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79 新生活について
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紘伊の側にはとても綺麗な獣人が付き添っている。名はエルチェリンド。名付け親はハーツだ。紘伊はエルと呼んでいる。
エルが紘伊の門として機能したのは、閉じた門を再び開く為の道具として使ったからだ。現在、エルとギルベスターが門を繋いでいる。
「エル、仕事の時間だ」
高層マンションの最上階に位置するハーツの部屋で、暮らし始めたのはもう3ヶ月も前の事だ。ハーツはまだこちら側に来た事がない。
「まだ早いよ、ヒロイ」
受け取った頃は真っ赤な肌の産まれたての鳥の雛のようだった竜の子も、あっという間に成人男性の姿になっている。しかも美しい。朝日に照らされた髪は白銀に輝いて肩を覆い、サラサラと白い肌を流れてシーツに落ちる。瞳は薄青い宝石のよう。肌もキメが細かく透き通るようで、程よく筋肉がつき、筋に青い血管が浮いているのも艶めかしいし、ポツンとした胸の飾りや、関節の辺りだけ薄赤く色づいているのも艶かしく見える。寝乱れたシーツの上で素肌を晒し、伸びをするエルには性的な欲望はカケラもないのに、見るものにはそういった想像をさせてしまう。
「早く起きてシャワーを浴びて来い。あと30分で出る時間だ」
ふわわとあくびをしたエルは、起き上がってボリボリと頭をかくと、「はーい」と間延びした返事をしてバスルームへ歩いて行く。
足が長く腰が高い。完全な人化をしているから鱗の一つもない。尻が小さいくせに肩幅は広い。見事な作り物のような体格を惜しげもなく披露するが、中身はまだ半年しか生きていない子どものままだ。
「フルーツと野菜ジュースだけで良い?」
「うん、いーよー」
バタンとドアが閉まり、シャワー音が聞こえて来る。インターフォンが鳴って入口のロックを外した。エルのマネージャーの到着だ。エルはモデルの仕事をしている。こちらに来てすぐにスカウトされたんだけど、そのスカウトが獣人で——獣人同士は匂いで分かるらしく、こちらに戻っていかに獣人が潜り込んでいるのか知る事になった。
「おはようございます、ヒロイさま」
「おはよう、カエデ朝食は食べた?」
紺のスーツに身を包んだ彼は鹿の獣人で名をカエデという。中性的な容姿で細身のパンツスタイルだと女性にも見える。獣人に女性はいないと知っているから間違わないけど、子を産めたりするから、こっちではどちらの扱いになるのだろうか。深く考えない事にする。
「ありがとうございますヒロイさま」
エルのいるバスルームへ今日の衣装を持って行く。ついでに身支度も手伝ってくれる優秀なマネージャーだ。カエデがいろいろ世話をしてくれている間に、紘伊も出かける用意をする。
紘伊は大学教授のアシスタントをしている。以前、お世話になっていた大学の教授で、紘伊と獣人の話題で意気投合した羽賀イヨカだ。紘伊は彼を日中のハーフだと思っていたが、実は獣人と人のハーフだと知った。
「行って来るよ、ヒロイ」
エルがとてもスタイリッシュな衣装を着けてバスルームから出て来て紘伊に抱きつく。紘伊の頬へのキスはハーツから学んでいる。
「気をつけて、カエデの言う事を良く聞くんだよ」
パックに入れたフルーツと野菜ジュースを手渡して、名残惜しそうに見て来るエルを見送った。
エルが紘伊の門として機能したのは、閉じた門を再び開く為の道具として使ったからだ。現在、エルとギルベスターが門を繋いでいる。
「エル、仕事の時間だ」
高層マンションの最上階に位置するハーツの部屋で、暮らし始めたのはもう3ヶ月も前の事だ。ハーツはまだこちら側に来た事がない。
「まだ早いよ、ヒロイ」
受け取った頃は真っ赤な肌の産まれたての鳥の雛のようだった竜の子も、あっという間に成人男性の姿になっている。しかも美しい。朝日に照らされた髪は白銀に輝いて肩を覆い、サラサラと白い肌を流れてシーツに落ちる。瞳は薄青い宝石のよう。肌もキメが細かく透き通るようで、程よく筋肉がつき、筋に青い血管が浮いているのも艶めかしいし、ポツンとした胸の飾りや、関節の辺りだけ薄赤く色づいているのも艶かしく見える。寝乱れたシーツの上で素肌を晒し、伸びをするエルには性的な欲望はカケラもないのに、見るものにはそういった想像をさせてしまう。
「早く起きてシャワーを浴びて来い。あと30分で出る時間だ」
ふわわとあくびをしたエルは、起き上がってボリボリと頭をかくと、「はーい」と間延びした返事をしてバスルームへ歩いて行く。
足が長く腰が高い。完全な人化をしているから鱗の一つもない。尻が小さいくせに肩幅は広い。見事な作り物のような体格を惜しげもなく披露するが、中身はまだ半年しか生きていない子どものままだ。
「フルーツと野菜ジュースだけで良い?」
「うん、いーよー」
バタンとドアが閉まり、シャワー音が聞こえて来る。インターフォンが鳴って入口のロックを外した。エルのマネージャーの到着だ。エルはモデルの仕事をしている。こちらに来てすぐにスカウトされたんだけど、そのスカウトが獣人で——獣人同士は匂いで分かるらしく、こちらに戻っていかに獣人が潜り込んでいるのか知る事になった。
「おはようございます、ヒロイさま」
「おはよう、カエデ朝食は食べた?」
紺のスーツに身を包んだ彼は鹿の獣人で名をカエデという。中性的な容姿で細身のパンツスタイルだと女性にも見える。獣人に女性はいないと知っているから間違わないけど、子を産めたりするから、こっちではどちらの扱いになるのだろうか。深く考えない事にする。
「ありがとうございますヒロイさま」
エルのいるバスルームへ今日の衣装を持って行く。ついでに身支度も手伝ってくれる優秀なマネージャーだ。カエデがいろいろ世話をしてくれている間に、紘伊も出かける用意をする。
紘伊は大学教授のアシスタントをしている。以前、お世話になっていた大学の教授で、紘伊と獣人の話題で意気投合した羽賀イヨカだ。紘伊は彼を日中のハーフだと思っていたが、実は獣人と人のハーフだと知った。
「行って来るよ、ヒロイ」
エルがとてもスタイリッシュな衣装を着けてバスルームから出て来て紘伊に抱きつく。紘伊の頬へのキスはハーツから学んでいる。
「気をつけて、カエデの言う事を良く聞くんだよ」
パックに入れたフルーツと野菜ジュースを手渡して、名残惜しそうに見て来るエルを見送った。
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