16 / 45
第16話 剣に想いを
しおりを挟む
◆
「あんたさぁ、昨日のあれ――どういう意味」
「……何のことか分からないや」
本当は分かってた。
わたしは昨日、また間違えたんだ――
…………
「レディナ―、特待生くん今日はいないね」
「なによ急にー」
「だって、レディナずっとあの子のこと気になるって言ってたじゃん」
「まあ……そうだけどさ[[ 気になるの意味が違う。独りぼっちだから心配だった。]]」
「間近で見るといっそうかっこよかったもん」
「レディナー、付き合っちゃいなよー。でなきゃ私がいっちゃおっかなー」
「ばか……やめてよ」
「やめてってどっちの意味ー?」
「どっちもだって……まったくあんたらは……」
そんな会話を近くで聞いていたエフティア――ほとんど無意識に口を開く。
「ほんと――」
その滑り出てきた声が、女子たちに聞こえてしまう。
「――ばかみたい」
エフティアが言い切ると、女子たちがエフティアを囲んだ。
「今、うちらのこと言ったの」
「あっ、あっ……えっと……ちが……」
「何がちがうんだよ」
レディナは急いで女子たちに割り込むと、「何ー、またエフティアが変なこと言ったの~?」と軽い調子で女子たちに笑いかける。
「こいつがうちらのこと『ばかみたい』って……」
「あのさー、この子が独り言多いの知ってるでしょ?」
「でもタイミングが――」
「いやほんと! でもさー、この子いっつもタイミング怪しいじゃん? たまに口を開いたかと思えば、『鳥が飛んでるー!』とか関係ない話するじゃん? 今回もそれだよ」
「まあ……確かに?」
「それに、あんたたちだって寝ぼけて変なことよく言ってるよ~? ま、あたしも授業中にベッシュ先生のもじゃもじゃ頭を見て、『ひつじがいっぴきぃ……』とか言ったりするけどさぁ」
「あはは! あれは笑った」
「ていうかさ、そろそろ次の授業始まっちゃうって――あたしは走る!」
「おい、そんな焦んなってー! うちらも走ろ!」
…………
――どうして上手くいかないんだろう。
「昨日の、『ばかみたい』って言ったあれだよ」
「……どういう意味って聞かれても、それこそどういう意味か……わかんないよ」
「あぁ~もう! あんたが本気であたし達のことを馬鹿にしたのかって聞いてんの!」
わたしがレディナちゃんたちのことを、ばかに?
そんなこと――してないもん。
「わ、わたしの方がばかなのに、そんなこと思わないよ」
「じゃあ、何であんなこと言った!」
「それは――」
――なんでだろう。わたし、何であんなこと。
「普通に考えて……あたし達がアヴァル君で恋バナしてたのを馬鹿にしてたようにしか……そういう風にしか…………見てもらえないよ」
「わ、わたし――」
そっか、わたし。
「――みんなのこと、『ばかみたい』って、思ったんだ」
「……」
「みんなが、わたしのこと『ばか』って言うのが、初めて分かった」
あはは、おかしい!
「エフティア、どうしてそう思ったの?」
「『ばかみたい』ってこと?」
「そうだよ」
「だって――」
エフティアは笑いながら涙を浮かべながら、笑って言った。
「――だって、アル君はわたしのものだから」
レディナはエフティアの言葉を聞くと、背を向けた。
「あんたさ、いつの間にか彼とは仲良くなってたってわけ?[[ 本当は、自分が一番最初に仲良くなりたかった。]]」
震える問いかけに、エフティアは嬉しそうに答える。
「そうだよ。わたしとアル君、今一緒に住んでるんだ……毎日訓練をする約束もしてるし、今度一緒に料理も作ってくれるって!」
「へぇ……そうなんだ」
「アル君はすごいんだ……みんな、わたしのことを『ばか』って言うけど、アル君は違う。だって、アル君は本物の剣使だから、わたしのことをちゃんと見てくれる。アル君だけが見てくれる」
エフティアは、レディナの背中に向かって言葉をぶつけた。
「あんたさ、流暢に喋れるじゃん」
「えっ? そうかなぁ」
「……なに得意げになってんの」
「えへへ……うらやましいんだ、わたしのことが」
エフティアは両手を後ろに組んで体を揺らした。
レディナは肩を震わせ、呼吸が荒くなる。拳を強く握りしめ、背中を向けたまま――
「――だからあんたは馬鹿なんだァッ!!」
ほとんど絶叫に近かった。
あまりの剣幕に、エフティアはびくっと硬直した。
「おっ、おおきい声やめてよっ!」
