氷の艶やかな青年

はなおくら

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 楽しい。

 ハンナの心までも踊っていた。

 目の前には、熱い眼差しで微笑みかけてくれる人、手を握ると温もりを感じる。

「君と踊れるのはうれしいが、気に入らないことがあるんだ。」

 何か粗相をしてしまったのではないかと、ハンナは顔が青くなった。

「私何か足を引っ張る様な事してしまった?」

 セジャは微笑みながらハンナの腰をぐいっと抱き寄せた。

 その瞬間、ステップを踏んでいた足がずれてハンナは倒れそうになった。

 咄嗟に消え込んだセジャと顔が近くなり、周りに見られるほど目立ってしまった。

 慌てて起きあがろうとするハンナだがセジャに腰を抱かれて身動きできない。

 セジャは、ハンナの唇に熱いキスを贈ると、ハンナに見惚れていた男たちに牽制をかけた。

 周りの男たちはそそくさに去っていく。

 ハンナにはそんな男たちの視線など気にもしていなかった。逆にセジャを見るご令嬢の視線に少し嫉妬しているだけなのだった。

「んっ…セジャ様…。人前でやめて…。」

 頬を赤くして恥じらうハンナを、セジャは周りから隠す様にダンス会場から抜け出した。

 2人でバルコニーに、出るとセジャは我慢ができないと、ハンナを抱き寄せて顔中にキスを落とした。

「セジャ様…誰かに見られたらどうするの?」

「君が可愛いから仕方ないんだよ。それにこれが目的できているのだから気にする必要はないよ。」

「…そうだけど…んっ…!」

 彼から受けるキスに困りながらも、嫌ではなく受け入れてしまう。

 ハンナは暖かな感情が心に流れていた。

 その時、下にセドリックがいた。

「セドリックだわ。」

 セジャの胸を押してそう伝えると、むすっとした顔をしながらも、セジャ自身も下の庭をみた。

「本当だね。」

「私、あなたに紹介したかったの!……会ってくれる…?」

 反対されると思ったのかハンナは上目遣いでセジャを見つめた。

 セジャもそんなハンナの様子に、根負けした様に頷いた。

「ありがとう!セドリックはお友達なのよ!」

 嬉しそうに降りていく彼女を見ながら、セジャは何もなかったとはいえ、セドリックがハンナの前の伴侶だったことを思い出して、ハラハラしていた。

「ハンナ、僕から離れないで!」

 ハンナを抱きしめて動きを止めると、彼女も嬉しそうにうなずき彼の胸に頭を預けた。

「わかってる。私にはあなただけだもの。」

 可愛いハンナの姿にセジャは心臓の音を抑えることができなかったが、しばらくして、不思議と嫉妬もなくなった様に思っていた。

「彼に会わせてくれ。」

 セジャの言葉にハンナは嬉しくなります。頷いた。
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