感情の無い僕が恋をした

サクラ

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その不快な感情、こちらが買い取って差し上げます

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という訳で、今回はちゃんとした主人公の巍城颱虞甕が話を進めます。
いやー、あんな奴に主人公の座を奪われるかと冷や冷やしたよ。
まぁ主人公が僕に戻ってきたということで、一安心だ。
しかし、あいつが主人公になる可能性だってゼロじゃない。
今までみたいにしてたら、あいつが普通に主人公してるかもしれないな。
次回から僕でなかったりして……。
いや、変な考えはやめとこう。
主人公を奪われぬよう頑張るつもりだが、今日は特に話すことっていってもなかったんだよな。
学校だってあいつ休んでて、平和だったしな。
いやー、今まで学校なんて誰が休んでも変わんないと思ってたけど、思い直すものがあるな。
あいつが居なくなっただけでこんなに幸せなんて……。
いやー本当に幸せだったね。担任があんなことを言わなければ。
「巍城ー!今日は感売休んでるから、プリント持って行ってやってくれ。」
これさえなければ、平和なまま僕は家に帰ることが出来たのに。
なぜ、わざわざ僕なんだ!
確かに、あいつの家は帰り道にあるが、それでもなぜ僕!!
あいつ顔だけは良くて地味に人気出てんだから行きたい奴なんて山のようにいるのに、なんで僕なんだよ。
イジメだろうこれ!!間違いなく、イジメだろう!
じゃなきゃあいつが仕組んでる。それが出来るのがあいつだ。
しかし、先生にお願いされてしまったのだ。行くしかない。
あの場へだけは行きたくなかったのだが……。
僕の願いは叶わず、トボトボと帰り道を歩いて行った。感売のプリントを片手に……。
「お待ちしておりました。巍城様。いえ、亜爾加里様。」
と貯古齡糖は玄関の前に立ち、僕が来るのを待っていた。あの日とは違う。
玄関を開け、しばらく待ってもなかなか出てこなかったあの日とは違った。
貯古齡糖から巍城と呼ばれるのは、初めてのことでなかなか慣れないものである。
「これ、感売に。」
早くこの場をたちたいという心が行動を急かす。
「感売?……あぁ、分かりました。それでは中に入ってお茶でも。」
と言われてしまった。断れない。
貯古齡糖になんだか断りにくいなんとも言えない空気をまとっている。
感売以上に苦手な人物だ。まぁ、あいつはあいつで、考えが読めない分苦だが……。
「大丈夫ですよ。鬱金香は今、外出中なので。」
と付け加える、貯古齡糖だが、鬱金香が居ないから大丈夫と言う訳でもないのだが……。
僕にとってはこの場が既に危ないものなので、鬱金香が居ようが居まいが、大差ない。
それでも、断れないこの空気。それをまとっている貯古齡糖。
「それでは少しだけ。」
と言ってしまった。全く。貯古齡糖は商売人に向いてるよ。
高いだけの何でもない壺を買ってしまいそうだ。
相変わらず、外の見た目とは裏腹にゴウジャスな玄関で靴を脱ぎ、初めて此処を訪れた部屋とは違う部屋へと通された。
前より二部屋奥の広い部屋に着いた。どうやらここはリビングのようだ。
いやー家具といい、置かれている絵や花といい、高そうだ。家の外見とは裏腹に。
こんな物が置けるのなら、こんな住宅地にどこにでもあるような家なんてやめて、もっと高そうな家にすればいいのに。
と思っている。口には絶対に出さないが。殺される覚悟があっても言えないが。
そうでなくても、あいつなら顔を見ただけで考えていることもお見通しかもしれないのに、口になんて出せるわけがない。
カチャカチャと食器がぶつかる音がする。
この音が僕は結構好きで、ずっと聞いていたい。
それでも、やっぱり紅茶の準備が終わって僕の前に出されると食器がぶつかる音はもう聞こえなかった。
正直に言うと、紅茶はあまり好きではない。
というか、口になにか入れることがそもそも好きではない。
願うなら、このまま飲まずに終わって欲しい。
必要以上に食べたり、飲んだりしたくないのだ。
別に僕は『命を大事にしよう!』なんて言わないし、思ってもいない。
弱肉強食の世の中で僕1人が何をして、どう考え、どう訴えたところで変わらない。
それが世の中の理だ。
別に食べたいものを食べたいだけ食べればいいと思う。
僕はそれを食べたくないと言っているだけだ。
そんな僕を見て、姉はひねくれてる。と言うだけだ。
「お飲みにならないのですか?そんなに警戒しなくても、薬などは入っておりませんよ。」
考え事をしていると、貯古齡糖から話し掛けていた。
ハッとして僕は前を向く。足を組み、僕の目の前に座っている貯古齡糖。
いやいや、そんな考えで飲んでいないわけではない。
というか、薬が入っていればやばいだろう。
しかし、この執事は主人が居ないだけで、随分と偉そうな態度をとるなと思うが何も言わないでおこう。
「それとも、紅茶はあまり好きではありませんでしたか?」
と聞いてくる。まぁ、あたりと言えばあたりなのだが……。
「いえ、いただきます。」
とカップに手をかけた。流石に断ることは出来なかった。
紅茶を1口飲む。やっぱり、口に何かを入れることは好きではない。
別に、紅茶に関しては美味しくないわけではなかった。
いや、正直いうとかなり美味しかった。紅茶は値段でこうも変わるものなんだな。
と感心してしまうほどだった。いや、ほんとに美味しい。
この紅茶を飲んでしまうと、普通の紅茶は飲めないくらい美味しい。
まぁ、僕は紅茶に詳しくないので本当にどれだけ美味しいのかは知らない。
そしてどれだけ美味しかろうと、僕はもう1度、紅茶のカップに手をかけることはなかった。
どれだけ美味しくとも、口の中に物を入れることは気持ち悪い感覚しかないのだ。
優雅にカップの中の紅茶を飲んでいる貯古齡糖を見て、こんなのが模範的な紅茶の飲み方なのだろうと思った。
「美味しくありませんでしたか?それとも、口に物を入れるのはお気に召しませんでしたか。」
と笑いながら、というか僕を馬鹿にしながら。
いやー、僕がお金持ちのボンボンでも、こんな奴を執事にしようとは思わないね。
もしも、お金持ちのボンボンだったらが前提の話ではあるけど……。
「いやー、失態ですね。まさか大切なお客様に不快な思いをさせて、申し訳ありません。」
と、意外にも僕のことをお客様扱いされていることに驚いた。
思ってはないだろうな。言っているだけで。と心の中だけで思っておくことにした。
言葉には絶対に出さない。睨み殺される。こんな場所で死にたくない。
そこで、ドアがいきなり開く。あいつが帰ってきた。
そもそも、学校を休んでいるのに何をしているんだ。
やっぱり不気味な顔で、眠そうに目をこすりながら言うのだ。
「その不快な感情、こちらが買い取って差し上げます。」
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