元勇者パーティの料理人〜追放されたけど料理スキルがカンストしている俺は王都1を目指して料理店始めます〜

月乃始

文字の大きさ
15 / 30
Cランクになろう

3-5 元勇者パーティの賢者

しおりを挟む
「……リズ……その、元気、だったか」

「……は、はい」


 俯きながら自らの杖を握り締めて震えているリズの姿は、勇者パーティにいた頃、俺の記憶のままだ。

 賢者として、魔法使いのラナの相方として、勇者と共に戦っていた仲間。


「ロ、ロイズさんも……お元気そうで……」

「あ、ああ……」


 仲間だったのは確かだが、無性に気まずい。
 俺はリズと個人的に話したことが少ない。
 しかもリズは、魔王討伐後真っ先に抜けた1人だ。

 理由も分からず、ロイズから抜けたことを知らされただけで挨拶もしていない。

 それがこんな形で再開するなんて。

 リズも勇者パーティが解散した記事はみただろうし、俺が抜けたことを恐らく知っている。

 しばらく沈黙が続く。


「…………で、では私はこれで……」

「…あ、ま、待ってくれ」


 急ぎ足で去ろうとするリズを思わず引き留める。
 特に何かあった訳では無いが、せっかくの再会をここで終わらせてしまうのは嫌だった。
 リズはビクビクしながら俺の方を振り返る。


「……な、何か?」

「いやその……そう、どうして加工屋から出てきたんだ?」

「それは……その……なんと言いますか……あの……」


 俺の何気ない質問に、しどろもどろになってしまうリズ。
 怪しまれないよう、特に他意はないことを証明しようと、俺は今冒険者をしていて、昨日ここで魔石を作ったことと終わったあとの疲労がとてつもなかったこと、そして今日同じ手順で作ってみても何ともないことを説明した。


「……な、なるほど」

「だから、もし何か知っていることがあれば教えて欲しい」

「は、はい……あのぅ……も、もしかしてロイズさん、例えば気力が増えたとか、そういう実感は、ありますか……?」


 相変わらず目が合わないが、会話はしてくれる。


「ああ、さっき教会に行って鑑定してもらったけど、数年前より約3000くらい気力と体力が増えてた」

「さ、3000…………すごい、ですね」

「多分勇者の料理をずっと作り続けてきたからだと思うんだけど、何か関係があるのか?」


 俺がそう聞くと、リズはおずおずと魔輪石に触る。


「……こ、この魔輪石は少し特殊で、使う人の魔力だけじゃなく、気力にも影響、するんです」

「気力に? そんな魔輪石があるのか?」

「は、はい……この魔輪石は……その、わ、私がつくった……ので……はい……」

「………え?」


 作った? 魔輪石を? 人間が? どうやって?
 魔輪石って人間が作っていたのか。
 いや当たり前だが。

 え? リズが作った?

 混乱してしまいよく分からない。


「………え?」


 2度聞き返してしまい、リズは何故か「す、すみません!」と謝った。


「……すまない、混乱した。それで、リズが作ったっていうのは一体?」

「あ……わ、私数ヶ月前に、王都に来てから教会で、鑑定してもらったんです。そしたら、魔力と気力が、あ、上がっていたので、もともと興味があった加工師にな、なろうと思ったんです」


 意外だな。
 確かにずっと1人で魔石加工をしているような、変わった奴だったが、まさか賢者からジョブチェンジまでするとは。

 確かラナが
『リズの本当の力は魔力量じゃなくて魔力コントロールよ』って言っていたな。
 そこに魔力量も加わったら、とんでもない事になるんじゃないか?


