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 何が起こるかは容易に想像がつくし、どこかでそうなることを望んでいる自分がいる。だけど、ホントにいいのだろうかとさえも思えてくる。つまり、葛藤。

「よし、風呂だ。一緒に入るぞ」

 満面の笑みを浮かべた彼が、ちょっとだけ可愛く見えた。私もたいがい、レインハルト殿下には甘いのだ。

「はいはい」
「やけに素直だな」
「素直なのは、嫌いですか?」
「嫌いじゃないけど、調子が狂う」
「わかりました。どうぞ、一人で入ってきてください。私は外で待っておりますので」
「うぐっ」

 レインハルト殿下は私が近づいてきて、私を見下ろす。

「お前は、一体なんなんだ?」
「何がですか?」
「僕のことが好きなのか? どうなんだ?」

 どうなんだと言われても。好きか嫌いかで言えば、間違いなく好き。素直になれない理由もわかっている。私のほうが、十歳も年上だから。

 だから、彼を包み込むようにして大きく手を広げた。

「大好きですよ」

 吸い込まれるようにしてレインハルト殿下は私の胸元に顔を埋めてくる。私はその背をぽんぽんと優しく撫でる。彼は昔からかわらない。

 そのままレインハルト殿下は私の背に両手を回して、私を持ち上げた。

「え、ちょっと。何をなさるのですか?」
「だから、一緒に風呂に入る。昔は一緒に入ってくれたじゃないか」

 昔といってもそれはレインハルト殿下が十歳になるまでで、それ以降、パタリとお誘いがなくなったのだ。

「一緒にって……。レインハルト殿下のほうから、もう一緒に入らないって言ったんじゃないですか。なんで今さら……」
「そんなの、主従関係から婚約者同士になったからに決まっているだろう?」

 雄めいたところを見せたかと思うと、子犬のように尻尾を振ってくる。拒みたいけれど拒みたくない、矛盾する気持ち。

「じろじろ見ないなら、いいですよ」

 ちょっともじもじしながら、上目遣いで彼を見る。

「お前、そのタイミングで恥じらうな! 僕を試すようなことばかりしやがって」

 抱き抱えられたまま、私は浴室の隣の脱衣場へと連れていかれた。レインハルト殿下は私の上着の鉤を外しはじめる。先ほどとは違って優しい手つきだ。危なっかしいとも言う。

「自分でできます」
「僕がやりたいんだ」
「もう」

 仕方なく彼からの好意を受け止めることにした。でも、悪い気はしない。上着とシャツを脱がされ、上半身は下着姿に。さすがにトラウザーズは自分で脱いだ。

「では、私も殿下の服を脱がせますね」
「え!?」
「だって、私だけって不公平じゃないですか。それに昔はこうやって、いえ、今も着替えを手伝っていますよね?」
「着せられるのと脱がせられるのは別だ」

 恥ずかしそうに、ちょっとだけむくれているレインハルト殿下はやっぱり可愛い。
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