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「ハリア、ありがとう…。」

「セレーナ…。」

 私たちは再び互いの存在を確かめ合うように抱きしめあった。

 それは悲しみを分かち合う物だった。

 次の日、私とハリアが図書室で読書を楽しんでいた時だった。

 ハーブ嬢が会いたいと屋敷に訪れた。

 私とハリアは互いの顔を見合いながらも、応接室へと歩き出した。

 部屋に入るとそこには、質素な服に身を包んで立ち上がるハーブ嬢がいた。

 彼女は深々と頭を下げたまま動くことはなかった。

「何かようでも?」

 ハリアの淡々とした言葉に、ハーブ嬢は肩をびくりとさせながらも頭を上げて口を開いた。

「今回の件、温情をかけて頂き感謝しています…。」

 私たちの顔を見て、ひどく悲痛な表情をしていた。

 わたしは何も言わずに彼女の話に耳を傾けた。

「本来であれば許されることではありません。命を助けて頂いたこと感謝しています。わたしはこれから修道院へと身を寄せる事にしました。」

 彼女の話にわたしはいち早く反応した。

「なぜそこまで!それにあなたは知らなかったのですから…っ!」

 わたしの反論をハーブ嬢は首を横に振った。

「わたしの罪は自分でよくわかっているのです…。」

 ハーブ嬢は、再び頭を下げるとお礼を言って、こちらの返事も聞かず屋敷を部屋を出て行った。

 あっけなく去っていって彼女を追いかけようと立ち上がった私をハリアは引き留めた。

「追わないと…っ!」

 ハリアは首を横に振ると私の顔を見て言った。

「彼女は自分で幕引きを決めたんだ。僕らができるのは尊重してあげるだけだよ…。」

 そう言われてしまっては、わたしは何もできなかった。

 その後、ハーブ嬢の身の回りを調べさせると彼女は心身勤めて働いているという、前向きにしている彼女の邪魔をしてはいけないと、心の中で彼女の幸せを願いながら、私は打ち止める事にした。

 ハリアは心配するわたしに大丈夫だと言って抱きしめてくれる。

 わたしはそんな彼の胸に寄り添い、この問題を忘れる事にした。

 それから日々の慌ただしい生活の中、狩猟大会が開かれる事になった。

 狩猟好きの集まる大会には、ハリア自身興味はなかったが立場上出席しなければならない。

 そうなれば、わたしも他人事ではいられない。

 狩猟大会当日には、大昔からの伝統で迎え撃つ紳士に、淑女は刺繍を施したハンカチーフを渡さなければならない。

 これが悩みの種になった。

 昔から刺繍を習ってきてはいたが、まともな作品ができた試しがない…。

 それでも一生懸命針糸を、布に通しながら彼の黒い髪をイメージした鳥を作っている。
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