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 朝食が目の前に並ぶと、ハリアは嬉しそうに、私に食べ物を口まで持ってきた。

「自分で食べられるから…。」

 彼の持っているフォークを取ろうとしたが避けられてしまう。

「いいから。」

 通されてしまってはどうしようもなくされるがまま口に運んだ。

 その様子にハリアは嬉しそうな表情を浮かべている。

 私自信恥ずかしくていたたまれない。

「もう自分で食べるわ…。」

 そういえばハリアはおとなしくしたがって自分の食事を始めた。

 それから毎日、時間さえあればハリアは私のところに来ては私に密着してくる。

 今は私の膝に頭を置いて横になりながら私の髪をくるくると回して遊んでいる。

「セレーナ、君の髪はふわふわしてる。ずっとこの髪に触れると胸が弾む…。」

 ハリアはそういうと目を閉じて、私の髪を撫でた。

 そんな彼の様子に、私は目が離せなかった。

 次第にハリアは髪を唇に近づけて優しくキスをした。

 そして意地悪な表情でこちらを見つめる。

 その姿が妖艶な姿に見えて、どきりと胸を掴まれた。

 だが次第にこんな姿をゆくゆく彼女に見せるのだと思うと気分が沈んでくる。

「セレーナ。」

 名前を呼ばれて顔を上げると、まるで私の心を見透かしたかの様に見つめてくる。

 ハリアの手が伸びて、私の唇に人差し指でなぞった。

 どくどくと心臓の音が早まる。

 彼の指に目が離せなくなり、指を追った次の瞬間、私の唇をなぞった指を、自分の指に触れさせた。

 ハリアは目を閉じて、そのまま動かなくなった。

 居ても立っても居られなくなり、私は声を上げた。

「もう時間よ!」

 彼の頭を上げさせて、早々に部屋から追い出した。

 彼が行った事を確認して静かな部屋の中で、体が打ち震えてドア越しにしゃがんだ。

「だめっ…っ…どうしたら…。」

 ハリアにときめいている自分を抑えるのに体が喜んで、どうにもならなかった。

 彼からの溺愛に葛藤する中、ルーマー男爵がハーブ嬢を連れて屋敷を訪れる様になった。

 仕事上の話はもちろんのことだが、他にもルーマー男爵は娘が可愛いのか何かしらとハリアとハーブ嬢に接点を持たせようとしている。

 その助けもあってか二人の間もどこか親しくなっている様だった。

 そんな姿を見るのが忍びなく感じて、私は理由をつけて部屋を退室した。

 ハリアは気にかけてくれる様だったが、男爵がいる手前追いかけてくることはなかった。

 そんな事があったとある日、気晴らしにと買い物をしようと街中で馬車を降りた時、目の前からボロ布を身に纏った男がすがる様に近づいてきた。

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