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「ラン、遅かったね。どこまで買い物に――」
ドアの開く音に、ビィはランを出迎えようとしてギョッとした。
「どうしたの……」
「ビィ」
真っ青な顔をしたランがそこに立っていた。
「レクス……レクスが……」
「ラン! しっかりして」
ビィはランに深呼吸するように言った。言われるままに深く息を吸って、ランはビィに向き直る。
「……レクスが迎えに来た」
「それ、ほんと?」
「ルゥと引き離されてしまう……どうしよう」
ランは頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「嫌だ」
ランの瞳からツッと涙がこぼれた。
「……逃げる」
ランはハッと思いついたように顔を上げると自室に駆け込んだ。そして鞄に身の回りのものを突っ込んでいく。
「ラン……ラン!」
「逃げなきゃ……逃げないと」
「ランってば!!」
ビィは思わずランの頬を叩いた。
「痛っ……」
「ご、ごめん! ……でも聞いて、ラン」
「……」
ビィはランに抱きついた。ランが逃げないように、ランが少しでも落ち着くように。
「どこに逃げるっていうんだよ」
「レクスに……レクスに見つからないところ……ルゥを連れて逃げないと」
「ラン、落ち着いて」
ビィはランを抱きしめる腕に力を籠めた。
「一回、レクスと話をした方がいいと思う」
「ビィ!」
「逃げるにしたってそれからだろ? それに……レクスは何も知らせずにルゥも……いやお前も一緒にだって攫うこともできたんじゃないのか」
「それは……」
ランはビィの言葉が痛かった。レクスはアルファだ。初めて会った時のように魔法を使えば、ランもルゥも取れ去ることは簡単に出来たと思う。
それをしなかったのは、レクスの方でも話をしたいという態度の表れなんだろう
「わかったよ」
「ラン……」
落ち着きを取り戻したランの態度に、ビィはほっと胸を撫で降ろした。
「また来るって言ってた。そしたらオレ、レクスと話してみる」
「うん……」
ビィは抱きしめたままのランの頭を撫でた。そして、どうにか良い方向に話が向かうことを祈った。
「ママ……」
「ああ、ルゥおいで」
必死に荷造りしようとしていたランを驚いて見ていたルゥが近くに寄ってくる。ランは腕を掴む小さな手を握りしめた。
「いたいたい、ない」
「うん……」
幼い我が子が自分を心配しているらしいと察したランは、ルゥを抱き上げる。
「ママは大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「ううー」
ランはルゥを抱きしめ、その乳臭い匂いを嗅ぎながら、この子と離れては生きていけないと強く思った。
その為にも、レクスと話をしなくては……。ランは頭ではそうわかってはいても、重く苦しい気持ちになるのだった。
ドアの開く音に、ビィはランを出迎えようとしてギョッとした。
「どうしたの……」
「ビィ」
真っ青な顔をしたランがそこに立っていた。
「レクス……レクスが……」
「ラン! しっかりして」
ビィはランに深呼吸するように言った。言われるままに深く息を吸って、ランはビィに向き直る。
「……レクスが迎えに来た」
「それ、ほんと?」
「ルゥと引き離されてしまう……どうしよう」
ランは頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「嫌だ」
ランの瞳からツッと涙がこぼれた。
「……逃げる」
ランはハッと思いついたように顔を上げると自室に駆け込んだ。そして鞄に身の回りのものを突っ込んでいく。
「ラン……ラン!」
「逃げなきゃ……逃げないと」
「ランってば!!」
ビィは思わずランの頬を叩いた。
「痛っ……」
「ご、ごめん! ……でも聞いて、ラン」
「……」
ビィはランに抱きついた。ランが逃げないように、ランが少しでも落ち着くように。
「どこに逃げるっていうんだよ」
「レクスに……レクスに見つからないところ……ルゥを連れて逃げないと」
「ラン、落ち着いて」
ビィはランを抱きしめる腕に力を籠めた。
「一回、レクスと話をした方がいいと思う」
「ビィ!」
「逃げるにしたってそれからだろ? それに……レクスは何も知らせずにルゥも……いやお前も一緒にだって攫うこともできたんじゃないのか」
「それは……」
ランはビィの言葉が痛かった。レクスはアルファだ。初めて会った時のように魔法を使えば、ランもルゥも取れ去ることは簡単に出来たと思う。
それをしなかったのは、レクスの方でも話をしたいという態度の表れなんだろう
「わかったよ」
「ラン……」
落ち着きを取り戻したランの態度に、ビィはほっと胸を撫で降ろした。
「また来るって言ってた。そしたらオレ、レクスと話してみる」
「うん……」
ビィは抱きしめたままのランの頭を撫でた。そして、どうにか良い方向に話が向かうことを祈った。
「ママ……」
「ああ、ルゥおいで」
必死に荷造りしようとしていたランを驚いて見ていたルゥが近くに寄ってくる。ランは腕を掴む小さな手を握りしめた。
「いたいたい、ない」
「うん……」
幼い我が子が自分を心配しているらしいと察したランは、ルゥを抱き上げる。
「ママは大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「ううー」
ランはルゥを抱きしめ、その乳臭い匂いを嗅ぎながら、この子と離れては生きていけないと強く思った。
その為にも、レクスと話をしなくては……。ランは頭ではそうわかってはいても、重く苦しい気持ちになるのだった。
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