レディナは振り返り、エフティアに構わず声を張り上げる。
「あんたは何にも分かってない!! ぜんぶ中途半端!!」
「うるさいよぉ! 何が中途半端なの! 何言ってるか分かんない!!」
「あっ――」
エフティアは耳を押さえ、その場にうずくまる。
レディナは開きかけた口をいったん閉じ、今度はゆっくりと口を開いた。
「――あんたさ、彼と仲良くなったか知らないけど、昨日の自主訓練の時に、誰とも試合しなかったよね。初めてのことだったから、あたし、びっくりしたよ」
「……」
レディナはさらに声を静める。
「あれってさ、アヴァル君がいるから、あたし達は必要なくなったってこと?」
「……わかんない……でも、なんだか……声を出すのもしんどくなっちゃった」
「声をかけられてもさ、全然笑わないし」
「笑う意味……あるの?」
「……一昨日までは意味があったの?」
エフティアは、アヴァルと深く関わる前のことを振り返る。
口がゆがみ、乾いた笑いがこみ上げてくる。
「へへ……」
エフティアは地面を見つめたまま言った。
「なかったみたい」
感情のこもらない声。
「じゃあ、やっぱり、もういらないってこと」
「あはは――」
エフティアは立ち上がり、横目でレディナを視界に入れた。
「――そうだね」
冷たい風が吹き、レディナの髪が揺れる。
目をぎゅっとつぶり、剣を構える姿勢を取った。
「剣に想いを――」
レディナの手に剣が握られる。
「――馳《は》せなさい、エフティア。
この『ばかみたい』な関係をさ、断ち切ろうよ」
「あんたさぁ、昨日のあれ――どういう意味」
「……何のことか分からないや」
本当は分かってた。
わたしは昨日、また間違えたんだ――
…………
「レディナ―、特待生くん今日はいないね」
「なによ急にー」
「だって、レディナずっとあの子のこと気になるって言ってたじゃん」
「まあ……そうだけどさ[[ 気になるの意味が違う。独りぼっちだから心配だった。]]」
「間近で見るといっそうかっこよかったもん」
「レディナー、付き合っちゃいなよー。でなきゃ私がいっちゃおっかなー」
「ばか……やめてよ」
「やめてってどっちの意味ー?」
「どっちもだって……まったくあんたらは……」
そんな会話を近くで聞いていたエフティア――ほとんど無意識に口を開く。
「ほんと――」
その滑り出てきた声が、女子たちに聞こえてしまう。
「――ばかみたい」
エフティアが言い切ると、女子たちがエフティアを囲んだ。
「今、うちらのこと言ったの」
「あっ、あっ……えっと……ちが……」
「何がちがうんだよ」
レディナは急いで女子たちに割り込むと、「何ー、またエフティアが変なこと言ったの~?」と軽い調子で女子たちに笑いかける。
「こいつがうちらのこと『ばかみたい』って……」
「あのさー、この子が独り言多いの知ってるでしょ?」
「でもタイミングが――」
「いやほんと! でもさー、この子いっつもタイミング怪しいじゃん? たまに口を開いたかと思えば、『鳥が飛んでるー!』とか関係ない話するじゃん? 今回もそれだよ」
「まあ……確かに?」
「それに、あんたたちだって寝ぼけて変なことよく言ってるよ~? ま、あたしも授業中にベッシュ先生のもじゃもじゃ頭を見て、『ひつじがいっぴきぃ……』とか言ったりするけどさぁ」
「あはは! あれは笑った」
「ていうかさ、そろそろ次の授業始まっちゃうって――あたしは走る!」
「おい、そんな焦んなってー! うちらも走ろ!」
…………
――どうして上手くいかないんだろう。
「昨日の、『ばかみたい』って言ったあれだよ」
「……どういう意味って聞かれても、それこそどういう意味か……わかんないよ」
「あぁ~もう! あんたが本気であたし達のことを馬鹿にしたのかって聞いてんの!」
わたしがレディナちゃんたちのことを、ばかに?
そんなこと――してないもん。
「わ、わたしの方がばかなのに、そんなこと思わないよ」
「じゃあ、何であんなこと言った!」
「それは――」
――なんでだろう。わたし、何であんなこと。
「普通に考えて……あたし達がアヴァル君で恋バナしてたのを馬鹿にしてたようにしか……そういう風にしか…………見てもらえないよ」
「わ、わたし――」
そっか、わたし。
「――みんなのこと、『ばかみたい』って、思ったんだ」
「……」
「みんなが、わたしのこと『ばか』って言うのが、初めて分かった」
あはは、おかしい!
