元勇者パーティの料理人〜追放されたけど料理スキルがカンストしている俺は王都1を目指して料理店始めます〜

月乃始

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3-7 ドラカの目覚め

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―――――
 目を覚ますと、真っ白な天井が映る。
 ぼんやりした意識から、ふと鮮明な記憶が蘇る。


「ドラカ! ……いてっ!」


 勢いよく起き上がると、後頭部がズキっと痛む。


「おや、目が覚めましたか。良かった」


 仕切りの奥から医者が顔を出す。


「す、すまない。俺まで世話になってしまったみたいで」

「とんでもない。私たちはあなたに助けられているんです。むしろ助けさせてもらえて嬉しいですよ」


 医者は穏やかな笑みをうかべると、仕切りを取った。

 横のベッドにはドラカがすやすやと寝ている。


「彼女の毒は無事消えました。今はただ寝ているだけですので安心してください」

「あ、ありがとうございます!」

「それにしても彼女、ドラカさんの生命力と知識には驚かされます。恐らく感染してからも丸1日以上動き回っていました。軽く応急処置をした跡もあったので、医学の知識も多少持ち合わせていると思います」

「そ、そうなんですか」


 感染しても尚動き続けるなんて化け物だな。と思う。

 医学の知識なんて一般人は身につける機会なんてない。
 冒険者も、基本的にはパーティに魔法使いや賢者がいるから治してもらえる。

 そういえば、ドラカのパーティメンバーはいないのか?
 森でも荷物はドラカの分だけだった。
 駆けつけてくるのもドラカ1人。

 もしかして、今はソロなのか?

 よく考えたら俺は、ドラカについて何も知らないんだ。


「……2つ気になる点がありまして」

「気になる点?」

「1つは体内のアルコール分を考えるとドラカさんはかなりお酒を嗜まれる方だと思いますが、今回の感染源はアルコールに反応してより強く感染の症状が出ます。2つ目は感染源はこの辺では見ることの無い毒状のウイルスでした」

「ってことは……」

「ドラカさんは誰かに感染のでしょう。しかも、彼女のお酒好きを知っている方に」

「………!」


 医者は深刻な顔つきで冷静な推理をする。
 そんな恐ろしい話があるのか?

 ドラカが命を狙われている?
 誰に? どんな目的で?


「まぁ、詳しくは彼女が起きてきちんと状況を聞かないと判断は出来かねますがね」

「そ、そうですよね……」


 とは言ったものの、モヤっとした疑問が残る。
 そこに医者が一言付け加える。


「あとは、栄養不足が目立ちましたね」

「栄養不足?」

「お酒と最低限の食事以外あまり口にされていないんだと思います。冒険者を続けていられるのが不思議なくらい、ものを食べていません」


 この女、本当に酒が好きなんだな。
 そこは呆れるとしか言いようがないが、それなら得意分野だ。


「あの、ここまで世話になっておいてお願いするのも躊躇うんですけど」

「何でしょう?」

「……キッチンを貸していただけませんか?」


――――――――――――――――

「…………」


 半日経って病室に戻ると、ドラカが目を覚ましていた。
 珍しくボーッと天井を見ている。


「ドラカ、起きたのか」

「………おや、あんたかい」


 目だけ俺を見て力なく笑うドラカの顔はまだ少し青白い。


「無理するな。起き上がれるか?」

「……誰の心配してるんだい?」


 けけ、と笑いながらゆっくり体を起こすドラカ。
 医者の話だと、ドラカは1日眠っていたから動かすには少し体をならさないといけないらしい。


「大丈夫そうだな。ほら、これでも食べて早く元気になってくれ」

「……これは……」


 あのあと、俺は医者の個人的なツテで、村の小料理屋のキッチンを借りていた。
 材料を取ったりしていたら時間がかかってしまったが、ドラカが目を覚ましたタイミング的にちょうど良かった。


「カラナクサとモニグラのスープと、米を潰してペースト状にした団子だ」


 俺が作ったのは胃が荒れないこと、かつ栄養が手早く取れるを最大限考えた2品。

 回復とバフは感染してしまった体の回復と、身体の吸収力を高める効果、免疫を高める効果だ。


「……」

「苦手なものとか、分からなかったからそのまま作ったけど大丈夫か?」

「………ああ」


 言葉では言うが、ドラカは料理を見つめたまま動かない。
 手が動かないのだろうか?


「食べさせてやろうか」

「……けけ、大丈夫さぁ」


 ゆっくり料理に手をつける。


「……美味い」

「良かった。あまり急いで食うなよ。かなりの栄養不足だったらしいからな」

「…………あんたは」


 無言で食べ進めていたドラカが不意に俺を見る。
 酔っていないドラカと正面から顔を合わせるのは初めてだ。


「あんたは、覚えていたのかい?」

「覚えていた?」

「……いや、いい」


 俺の反応が気に入らなかったのか、顔を背ける。


「おい気になるだろ。何だ?」

「……昔の話さ。気にするな」


 昔の話?

 それっきり聞こうと思ってもドラカは一切答えなかった。
 話を変えて、何があったのか聞いてみよう。


「それはそうとして、アルテナの森で一体何があったんだ? 誰に感染させられた?」

「……悪いね。さっき医者に説明したけど、ここ数日の記憶が曖昧でさぁ。なぁんにも覚えてないんだよねえ」


 ちっとも悪いと思ってなさそうなドラカに思わずため息が出る。


「……医者はあんたのことを知ってるやつだって言ってた。命を狙われる心当たりはあるか?」

「さぁねぇ。昔ぼこぼこにしたやつじゃないかい?」

「おい、真面目に答えてくれ」


 はぐらかしてもいい問題じゃない。
 ドラカと関わった以上、それは俺も危険だからだ。

 そう伝えると、ドラカは少し俯いた。


「……悪いね。今はまだ言えないのさ。時が来たら言うから待っておくれよ」


 真剣な声色で、でも消え入りそうな声でぽつりと言うドラカに、俺は何も言えなかった。
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