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第3話 訂正させてほしい
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エフティアは訓練場の外の雑木林にうずくまっていた。
「エフティア……さん?」
「……」
彼女は言葉を返してはくれなかった。
僕のせいだ。
「さっきは……その……僕が悪かったです。配慮に欠いた言葉だったし、とびきり言い方もきつかった。いくら、先生からの無理難題を跳ねのけるためだからって、言っていいことと、悪いことがある。人として、良くないよね。
ごめん……ごめんなさい」
少し、顔が上がった……と思うと、少女はまたうつむいた。
ふと冷たいものが手に当たる。雨だ。
「いけない、雨が降ってきたよ。屋根がある場所に行かないと」
「……ぃ」
「……うん?」
「……あ、あの……わたし……部屋がなくって……それで……でも……ア……ルくんの……で、でも……わたし……だめだから……うっ、うぅ……うああぁぁ……」
「ごめんっ! いくらでも僕の部屋に居てもらってもかまわないから!」
僕の部屋は語弊があるな……けど今はそんなことはどうでもいい。
うずくまっている少女の腕を取り、その手を掴んで引っ張り上げる。
「えっ……」
思わず声が出た。
ひどい泣き顔に面食らったわけでもない。
見かけの割には重かったから戸惑ったわけでもない。
彼女の手のひらには、それがあった。
両親の手の感触を思い出すほどの研鑽の証だ。
相変わらず、少女は泣いていた。
この手の持ち主とは思えない姿だった。
しばらくどうしようもなくて、お互い無言のままだった。
あの日からずっと、恥じ入ってばかりだ。
「……エフティアさん、さっきのことだけど、努力を怠っているという部分について、訂正させてほしい。僕が間違っていた」
「……?」
戸惑う彼女の手を引き、寮に向かう。
「あの……」
エフティアは何かを聞きたそうにしていたが、どう応えればよいか分からなかった。
部屋の前に着くと、ベッシュ先生がまだいた。
「お帰りなさい。お二人は……ずいぶんと仲が良くなったのですねぇ」
彼の視線は、僕達の手に向かっていた。
さっと手を離すと、エフティアと二人して居心地が悪そうにした。
「まあ、仲直りできたのであれば、後は若いお二人にお任せしましょうか」
「言い方を改めてください」
「まあ、アヴァル君に限って何か間違いが起こるとは思っていませんよ」
「当たり前です」
「その意気ですねぇ。あなたが間違えると……私が間違えたことになります。それはいけません。なぜなら私はもう少し先生を続けたいからです」
「じゃあ、そんなリスクを負わせないでください」
「ところで……私が心配しているのはどちらかというとアヴァル君ではなくエフティア君なのですが……先ほどから私の釘刺しにピンと来ていない様子なのですが、大丈夫ですか?」
エフティアは自分に話が振られると思っていなかったらしく、「ふぇ?」と目をまん丸くしていた。
その反応を見ていると、何だか不安になってくる。
普段おどけている先生も、一瞬、目を細めた。
「ということですのでアヴァル君、エフティア君のことは任せました」
「……女子寮の、彼女の部屋はいつ直るんですか」
「心配せずとも、直ったらお伝えします」
ベッシュ先生は明確な答えを出さないまま立ち去った。
残されたのは若すぎる男女二人だけ。
冷静に考えると……頭がおかしくなりそうだから、いったん切り替えなければ。
エフティアに向き直ると、打ち捨てられた子犬のように僕を見ていた。
「そんなに……」
長い沈黙があった。
そんなに……なんだろう。
「……わたしと一緒にベッドで寝るのがいやだった……?」
「ん……えぇ……?」
つまり……ベッドが一つしかないと仮定して……それで……どういうことだ――
――彼女の突飛な発言が、小さな予感を残した。それは、必要のないもののはずなのに、どこか抗いがたい何かだ。
それが胸の奥を圧迫して、音が鳴りやまない。
「エフティア……さん?」
「……」
彼女は言葉を返してはくれなかった。
僕のせいだ。
「さっきは……その……僕が悪かったです。配慮に欠いた言葉だったし、とびきり言い方もきつかった。いくら、先生からの無理難題を跳ねのけるためだからって、言っていいことと、悪いことがある。人として、良くないよね。
ごめん……ごめんなさい」
少し、顔が上がった……と思うと、少女はまたうつむいた。
ふと冷たいものが手に当たる。雨だ。
「いけない、雨が降ってきたよ。屋根がある場所に行かないと」
「……ぃ」
「……うん?」
「……あ、あの……わたし……部屋がなくって……それで……でも……ア……ルくんの……で、でも……わたし……だめだから……うっ、うぅ……うああぁぁ……」
「ごめんっ! いくらでも僕の部屋に居てもらってもかまわないから!」
僕の部屋は語弊があるな……けど今はそんなことはどうでもいい。
うずくまっている少女の腕を取り、その手を掴んで引っ張り上げる。
「えっ……」
思わず声が出た。
ひどい泣き顔に面食らったわけでもない。
見かけの割には重かったから戸惑ったわけでもない。
彼女の手のひらには、それがあった。
両親の手の感触を思い出すほどの研鑽の証だ。
相変わらず、少女は泣いていた。
この手の持ち主とは思えない姿だった。
しばらくどうしようもなくて、お互い無言のままだった。
あの日からずっと、恥じ入ってばかりだ。
「……エフティアさん、さっきのことだけど、努力を怠っているという部分について、訂正させてほしい。僕が間違っていた」
「……?」
戸惑う彼女の手を引き、寮に向かう。
「あの……」
エフティアは何かを聞きたそうにしていたが、どう応えればよいか分からなかった。
部屋の前に着くと、ベッシュ先生がまだいた。
「お帰りなさい。お二人は……ずいぶんと仲が良くなったのですねぇ」
彼の視線は、僕達の手に向かっていた。
さっと手を離すと、エフティアと二人して居心地が悪そうにした。
「まあ、仲直りできたのであれば、後は若いお二人にお任せしましょうか」
「言い方を改めてください」
「まあ、アヴァル君に限って何か間違いが起こるとは思っていませんよ」
「当たり前です」
「その意気ですねぇ。あなたが間違えると……私が間違えたことになります。それはいけません。なぜなら私はもう少し先生を続けたいからです」
「じゃあ、そんなリスクを負わせないでください」
「ところで……私が心配しているのはどちらかというとアヴァル君ではなくエフティア君なのですが……先ほどから私の釘刺しにピンと来ていない様子なのですが、大丈夫ですか?」
エフティアは自分に話が振られると思っていなかったらしく、「ふぇ?」と目をまん丸くしていた。
その反応を見ていると、何だか不安になってくる。
普段おどけている先生も、一瞬、目を細めた。
「ということですのでアヴァル君、エフティア君のことは任せました」
「……女子寮の、彼女の部屋はいつ直るんですか」
「心配せずとも、直ったらお伝えします」
ベッシュ先生は明確な答えを出さないまま立ち去った。
残されたのは若すぎる男女二人だけ。
冷静に考えると……頭がおかしくなりそうだから、いったん切り替えなければ。
エフティアに向き直ると、打ち捨てられた子犬のように僕を見ていた。
「そんなに……」
長い沈黙があった。
そんなに……なんだろう。
「……わたしと一緒にベッドで寝るのがいやだった……?」
「ん……えぇ……?」
つまり……ベッドが一つしかないと仮定して……それで……どういうことだ――
――彼女の突飛な発言が、小さな予感を残した。それは、必要のないもののはずなのに、どこか抗いがたい何かだ。
それが胸の奥を圧迫して、音が鳴りやまない。
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