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 出来上がった時には、少し歪んだ黒い鳥のシルエットができた。

 それを見て、渡すべきか悩んだ。

 これから狩猟大会に出れば一週間程テント付きの野宿生活がある。

 そこで淑女は紳士の安全を祈るのだ。

「これを渡していいものか…。」

 そんなふうに頭を抱えながら当日が訪れた。

 彼と狩猟大会の場所まで馬車で揺られる間、彼の隣に座り手を握り合った。

「ハリア、怪我しないでね…。」

 心配になってそういうと、ハリアはキスをくれる。

「心配ないよ、いいものを獲って君に届けるよ。」

「ありがとう。」

 そうして狩猟会場まで着いた。

 テントの準備が終わるまで、他の社交づきあいに勤めた。

 仲のいい知り合いと会話を楽しんでいると、横目にハリアの周りをたくさんの女性が蔓延っている。

 面白くない気持ちになりながらも、表に出さないように努めた。

 しかしどうしても気になる。

 それは何人もの女性がハリアにハンカチを渡そうとしている。

 もちろんハリアは丁重にお断りしているが、気になって仕方ない。

 よく見ると他の令嬢の刺繍は美しくできており、自分のものをわたして仕舞えばハリアに恥をかかせてしまう。

 わたしは、自分のハンカチを届かないところまで懐にしまい、会話に集中した。

 狩猟の合図が起こる少し前、ハリアが近づいてくる。

「ハリア、気をつけてね…。」

「わかってるよ…それよりセレーナ、僕に渡すものない?」

「えっ…!」

 伝統行事のためわかってはいたがいざ言われると焦ってしまう。

 わたしはパッと誤魔化した。

「ごめんなさい…つい忘れてしまって…。」

 彼の顔が見れずに目を逸らすと、ハリアはしばらく私を見た後笑顔で言った。

「そっか…残念だよ…。じゃあ行ってくるね。」

「えぇ…気をつけて…。」

 彼が馬に乗って颯爽と走って行った。

 それを見送ると、わたしは用意されたテントに入り彼の無事を願った。

 その日は、ハリアが上位に立ち、皆散り散りに自分のテントに戻って行った。

 その夜、ハリアは上位になった為他の貴族の付き合いもありまだ会えていない。

 夜も更けたのでそろそろ眠りに着こうとしたその時だった。

「セレーナ…寝た?」

 ハリアの声がした為わたしはテントの幕を開けた。

「ハリア、どうしたの?」

「狩猟後、セレーナに会えなかったから…。」

「そうね…お疲れ様。ハリアすごいわ、あなた上位になるなんて!おめでとう。」

「ありがとう。」

 わたしがお祝いを伝えるとハリアは嬉しそうにお礼を言った。

 彼も疲れてるだろうと、テントに入れるのはどうかと思い戻って休むように伝えた。

 するとハリアは笑みを浮かべながらも薄寒いオーラを醸し出した。
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