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「・・・お花、ありがとうございました
・・・実は・・・やはりそうでしたか・・・いえ・・・
・・・突然申し訳ございませんでした。では、失礼します」

電話を終えた盛雄は和泉の方を向いた。
「奈緒さん、ですか?」
「はい。百合の花のお礼と彩香くんのことで少し」
電話の話を聞いていた和泉は気になっていたことを尋ねた。
「彩香ちゃん、思い出したんですか?」
「ほんの少しだけだそうです」
「そうなんですか」
和泉の声のトーンが落ちた。
「倒れて泊まった晩に、小さい頃も奈緒さんと一緒にあの部屋に泊まったを思い出したのだそうです」
と二階を見る盛雄。
「それで、大体の話は奈緒さんがしてくださったそうなんですが、私たちのことはほとんどお思い出してはいないようです」
盛雄は少し残念そうな顔をした。
「でも、先生よくわかりましたね、彩香ちゃんが思い出したって」
「ええ。お墓での彩香くんの様子が少しね。思いのほか長く由美さんとお話ししていたようですから」
「そういえば・・・」
和泉も、お墓での彩香のことを思い出して納得したようだった。
「それで気になりましてね。奈緒さんに聞いてみたわけです。先程はすいませんでした。できれば鷹文もいないところで電話したかったもので、つい・・・」
「そういうことだったんですね」
「まあ、少し酔っていたのも間違いではありませんが」
盛雄が頭を掻いた。
「ですよね!彩香ちゃん、とおっても困ってましたよ」
「すいません。明日、彩香くんにも謝っておきます」
「そうしてあげてください。まあ、私が叱っておくって伝えてありますけど」
和泉がニッコリと微笑んだ。

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