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第16話 剣に想いを
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◆
「あんたさぁ、昨日のあれ――どういう意味」
「……何のことか分からないや」
本当は分かってた。
わたしは昨日、また間違えたんだ――
…………
「レディナ―、特待生くん今日はいないね」
「なによ急にー」
「だって、レディナずっとあの子のこと気になるって言ってたじゃん」
「まあ……そうだけどさ[[ 気になるの意味が違う。独りぼっちだから心配だった。]]」
「間近で見るといっそうかっこよかったもん」
「レディナー、付き合っちゃいなよー。でなきゃ私がいっちゃおっかなー」
「ばか……やめてよ」
「やめてってどっちの意味ー?」
「どっちもだって……まったくあんたらは……」
そんな会話を近くで聞いていたエフティア――ほとんど無意識に口を開く。
「ほんと――」
その滑り出てきた声が、女子たちに聞こえてしまう。
「――ばかみたい」
エフティアが言い切ると、女子たちがエフティアを囲んだ。
「今、うちらのこと言ったの」
「あっ、あっ……えっと……ちが……」
「何がちがうんだよ」
レディナは急いで女子たちに割り込むと、「何ー、またエフティアが変なこと言ったの~?」と軽い調子で女子たちに笑いかける。
「こいつがうちらのこと『ばかみたい』って……」
「あのさー、この子が独り言多いの知ってるでしょ?」
「でもタイミングが――」
「いやほんと! でもさー、この子いっつもタイミング怪しいじゃん? たまに口を開いたかと思えば、『鳥が飛んでるー!』とか関係ない話するじゃん? 今回もそれだよ」
「まあ……確かに?」
「それに、あんたたちだって寝ぼけて変なことよく言ってるよ~? ま、あたしも授業中にベッシュ先生のもじゃもじゃ頭を見て、『ひつじがいっぴきぃ……』とか言ったりするけどさぁ」
「あはは! あれは笑った」
「ていうかさ、そろそろ次の授業始まっちゃうって――あたしは走る!」
「おい、そんな焦んなってー! うちらも走ろ!」
…………
――どうして上手くいかないんだろう。
「昨日の、『ばかみたい』って言ったあれだよ」
「……どういう意味って聞かれても、それこそどういう意味か……わかんないよ」
「あぁ~もう! あんたが本気であたし達のことを馬鹿にしたのかって聞いてんの!」
わたしがレディナちゃんたちのことを、ばかに?
そんなこと――してないもん。
「わ、わたしの方がばかなのに、そんなこと思わないよ」
「じゃあ、何であんなこと言った!」
「それは――」
――なんでだろう。わたし、何であんなこと。
「普通に考えて……あたし達がアヴァル君で恋バナしてたのを馬鹿にしてたようにしか……そういう風にしか…………見てもらえないよ」
「わ、わたし――」
そっか、わたし。
「――みんなのこと、『ばかみたい』って、思ったんだ」
「……」
「みんなが、わたしのこと『ばか』って言うのが、初めて分かった」
あはは、おかしい!
