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「ハリアってば!」

 嫉妬してくれる彼の気持ちがなんだか嬉しかった。

「彼はね、あなたと結婚する前に遊び相手としてきてた男の子なの。あの夜会で久しぶりにあったのよ。」

「ふーん…。」

 わたしの説明に、尚ハリアは不機嫌だった。

「どうしたの?」

 私がそう聞くと、ハリアは息をひとつ吐いて言った。

「僕の知らない君を知ってるんだ。」

 ハリアは、そういうと私の身体を苦しくなるくらい抱きしめた。

「ハリアっ!苦しいわ…。」

「我慢して、これでも抑えてるんだから…。」

 不貞腐れる彼が可愛くて私は、彼に負けないくらいの力で抱きしめ返した。

 すると彼は嬉しそうにしている。

「過去のことはどうしようもできないけど、私の事を一番知ってるのはあなただけよ…。それにわたしを一番愛してくれるのも…。」

「セレーナ…。」

 もう一度抱きしめ合った。

 幸せな気持ちに包まれる。

 ハリアの目を見たとき、わたしは彼にこのブローチを持ってて欲しいと思った。

「ハリア、手を出して?」

「なに?」

 ハリアはてを差し出してくれた。

 彼の手の中に、今まで持っていたブローチを持たせた。

「セレーナ、いいのか?」

 驚く彼にわたしは頷いた。

「えぇ、安物だけど…貴方を思って持っていたものだから…ハリアのそばに置いて欲しいの。」

 私がそうお願いすると、ハリアは嬉しそうだった。

「セレーナ、感激だよ。一生大切にするよ。これ以上のものはなかなか見つけられないだろう。」

 大事そうに握りしめられたブローチを見つめて、私も心が満たされた気持ちになった。

 ハリアとしばらくたくさんの話をしたが、いつの間に眠ってしまった。

 翌朝、ハリアは用事があると置き手紙を置いていた為、1人朝を迎えたのだった。

 それからは静かな日常が訪れていた。

 昼は公務や貴族の交流、夜はハリアと語らい合った。

 そんなに何げない日常の中、事件は起きた。

 今日は、ハリアのみ領地に赴く為3日ほど家を空けていたときだった。

 ハリアが帰ってくる前日の夜、私は寒くなったので彼のために羽織れるケープを縫っていた。

 集中しすぎたせいか、外は真っ暗になってしまい、私はベッドの横の蝋燭に火を灯した。

 その時、冷たい風を肌で感じ窓を見ると空けたはずもない窓が空いていた。

 わたしは窓辺に近づき窓を閉めたときだった。

 口元を抑えられたかと思うと、そのまま意識を手放したのだった。

 …………………。

 どれくらいそうしてただろうか、目が覚めると見覚えのない屋敷の中にいた。

 近くには2人の見張りがおり、こちらが目を覚ましても何もせずにいるのだった。
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