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第十二話 始まりの一日は、朝日と共に
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彼女の料理に舌鼓を打った後、平時とかけ離れた一日を過ごして疲労が溜まっていた私は、早々に眠りについた。普段は寝付くまでに時間がかかるのだが、この日はベッドに入るとすぐに夢の世界へと誘われた。
そのためか、目が覚めた私の視界に入ってきた太陽は、まだ半分しか顔を覗かせていない。
「おはようございます。今日は少し早いですね」
「ああ、おはよう」
いつの間にやら隣に浮かんでいた睡眠を必要としない彼女は、どうやら子供達の服を作っていたらしく、手に針と糸を持っている。
「とりあえず、普段着を一着ずつと下着を何枚か作ってみたんですけれど、他に何か作っておいた方が良い物ってありますかね?」
寝起きで頭の回っていない人間に質問を投げかけるのは酷というものだが、夜通し裁縫をしていた彼女にそんなことを言えるわけもなく、私は鈍い思考を働かせる。
「少なくとも靴は必要だろう。出来れば、ここらの森を歩き回るのに差し支えない丈夫さを備えた物が望ましいな」
堅実な意見を言ったつもりだったのだが、彼女は不満げな表情を浮かべる。
「家の中での履物はもう作ってありますし、近い内に外用の木靴も作るつもりです。そんな分かりきったこと言わないでください」
彼女の質問はつまり、私が思い付かないような子供達に必要な物を教えてくれ、という事らしい。1から10まで全てを口で説明するのが手間であるのは分かるが、言外に意味を込められすぎても真意が分からなくなるのだから、せめて質問の意図がはっきりとする程度には言説をして欲しいものだ。
「昨日まで奴隷だったあの子達に、何か必要な物はある?なんて訊くわけにもいかないんですから、後でもっとちゃんと考えておいてくださいね」
どうやら彼女は、子供達の将来だけでなく、直近の未来についてもっと考える必要があるのだと、私に諭したかったようだ。
昨日、あの子達の進学についてしか話し合わなかったことが、一晩考えている内に気がかりになったのだろう。
「ああ、分かっているよ」
生まれてから昨日まで奴隷だったあの子達に欲しい物を尋ねたとしても、そもそも具体的な物品名を知らない可能性が高い。だからこそ、あの子達が人として普通の生活を送れるような環境を、私達で整えてやらなければならない。
「ならよし。もうすぐ朝食にしますから、あの子達を起こしに行ってきてください」
彼女はそう言い残し、台所へと消えて行った。
私は彼女の言に従い、階段を上って子供達の部屋へと向かう。
部屋の前に立ち、どうやって入ったものかと思案した結果、ひとまずノックをすべきだという結論にいたり、手の甲で扉を三回叩く。
「おはよう。起きているかね」
起床しているかの確認というより、寝ていたとしても目覚めてしまうような声量で、なおかつ、あの子達が怯えないような声音で、扉越しに言葉を投げかける。
「はい」
短く弱々しいが、確かに返事が聴こえてきた。反応が早かったので、既に目は覚めていたらしい。
「朝食が出来ている。早く降りてきてくれ」
内容を端的に伝え、あの子等が出てくるのを待つことなく、階段を下る。あの子達も腹が空いているだろうから、すぐに降りてくるだろう。
そのためか、目が覚めた私の視界に入ってきた太陽は、まだ半分しか顔を覗かせていない。
「おはようございます。今日は少し早いですね」
「ああ、おはよう」
いつの間にやら隣に浮かんでいた睡眠を必要としない彼女は、どうやら子供達の服を作っていたらしく、手に針と糸を持っている。
「とりあえず、普段着を一着ずつと下着を何枚か作ってみたんですけれど、他に何か作っておいた方が良い物ってありますかね?」
寝起きで頭の回っていない人間に質問を投げかけるのは酷というものだが、夜通し裁縫をしていた彼女にそんなことを言えるわけもなく、私は鈍い思考を働かせる。
「少なくとも靴は必要だろう。出来れば、ここらの森を歩き回るのに差し支えない丈夫さを備えた物が望ましいな」
堅実な意見を言ったつもりだったのだが、彼女は不満げな表情を浮かべる。
「家の中での履物はもう作ってありますし、近い内に外用の木靴も作るつもりです。そんな分かりきったこと言わないでください」
彼女の質問はつまり、私が思い付かないような子供達に必要な物を教えてくれ、という事らしい。1から10まで全てを口で説明するのが手間であるのは分かるが、言外に意味を込められすぎても真意が分からなくなるのだから、せめて質問の意図がはっきりとする程度には言説をして欲しいものだ。
「昨日まで奴隷だったあの子達に、何か必要な物はある?なんて訊くわけにもいかないんですから、後でもっとちゃんと考えておいてくださいね」
どうやら彼女は、子供達の将来だけでなく、直近の未来についてもっと考える必要があるのだと、私に諭したかったようだ。
昨日、あの子達の進学についてしか話し合わなかったことが、一晩考えている内に気がかりになったのだろう。
「ああ、分かっているよ」
生まれてから昨日まで奴隷だったあの子達に欲しい物を尋ねたとしても、そもそも具体的な物品名を知らない可能性が高い。だからこそ、あの子達が人として普通の生活を送れるような環境を、私達で整えてやらなければならない。
「ならよし。もうすぐ朝食にしますから、あの子達を起こしに行ってきてください」
彼女はそう言い残し、台所へと消えて行った。
私は彼女の言に従い、階段を上って子供達の部屋へと向かう。
部屋の前に立ち、どうやって入ったものかと思案した結果、ひとまずノックをすべきだという結論にいたり、手の甲で扉を三回叩く。
「おはよう。起きているかね」
起床しているかの確認というより、寝ていたとしても目覚めてしまうような声量で、なおかつ、あの子達が怯えないような声音で、扉越しに言葉を投げかける。
「はい」
短く弱々しいが、確かに返事が聴こえてきた。反応が早かったので、既に目は覚めていたらしい。
「朝食が出来ている。早く降りてきてくれ」
内容を端的に伝え、あの子等が出てくるのを待つことなく、階段を下る。あの子達も腹が空いているだろうから、すぐに降りてくるだろう。
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