「エフティア、どうしてそう思ったの?」
「『ばかみたい』ってこと?」
「そうだよ」
「だって――」
エフティアは笑いながら涙を浮かべながら、笑って言った。
「――だって、アル君はわたしのものだから」
レディナはエフティアの言葉を聞くと、背を向けた。
「あんたさ、いつの間にか彼とは仲良くなってたってわけ?[[ 本当は、自分が一番最初に仲良くなりたかった。]]」
震える問いかけに、エフティアは嬉しそうに答える。
「そうだよ。わたしとアル君、今一緒に住んでるんだ……毎日訓練をする約束もしてるし、今度一緒に料理も作ってくれるって!」
「へぇ……そうなんだ」
「アル君はすごいんだ……みんな、わたしのことを『ばか』って言うけど、アル君は違う。だって、アル君は本物の剣使だから、わたしのことをちゃんと見てくれる。アル君だけが見てくれる」
エフティアは、レディナの背中に向かって言葉をぶつけた。
「あんたさ、流暢に喋れるじゃん」
「えっ? そうかなぁ」
「……なに得意げになってんの」
「えへへ……うらやましいんだ、わたしのことが」
エフティアは両手を後ろに組んで体を揺らした。
レディナは肩を震わせ、呼吸が荒くなる。拳を強く握りしめ、背中を向けたまま――
「――だからあんたは馬鹿なんだァッ!!」
ほとんど絶叫に近かった。
あまりの剣幕に、エフティアはびくっと硬直した。
「おっ、おおきい声やめてよっ!」
レディナは振り返り、エフティアに構わず声を張り上げる。
「あんたは何にも分かってない!! ぜんぶ中途半端!!」
「うるさいよぉ! 何が中途半端なの! 何言ってるか分かんない!!」
「あっ――」
エフティアは耳を押さえ、その場にうずくまる。
レディナは開きかけた口をいったん閉じ、今度はゆっくりと口を開いた。
「――あんたさ、彼と仲良くなったか知らないけど、昨日の自主訓練の時に、誰とも試合しなかったよね。初めてのことだったから、あたし、びっくりしたよ」
「……」
レディナはさらに声を静める。
「あれってさ、アヴァル君がいるから、あたし達は必要なくなったってこと?」
「……わかんない……でも、なんだか……声を出すのもしんどくなっちゃった」
「声をかけられてもさ、全然笑わないし」
「笑う意味……あるの?」
「……一昨日までは意味があったの?」
エフティアは、アヴァルと深く関わる前のことを振り返る。
口がゆがみ、乾いた笑いがこみ上げてくる。
「へへ……」
エフティアは地面を見つめたまま言った。
「なかったみたい」
感情のこもらない声。
「じゃあ、やっぱり、もういらないってこと」
「あはは――」
エフティアは立ち上がり、横目でレディナを視界に入れた。
「――そうだね」
冷たい風が吹き、レディナの髪が揺れる。
目をぎゅっとつぶり、剣を構える姿勢を取った。
「剣に想いを――」
レディナの手に剣が握られる。
「――馳《は》せなさい、エフティア。
この『ばかみたい』な関係をさ、断ち切ろうよ」
「あんたさぁ、昨日のあれ――どういう意味」
「……何のことか分からないや」
本当は分かってた。
わたしは昨日、また間違えたんだ――
…………
「レディナ―、特待生くん今日はいないね」
「なによ急にー」
「だって、レディナずっとあの子のこと気になるって言ってたじゃん」
「まあ……そうだけどさ[[ 気になるの意味が違う。独りぼっちだから心配だった。]]」
「間近で見るといっそうかっこよかったもん」
「レディナー、付き合っちゃいなよー。でなきゃ私がいっちゃおっかなー」
「ばか……やめてよ」
「やめてってどっちの意味ー?」
「どっちもだって……まったくあんたらは……」
そんな会話を近くで聞いていたエフティア――ほとんど無意識に口を開く。
「ほんと――」
その滑り出てきた声が、女子たちに聞こえてしまう。
「――ばかみたい」
エフティアが言い切ると、女子たちがエフティアを囲んだ。
「今、うちらのこと言ったの」
「あっ、あっ……えっと……ちが……」
「何がちがうんだよ」
レディナは急いで女子たちに割り込むと、「何ー、またエフティアが変なこと言ったの~?」と軽い調子で女子たちに笑いかける。
「こいつがうちらのこと『ばかみたい』って……」
「あのさー、この子が独り言多いの知ってるでしょ?」
「でもタイミングが――」
「いやほんと! でもさー、この子いっつもタイミング怪しいじゃん? たまに口を開いたかと思えば、『鳥が飛んでるー!』とか関係ない話するじゃん? 今回もそれだよ」
「まあ……確かに?」
「それに、あんたたちだって寝ぼけて変なことよく言ってるよ~? ま、あたしも授業中にベッシュ先生のもじゃもじゃ頭を見て、『ひつじがいっぴきぃ……』とか言ったりするけどさぁ」
「あはは! あれは笑った」
「ていうかさ、そろそろ次の授業始まっちゃうって――あたしは走る!」
「おい、そんな焦んなってー! うちらも走ろ!」
…………
――どうして上手くいかないんだろう。
「昨日の、『ばかみたい』って言ったあれだよ」
「……どういう意味って聞かれても、それこそどういう意味か……わかんないよ」
「あぁ~もう! あんたが本気であたし達のことを馬鹿にしたのかって聞いてんの!」
わたしがレディナちゃんたちのことを、ばかに?