「そうだったのか。ん? 加工師ってことはもしかしてこの店、リズの……」

「あ……そ、そうです……私の……お、お店です……」


 この短期間で王都の一等地に店を構えるだけじゃなく、こんな上等な魔輪石まで作るなんて、経緯をより詳しく聞いてみたい。


「……この魔輪石は、魔力が少ない人でも、使えるように、き、気力も注げるようにしたんです……そしたら、く、クオリティも上がるかなって……」


 なるほど。そういう事か。

 魔力は魔法や魔道具を作るために使う。
 気力は『恩恵ギフト』や固有スキルのために使う。

 つまり、気力も合わせることで加工師の加工スキル自体を借りれるような、より精密な魔道具や魔石が作れるってことだ。

 今までの魔輪石は加工師の魔力を借りるだけだったが、リズの作った魔輪石はさらに進化した石になっている。

 確かリズの『恩恵ギフト』は『拡散』だったな。
 自分のスキルの効果や、他人のスキルを自分や他人に共有して拡げることができる。
 それを応用して作ったのか。

 さすがは元賢者だ。


「そうだったのか……じゃあ、俺が昨日疲弊した原因は、気力を使ったからってことか?」

「は、はい……恐らく……気力が多ければ多いほど、いつもの感覚でや、やってしまうと、使われる量も多くなるので、いい魔石は作れますがその分疲れがきてしまうのかと……」

「そうか……今日作ってみても疲れなかったのはどうしてだ?」

「た、多分……石に入っている、私の魔力が足りてないので……気力を使わず魔力だけで、き、今日は作ったんじゃないでしょうか……?」


 よく見ると、魔輪石の光が確かに弱い。

 つまりはリズの作った魔輪石が特殊で、俺が今まで通りのやり方で魔力を注いだつもりが気力まで注いでいたわけだ。
 今朝の祭司の言葉通り、俺のコントロールがまだ甘いせいってことになるか。


「す、すみません……一応、注意書きもあるのですが、み、見えづらかったですかね……」


 魔輪石の隣に看板がたててあり、大きな文字で気力のことが書かれている。
 俺は何故気付かなかったんだろう。


「い、いや……俺が昨日ぼーっとしながら作っていたから気付かなかっただけだ。すまない」

「そ、そうだったんです……ね」


 謎だったことは全て解けた。
 だがまた気まずい空気になりそうで、俺はとりあえず王都に滞在することをリズに伝える。


「冒険者になったから……ですか……」

「あぁ、けれどもうすぐ自分の料理店を出すから期間限定の冒険者だけどな」

「す、すごいですね……」

「いや、リズだって自分の店を持ってるじゃないか。充分すごいよ」

「……私なんて、何も……」


 リズは腕は確かだが、臆病でネガティブだ。
 いつもラナに怒られていたな。

 その後少しだけ話をしていると、15時を告げる鐘の音が響く。


「あ……もう行かないと。教えてくれてありがとうリズ。今度なにか買いに来るよ」

「え? だ、大丈夫ですよそんな……私のお店なんて……大したものはないですし……」

「またそうやって謙遜して。勇者パーティの賢者だったんだから自信持てよ」


 俺が笑って言うと、リズは表情を曇らせて、俯く。


「……リズ?」

「……あ、な、なんでもないです。また、お待ちしています」

「あ、ああ……」


 様子のおかしいリズが心配になったが、あまり深入りして欲しくなさそうな空気を感じ、そのまま別れを告げて俺は冒険者ギルドに戻った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

後日譚追加【完結】冤罪で追放された俺、真実の魔法で無実を証明したら手のひら返しの嵐!! でももう遅い、王都ごと見捨てて自由に生きます

なみゆき
ファンタジー
魔王を討ったはずの俺は、冤罪で追放された。 功績は奪われ、婚約は破棄され、裏切り者の烙印を押された。 信じてくれる者は、誰一人いない——そう思っていた。 だが、辺境で出会った古代魔導と、ただ一人俺を信じてくれた彼女が、すべてを変えた。 婚礼と処刑が重なるその日、真実をつきつけ、俺は、王都に“ざまぁ”を叩きつける。 ……でも、もう復讐には興味がない。 俺が欲しかったのは、名誉でも地位でもなく、信じてくれる人だった。 これは、ざまぁの果てに静かな勝利を選んだ、元英雄の物語。

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらずパーティから捨てられましたが、実は成長曲線が「勇者」でした

桐山じゃろ
ファンタジー
同い年の幼馴染で作ったパーティの中で、ラウトだけがレベル10から上がらなくなってしまった。パーティリーダーのセルパンはラウトに頼り切っている現状に気づかないまま、レベルが低いという理由だけでラウトをパーティから追放する。しかしその後、仲間のひとりはラウトについてきてくれたし、弱い魔物を倒しただけでレベルが上がり始めた。やがてラウトは精霊に寵愛されし最強の勇者となる。一方でラウトを捨てた元仲間たちは自業自得によるざまぁに遭ったりします。※小説家になろう、カクヨムにも同じものを公開しています。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...