ちは初めてだ。掴まれた肩が痛い。
「……悪い人ではなさそうだけど、強引だな……」
初対面の怪しい人間を信じてもいいのか?
もしぼったくりにあったらどうしよう。
そんなことも一瞬考えたが、疲れたしとりあえず行ってみよう。
本当に無料で泊まれたら明日礼を言えばいい。
助けて貰ったお礼もまだだったしな。
酒女にもらった地図はくしゃくしゃでほとんど読めなかったが、数時間かけてなんとか王都内の記憶を頼りにそれっぽい建物にたどり着いた。
もう辺りは真っ暗だ。
「……見るからに高そう」
そこは高級そうな整った外装に、整備された庭。
貴族が泊まる宿なのは一目見てわかった。
エントランスに入ると、警備の人間らしき男たちが寄ってきた。
そりゃあ怪しまれるよな。
「ご予約で?」
「あ、いや、ドラカという名前の女からここに泊まってもいいって言われて……」
「合言葉は」
「え、えーと、マーカーティー」
「……」
そう言うと、じろじろと俺の容姿を観察して警戒していた男たちは姿勢を正した。
「大変失礼いたしました。ロイズさま、お部屋へご案内いたします」
急に態度が変わったせいでこちらまで畏まってしまいそうだ。
案内されるがまま着いた部屋は、かなり広い。
3人くらいが寝れそうなベッドにゆったり足を伸ばせる浴槽。
キッチンまでついている。
こんなところに無料で泊まれるなんて、あの女は一体何者なんだ?
驚きと疑問が沢山あるが、とりあえずシャワーを浴びて寝たい気持ちが優先だ。
俺はすぐさま休む体制に入る。
聞きたいことは明日聞こう。
今日は色々あったな。
スリ、現在の王都、冒険者にもなった、ドラカとかいう酒女、最後は豪華すぎる宿。
数日前までボイドたちと共に過ごしていたのが嘘のようにいまは静かだ。
「……寝るか」
灯りを消して、ベッドに入る。
寝心地は最高だが、妙に虚しい。
申し訳ないが明日違う部屋に変えてもらおう。
広い部屋だと、色々と考えてしまう。
この先どうなるんだろう。
そんな不安を抱えながら、俺は眠りについた。
どこか宿を探そう。
「おい、にいちゃん、あんたこれからどうするんだい」
後ろから酒女に呼び止められる。
ついてきたのか。
「勇者パーティが解散しちまってさぁ、ヒック、行く宛てなんてあるのかい」
「……あんたには関係ないだろ。それに俺はさっきも言ったがパーティは組まないし実際組めない。悪いな」
「パーティの話はもういいのさ。けど、ヒック、あたしは勇者パーティの料理人だったあんたに興味があってねぇ、ヒック、その『事情』とやらも詳しく聞きたいし……」
そこで酒女はうーんと考える素振りを見せる。
「…そぉだ、こういうのはどうだい? 宿に無料で好きなだけ泊まらせてやるし、ヒック、プラスで最低限の衣食住は保証してやるからさぁ、あたしの頼みを聞いてくれないかい?ヒック」
「……は?」
一体何を言い出すんだこの女は。
泊めてやるって、こいつが金を出すってことか?
「ちょっとしたツテがあってねぇ。無料でいいのさ。見たところ金に困っていて、長旅で疲れている。早く休みたいが、ヒック、宿探しが面倒くさいって顔だなぁ。なのに料理人の性か、さっきの話を聞いて少し複雑ってとこかい」
ギクリとした。
当たっている。
ただの酔っ払いだと思っていたが、勘は鋭い。
「……何がのぞみだ?」
「けけ、やる気になってくれたみたいだねぇ。まぁお疲れのようだし、ヒック、明日またギルドに来ておくれよ」
「急ぎじゃないのか?」
てっきりすぐに無茶な要求をされるのかと思っていたが、酒女のあっけらかんとした態度に肩の力が抜ける。
酒女は質問には答えず、ゴソゴソと荷物を漁り始める。
「えーとぉ、宿への地図はどこだったかなぁ……あーあった。ヒック、あたしの名前と今から言う合言葉を言えば無料だからさぁ」
くしゃくしゃの紙を渡され、すっと耳に顔を近づけられる。
思わず後ずさりしようとしたが、肩を掴まれて動けない。
「合言葉は、マーカーティー」
小声で呟いたあと、「それじゃまた明日ぁ」と先程の調子でギルドの中に入っていった。
これほどときめきがない耳打ちは初めてだ。掴まれた肩が痛い。
「……悪い人ではなさそうだけど、強引だな……」
初対面の怪しい人間を信じてもいいのか?
もしぼったくりにあったらどうしよう。
そんなことも一瞬考えたが、疲れたしとりあえず行ってみよう。
本当に無料で泊まれたら明日礼を言えばいい。
助けて貰ったお礼もまだだったしな。
酒女にもらった地図はくしゃくしゃでほとんど読めなかったが、数時間かけてなんとか王都内の記憶を頼りにそれっぽい建物にたどり着いた。
もう辺りは真っ暗だ。
「……見るからに高そう」
そこは高級そうな整った外装に、整備された庭。
貴族が泊まる宿なのは一目見てわかった。
エントランスに入ると、警備の人間らしき男たちが寄ってきた。
そりゃあ怪しまれるよな。
「ご予約で?」
「あ、いや、ドラカという名前の女からここに泊まってもいいって言われて……」
「合言葉は」
「え、えーと、マーカーティー」
「……」
そう言うと、じろじろと俺の容姿を観察して警戒していた男たちは姿勢を正した。
「大変失礼いたしました。ロイズさま、お部屋へご案内いたします」
急に態度が変わったせいでこちらまで畏まってしまいそうだ。
案内されるがまま着いた部屋は、かなり広い。
3人くらいが寝れそうなベッドにゆったり足を伸ばせる浴槽。
キッチンまでついている。
こんなところに無料で泊まれるなんて、あの女は一体何者なんだ?
驚きと疑問が沢山あるが、とりあえずシャワーを浴びて寝たい気持ちが優先だ。
俺はすぐさま休む体制に入る。
聞きたいことは明日聞こう。
今日は色々あったな。
スリ、現在の王都、冒険者にもなった、ドラカとかいう酒女、最後は豪華すぎる宿。
数日前までボイドたちと共に過ごしていたのが嘘のようにいまは静かだ。
「……寝るか」
灯りを消して、ベッドに入る。
寝心地は最高だが、妙に虚しい。
申し訳ないが明日違う部屋に変えてもらおう。
広い部屋だと、色々と考えてしまう。
この先どうなるんだろう。
そんな不安を抱えながら、俺は眠りについた。
0
あなたにおすすめの小説
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます
なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。
だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。
……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。
これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。
レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした
桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。
防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました
かにくくり
ファンタジー
魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。
しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。
しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。
勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。
そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。
相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。
※小説家になろうにも掲載しています。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。
カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。
だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、
ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。
国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。
そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる