彼の優しさに触れて

はなおくら

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あっという間に

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 どれくらいの時間が過ぎたのだろうか。

 時間も気にせずリュークと過ごす時間は幸せなものだった。

 しかしこんなことをしていてはと焦る自分もいる。

 現に、使用人が何度も部屋を訪れてはリュークによって門前払いを喰らわされていた。

「もう…終わりにしましょう?」

 私が彼に問いかけると、窓を見ていた彼は、こちらを見つめる。

 近寄って足の上に私を乗せて顔中にキスの雨を降らせた。

「君とだけ生きていきたい…。」

「……。」

 同じ気持ちだと心の中でつぶやいた。

「ダメ…やはり離れるべきだと思うの…。」

 涙が流れそうになってしまう。

 彼は微笑んで言った。

「きみが心配することはなにもないよ。」

「…どういうこと?」

 リュークは微笑んだままなにも言わない、その笑みに何か嫌な予感がしていた。

 それは、あっという間に答えが出た。

 彼が1か月の間、姿を見せることはなく、私は離れへと移動させられた。

 離れから出る事を禁じられ、見張りも男女共に合わせて5人の使用人がついた。

 逃げようと画策してみたが、どうしても抜け出せずに歯痒い思いをした。

 それから1か月後、彼は私の部屋を訪れた。

「リューク…。」

 尚一層、影が宿ったような気がした。

 見た目は愛おしく健康に見えるが、どこかおかしい。

「リューク、どうかしたの…?」

「メソア…これで君と過ごせるよ…。」

「えっ…?」

 彼に強く抱きしめられて聞きたい事がたくさんあるのに問いかける事ができない。

 それから彼は、メソアの部屋に篭るようになった。

 彼が求められるまま抗えなかった。

 抵抗すれば、彼が壊れるような気がしたから。

「あっ…もう……っ。」

 彼に足を開かされ、その間に彼の頭が、夢中にむさぼる。

 首を横に振って待ってと伝えても、止めようとせず、足を上げさせられ仕置きだというように、舌を這わされる。

「リューク……。」

 頬が赤く身体中が火照り、彼の舌に集中してしまう。

 もう何度いかされたかわからないほど、身体がおかしくなる。

 次第には欲が出て、奥に欲しいと願ってしまっていた。

 それがお見通しのように、彼は大きくなったそれをメソアの顔の前に見せた。

「…欲しい…?」

 挑戦的な視線に、ゾクゾクした。

 もう身体が欲しており、恥もなかった。

「欲しい…お願い…。」

「僕を愛してる?」

「……えぇ…。」

 認めるしかなかった。

 身体がというよりもいつしか彼に対する思いを否定することなどできなかった。

 彼は嬉しそうに、近づくと四つん這いにさせて中に入ってきた。

「はっ…!」

 彼の大きいものを受け入れた。

 彼は待つこともせず一心不乱に腰を動かして、いいところを責める。

「もう…私……!」

 絶頂を迎えると伝えた瞬間、彼の腰が激しく動き後ろから閉じ込めるように共に果てていった。

 果てた瞬間、目の前が真っ暗になり、気を失ったのだった。

 次に目を覚ました時には、いつもの部屋ではなかった。

 目を開け、気がつくと腕に温かいものを感じた。

 温もりのあるところへ目をやると、彼が眠りについていた。

 彼の寝顔を見つめていると、微笑みが浮かんだ。

 子供のように純粋な表情に、顔が綻んでいった。

 どれくらい見つめていただろうか、彼の瞼が動き目を覚ました。

「おはよう…。」

 そういうと彼はにっこりと笑って返してきた。

「メソア…よく眠れた?」

「ええ…それよりもここはどこなの?」

 そう問いかけると、彼は笑って言った。

「今から支度をして…ついてきて欲しいところがあるんだ。」

「わかったわ。」

 支度をして、彼の手を握りついていく。

 彼と手を繋いで歩くのは久しぶりの様な気がして恥ずかしくなる。

 だがその時、彼は自分といて本当にいいのかと悩んでしまう。

 一線を超えてしまったが、婚約者のこと、そして祖国…マボの事…解決しないといけない事が多いはずなのに、こんなことしてていいのか…。

 長い廊下を歩いて、屋敷の内庭にたどり着いた。

 目の前の建物に私は目を見張った。

 そこには彼と3年間一緒に暮らした住処があったからだった。

 彼は微笑んだまま、手を引き中へと招いてくれた。

 中はあの頃となにも変わらない、しかしずっと手入れされていたのか綺麗なままだった。

「これは…。」

「君と僕の思い出の場所だからね…、本当は元の場所に保管したままにしたかったんだが、あそこはね…何かと物騒だからここに移動さしてもらったんだ。」

 そう伝えた彼の手を離して、思い出の部屋を見まわした。

 嬉しくて涙が流れた。

「あなたとここで過ごした日々…忘れてないわ…。」

「僕もだよ。」

「幸せだった…。」

「あぁ…。」

「………。」

「一つだけ教えて欲しい。」

 彼の顔を見つめるとどこか思い詰めた様な顔をしている。

「何故あの時、君は姿を消したんだ。」

 彼の真剣な瞳を見つめて、観念した様に今までのことを伝えた。

「あなたは私に絶望すると思うわ…。」

「そんなことはない!」

「いいえ…。」

 目を閉じて覚悟を決めた。

 目を開けて、自分が見てきたこれまでのことを伝えた。

 自分の祖国のこと、何故この国に来たのか、そして何故彼から離れたのか…。

 彼は、苦しそうに話を聞いてくれた。

 話終わると、彼は私を抱きしめて言った。

「話してくれてありがとう…。僕も君に伝えなければならない事があるんだ…。」

「えぇ…。」

 私は彼が話す内容をどこか予知していたようなそんな心地がしていた。
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