再びあなたに会えて…

はなおくら

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 小走りで人のいるところに行く途中、前からジョセフ様が現れた。

「ジェーン、どうしたんだ?」

「ジョセフ様、先ほど体調を崩された青年が身動き取れない様で、誰か呼びにきたのです。」

「わかった、すぐ知らせよう。」

 ジョセフ様と近くの衛兵を呼んで一緒にその青年のところに駆けつけた。

 青年は今も苦しそうな呻き声をあげている。

 衛兵は青年の顔を見るなり声を上げた。

「王太子様、大丈ですか?」

「っ……あぁ…。」

 衛兵の声に私たちも礼をした。

 王太子は苦しそうに御礼を言ってくると、衛兵に連れられてその場を後にしたのだった。

「まさか王太子様だったとは、気が付きませんでした。」

「顔が見えなかったのだから仕方ない。ジェーン、君も疲れただろう…少し休もう。」

「はい。」

 ジョセフ様に支えられながら、私たちは大広間へと戻っていったのだった。

 数日後、王宮から呼び出しがあった。

 いつもならジョセフ様だけの事なのだが、なぜか私まで呼び出しがあった。

 二人で登城すると、王様と王妃様の横にあの時の王太子様がいらっしゃった。

「我が息子が世話になった様だ。心より感謝申し上げる。」

 王様は人のいい性格でこちらに御礼を伝えてきた。

「当然の事をしたまでです。王太子様が元気になられて安堵しました。」

 ジョセフの言葉と共に私も頭を下げた。

 顔を上げると、王太子様からの視線を感じて彼の顔を見つめた。

 彼は目を逸らして落ち着きのない態度だった。

 気になりながらも、知らぬふりをしてジョセフ様や王様の言葉に耳を傾けたのだった。

 王様から用があるとジョセフ様は呼び出された為、王宮の庭園で時間を潰していた。

 よりどり咲くたちを眺めながら、頬が緩む。

「綺麗だ…。」

 頭上から声がかかり頭を上げるとそこには王太子様がいらっしゃった。

「王太子殿下。」

 慌てて頭を下げると、王太子は慌てて頭を上げさせてくれた。

「気軽にしてください。それよりこの前の御礼を言いにきたのです。」

 私は首を横に振った。

「大したことはしていません。お身体何ともありませんか?」

私がそう聞くと王太子は恥ずかしそうに答えた。

「はい、おかげで助かりました。」

「それを聞いて安心しました。では失礼します。」

「あのっ…!」

下がろうとした私の手を王太子は掴んだ。

そしてあっという間に両手を包む様に掴まれた。

「もしよければ今後も会ってくださいませんか?」

驚いた私は断りを入れようと言葉を発したその時、目の前にジョセフが背を向けて立っていた。
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