「エフティア、どうしてそう思ったの?」
「『ばかみたい』ってこと?」
「そうだよ」
「だって――」
エフティアは笑いながら涙を浮かべながら、笑って言った。
「――だって、アル君はわたしのものだから」
レディナはエフティアの言葉を聞くと、背を向けた。
「あんたさ、いつの間にか彼とは仲良くなってたってわけ?[[ 本当は、自分が一番最初に仲良くなりたかった。]]」
震える問いかけに、エフティアは嬉しそうに答える。
「そうだよ。わたしとアル君、今一緒に住んでるんだ……毎日訓練をする約束もしてるし、今度一緒に料理も作ってくれるって!」
「へぇ……そうなんだ」
「アル君はすごいんだ……みんな、わたしのことを『ばか』って言うけど、アル君は違う。だって、アル君は本物の剣使だから、わたしのことをちゃんと見てくれる。アル君だけが見てくれる」
エフティアは、レディナの背中に向かって言葉をぶつけた。
「あんたさ、流暢に喋れるじゃん」
「えっ? そうかなぁ」
「……なに得意げになってんの」
「えへへ……うらやましいんだ、わたしのことが」
エフティアは両手を後ろに組んで体を揺らした。
レディナは肩を震わせ、呼吸が荒くなる。拳を強く握りしめ、背中を向けたまま――
「――だからあんたは馬鹿なんだァッ!!」
ほとんど絶叫に近かった。
あまりの剣幕に、エフティアはびくっと硬直した。
「おっ、おおきい声やめてよっ!」
レディナは振り返り、エフティアに構わず声を張り上げる。
「あんたは何にも分かってない!! ぜんぶ中途半端!!」
「うるさいよぉ! 何が中途半端なの! 何言ってるか分かんない!!」
「あっ――」
エフティアは耳を押さえ、その場にうずくまる。
レディナは開きかけた口をいったん閉じ、今度はゆっくりと口を開いた。
「――あんたさ、彼と仲良くなったか知らないけど、昨日の自主訓練の時に、誰とも試合しなかったよね。初めてのことだったから、あたし、びっくりしたよ」
「……」
レディナはさらに声を静める。
「あれってさ、アヴァル君がいるから、あたし達は必要なくなったってこと?」
「……わかんない……でも、なんだか……声を出すのもしんどくなっちゃった」
「声をかけられてもさ、全然笑わないし」
「笑う意味……あるの?」
「……一昨日までは意味があったの?」
エフティアは、アヴァルと深く関わる前のことを振り返る。
口がゆがみ、乾いた笑いがこみ上げてくる。
「へへ……」
エフティアは地面を見つめたまま言った。
「なかったみたい」
感情のこもらない声。
「じゃあ、やっぱり、もういらないってこと」
「あはは――」
エフティアは立ち上がり、横目でレディナを視界に入れた。
「――そうだね」
冷たい風が吹き、レディナの髪が揺れる。
目をぎゅっとつぶり、剣を構える姿勢を取った。
「剣に想いを――」
レディナの手に剣が握られる。
「――馳《は》せなさい、エフティア。
この『ばかみたい』な関係をさ、断ち切ろうよ」
0
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
無限に進化を続けて最強に至る
お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。
※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。
改稿したので、しばらくしたら消します
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
嫁に来た転生悪役令嬢「破滅します!」 俺「大丈夫だ、問題ない(ドラゴン殴りながら)」~ゲームの常識が通用しない辺境領主の無自覚成り上がり~
ちくでん
ファンタジー
「なぜあなたは、私のゲーム知識をことごとく上回ってしまうのですか!?」
魔物だらけの辺境で暮らす主人公ギリアムのもとに、公爵家令嬢ミューゼアが嫁として追放されてきた。実はこのお嫁さん、ゲーム世界に転生してきた転生悪役令嬢だったのです。
本来のゲームでは外道の悪役貴族だったはずのギリアム。ミューゼアは外道貴族に蹂躙される破滅エンドだったはずなのに、なぜかこの世界線では彼ギリアムは想定外に頑張り屋の好青年。彼はミューゼアのゲーム知識をことごとく超えて彼女を仰天させるイレギュラー、『ゲーム世界のルールブレイカー』でした。
ギリアムとミューゼアは、破滅回避のために力を合わせて領地開拓をしていきます。
スローライフ+悪役転生+領地開拓。これは、ゆったりと生活しながらもだんだんと世の中に(意図せず)影響力を発揮していってしまう二人の物語です。
異世界ハズレモノ英雄譚〜無能ステータスと言われた俺が、ざまぁ見せつけながらのし上がっていくってよ!〜
mitsuzoエンターテインメンツ
ファンタジー
【週三日(月・水・金)投稿 基本12:00〜14:00】
異世界にクラスメートと共に召喚された瑛二。
『ハズレモノ』という聞いたこともない称号を得るが、その低スペックなステータスを見て、皆からハズレ称号とバカにされ、それどころか邪魔者扱いされ殺されそうに⋯⋯。
しかし、実は『超チートな称号』であることがわかった瑛二は、そこから自分をバカにした者や殺そうとした者に対して、圧倒的な力を隠しつつ、ざまぁを展開していく。
そして、そのざまぁは図らずも人類の命運を握るまでのものへと発展していくことに⋯⋯。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる