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35 ウォルさんってどんなひと?

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 遠くにテーマパークが見え出して、すっごいはしゃいじゃった。

「本当に行くんだね」

 って、涙が出るよ。

「泣いてばかりだな」

 涙を指で拭ってくれて、ハンカチ貸してもらった。

 まずはホテルの玄関前に行く。
 ホテルの人がドアを開けてくれて、外に出ると、ウォルさんは後部座席から荷物を出して、ホテルの人に預けてた。

 ウォルさんにコートを着せてもらって、マフラーもしてもらって、ホテルの車でテーマパークのエントランスまで送ってもらった。

 これって普通なの?
 テーマパークってこうして行くもの?

 でも違うよね?
 車のマドから外を見ると、歩いている人がいっぱいいるよ。

「歩きたかった?」

「ううん、良くわかんない」

 何もかも初めてで、ウォルさんが教えてくれることがオレの普通になってる。

 エントランスの正面に停まり、運転手にドアを開けてもらって降りる。そうしたらテーマパークの従業員? って思っていたら、支配人だって! 支配人って偉い人だよね?

 ヒョウの支配人さんに、みんなが並んでいる場所とは違うところから中に通してもらって。

 ウォルさんと支配人さんは難しい話をしている。ウォルさんと手を繋いで、後ろを歩いてる。

 なんだろう?
 ウォルさんってすっごい大人!
 横顔を見てるけど、いつもと違うよ。
 真剣で、でもたまに笑ってて、支配人さんの背中をぽんぽんってしてたり。

 テーマパーク内の人混みの近くに来たら、支配人さんは「楽しんでね」ってオレに笑いかけてくれて、手を振ってくれた。

「ウォルさん」

 ちょっと気後れするよ。
 ウォルさんがあまりに大人で、隣にいるの、オレで良いの? って気になる。

「退屈だった? ごめんね」

「ううん、大丈夫だけど……」

 繋いでいる手を引かれて、ウォルさんの腕の中に収まってた。

「どうした?」

 ううんって首を振って、ウォルさんを見上げる。じっと見られてる。言わないと許してくれないみたい。

「ウォルさんが、すっごく大人で、遠い気がして、オレが相手で良いのかなって。だってオレって何にも知らない。ウォルさんがいないと何にもできないよ?」

 ウォルさんにギュッて抱きしめられて、髪にキスされた。

「ホテルに戻って閉じ込めて、すぐに抱きたいよ」

 頬が熱くなる。
 なんで? どうしてそうなるの?

「俺の腕の中でゆっくり大人になれば良いよ。離れずに、そばにいてくれるだけで良いんだ」

「ホントに? 呆れない?」

「なぜ? ユートは何もかもが可愛いよ」

 ゆっくりウォルさんの顔が近づいて来て、頬に手を添えられて、キスしてた。すぐそばを人がいっぱい通ってるのに、そんなところでキスしてる。でも嬉しいんだよ。ウォルさんを独り占めしてる。

 オレ、だけ。
 ウォルさんにキスしていいの、オレだけ。

「行こうか」

 もう一度、ギュッて抱きしめられて、体を離されて、寂しいから、ウォルさんの腕に巻きついて歩き始めた。
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