【R18】聖女さま、団長とまぐわっていただけませんか?

澤谷弥(さわたに わたる)

文字の大きさ
17 / 22

団長(3)*

しおりを挟む
 気がつけば、自身のベッドの柱に両手両足を拘束されていた。

 心配そうにこちらの顔を覗き込むミロの顔が見えたような気がした。だが、すぐに気を失い、また目が覚める。誰もいない。そして、意識を奪われる。それの繰り返しだった。
 これは間違いなく魔物の体液による作用である。そのような文献を読んだことがあったため、すぐにわかった。魔物の腕を切り落としたときに飛び散った体液が、目や鼻からニールの体内に取り込まれたのだ。

 なんとか目が覚め、自我を保てた時にミロに伝える。

「魔導全集第四巻、魔物の章の第十三項」

 ミロはそれだけですべてを理解したはずだ。彼は若いが、非常に優秀な魔導士である。だからニールが側においている。

 すべてを彼に託すと、ほっと安堵に包まれ、意識を手放した。

 彼は聖女を連れてくるだろうか。ニールを助けられるのは聖女アズサしかいない。あとはアズサが引き受けてくれるかどうかだ。

 それが問題でもある。

 彼女に断られたら、ニールは確実に死ぬ。
 それはそれでよいのかもしれない。聖女に命を握られ、彼女によって生死を左右される。なんて刺激的な人生なのだろうか。

 ゆらゆらとする意識の中をさ迷い、自分の人生を見直していた。走馬灯とは違うような、過去に遡っていく感じだった。

『アンヒム団長、苦しそうですね』

 アズサの声が聞こえる。幻聴だろうか。そろそろ死期が近いのか。
 ぼんやりとする頭を軽く振る。

『アンヒム団長、私は団長を助けたいだけなのです』

 最期になんて素敵な夢をみているのだろうか。
 だが、それは夢ではなかった。

 アズサがニールを助けるために身体を差し出してくれたのだ。





「んっ」

 腕の中の彼女が身じろいだ。彼女の白い肌にはところどころ鬱血痕が散っている。もちろん、それを残したのはニールである。

「起きたのか?」
「ん? あっ」

 ぱっと目を開けた彼女は、驚いたように頬を赤く染め始めた。何か言いたそうに口をもごもごと動かすが、言葉は出てこない。

「なぁ、いいか?」

 ニールは、熱くなっている芯を彼女に押し付けた。二人とも身体には何も身に着けておらず、こうやってシーツにくるまっている。

「朝から?」
「朝からじゃなかったらいいのか?」

 ニールの言葉に、アズサは頬を赤く染めたまま「そうね」と呟く。

「そうか。なら、いいんだな」

 まだ寝ぼけている彼女を組み敷く。
「な、ちょ。ちょっと」
「朝からじゃなかったら、いいんだろ? もう、昼過ぎだ」
「は?」

 信じられない、とでも言うかのように、彼女は大きく目を見開いた。

「昼過ぎ? 朝じゃなくて?」

 やはり彼女はニールの言葉が信じられないようだ。

「こんなところで嘘をついてどうする」
「あなたのことだから、そうやって私のことを誤魔化そうとしているのかなって」
「残念ながら、昼過ぎだな」

 ニールはベッドを覆うカーテンを開けた。カーテンの向こう側に見える窓にはレースのカーテンが引かれ、眩しい太陽の光を透かしている。
 その光の入り込み具合を考えれば、朝ではなく昼過ぎ、つまり太陽が昇って真上を通り過ぎてしまったのがよくわかる。

「魔導士団長が、こんな堕落した生活を送ってもいいわけ?」

 シーツを胸元にまで手繰り寄せ、アズサは身体を起こした。

「問題ない。それに、これは堕落ではない。俺の魔力を高めるために必要な行為だ。いや、俺を助けるためと言えば、周囲も納得するだろう」
「それって、ただヤりたいだけに聞こえるんだけど」
「ああ、ヤりたいに決まっているだろう? やっと好きな女を手に入れたんだ」

 ニールが真剣な眼差しで訴えると、呆れたような声が聞こえてくる。

「だから童貞っていやなのよ。めんどくさい」
「そうだな。お前には俺の初めてを奪った責任を取ってもらわねばならないな」
「こんな風に?」

 にたりと笑ったアズサは、膝を立ててニールの硬くなったものをグリグリと刺激してきた。

「くっ」

 予想しなかった行為に、ニールは苦悶の声を漏らす。

「素敵な鳴き声ね」

 アズサの手がニールの逸物に伸びた。

「あぁ……。硬い。こうやって、握って動かしたら、どうなるのかしら?」
「うっ、くぅ」

 ニールが歯をぎりぎりと噛み締める。
 だが、ニールも負けていられない。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

召喚聖女に嫌われた召喚娘

ざっく
恋愛
闇に引きずり込まれてやってきた異世界。しかし、一緒に来た見覚えのない女の子が聖女だと言われ、亜優は放置される。それに文句を言えば、聖女に悲しげにされて、その場の全員に嫌われてしまう。 どうにか、仕事を探し出したものの、聖女に嫌われた娘として、亜優は魔物が闊歩するという森に捨てられてしまった。そこで出会った人に助けられて、亜優は安全な場所に帰る。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

異世界召喚されたアラサー聖女、王弟の愛人になるそうです

籠の中のうさぎ
恋愛
 日々の生活に疲れたOL如月茉莉は、帰宅ラッシュの時間から大幅にずれた電車の中でつぶやいた。 「はー、何もかも投げだしたぁい……」  直後電車の座席部分が光輝き、気づけば見知らぬ異世界に聖女として召喚されていた。  十六歳の王子と結婚?未成年淫行罪というものがありまして。  王様の側妃?三十年間一夫一妻の国で生きてきたので、それもちょっと……。  聖女の後ろ盾となる大義名分が欲しい王家と、王家の一員になるのは荷が勝ちすぎるので遠慮したい茉莉。  そんな中、王弟陛下が名案と言わんばかりに声をあげた。 「では、私の愛人はいかがでしょう」

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

黒騎士団の娼婦

イシュタル
恋愛
夫を亡くし、義弟に家から追い出された元男爵夫人・ヨシノ。 異邦から迷い込んだ彼女に残されたのは、幼い息子への想いと、泥にまみれた誇りだけだった。 頼るあてもなく辿り着いたのは──「気味が悪い」と忌まれる黒騎士団の屯所。 煤けた鎧、無骨な団長、そして人との距離を忘れた男たち。 誰も寄りつかぬ彼らに、ヨシノは微笑み、こう言った。 「部屋が汚すぎて眠れませんでした。私を雇ってください」 ※本作はAIとの共同制作作品です。 ※史実・実在団体・宗教などとは一切関係ありません。戦闘シーンがあります。

処理中です...