そんなこと――してないもん。
「わ、わたしの方がばかなのに、そんなこと思わないよ」
「じゃあ、何であんなこと言った!」
「それは――」
――なんでだろう。わたし、何であんなこと。
「普通に考えて……あたし達がアヴァル君で恋バナしてたのを馬鹿にしてたようにしか……そういう風にしか…………見てもらえないよ」
「わ、わたし――」
そっか、わたし。
「――みんなのこと、『ばかみたい』って、思ったんだ」
「……」
「みんなが、わたしのこと『ばか』って言うのが、初めて分かった」
あはは、おかしい!
「エフティア、どうしてそう思ったの?」
「『ばかみたい』ってこと?」
「そうだよ」
「だって――」
エフティアは笑いながら涙を浮かべながら、笑って言った。
「――だって、アル君はわたしのものだから」
レディナはエフティアの言葉を聞くと、背を向けた。
「あんたさ、いつの間にか彼とは仲良くなってたってわけ?[[ 本当は、自分が一番最初に仲良くなりたかった。]]」
震える問いかけに、エフティアは嬉しそうに答える。
「そうだよ。わたしとアル君、今一緒に住んでるんだ……毎日訓練をする約束もしてるし、今度一緒に料理も作ってくれるって!」
「へぇ……そうなんだ」
「アル君はすごいんだ……みんな、わたしのことを『ばか』って言うけど、アル君は違う。だって、アル君は本物の剣使だから、わたしのことをちゃんと見てくれる。アル君だけが見てくれる」
エフティアは、レディナの背中に向かって言葉をぶつけた。
「あんたさ、流暢に喋れるじゃん」
「えっ? そうかなぁ」
「……なに得意げになってんの」
「えへへ……うらやましいんだ、わたしのことが」
エフティアは両手を後ろに組んで体を揺らした。
レディナは肩を震わせ、呼吸が荒くなる。拳を強く握りしめ、背中を向けたまま――
「――だからあんたは馬鹿なんだァッ!!」
ほとんど絶叫に近かった。
あまりの剣幕に、エフティアはびくっと硬直した。
「おっ、おおきい声やめてよっ!」
レディナは振り返り、エフティアに構わず声を張り上げる。
「あんたは何にも分かってない!! ぜんぶ中途半端!!」
「うるさいよぉ! 何が中途半端なの! 何言ってるか分かんない!!」
「あっ――」
エフティアは耳を押さえ、その場にうずくまる。
レディナは開きかけた口をいったん閉じ、今度はゆっくりと口を開いた。
「――あんたさ、彼と仲良くなったか知らないけど、昨日の自主訓練の時に、誰とも試合しなかったよね。初めてのことだったから、あたし、びっくりしたよ」
「……」
レディナはさらに声を静める。
「あれってさ、アヴァル君がいるから、あたし達は必要なくなったってこと?」
「……わかんない……でも、なんだか……声を出すのもしんどくなっちゃった」
「声をかけられてもさ、全然笑わないし」
「笑う意味……あるの?」
「……一昨日までは意味があったの?」
エフティアは、アヴァルと深く関わる前のことを振り返る。
口がゆがみ、乾いた笑いがこみ上げてくる。
「へへ……」
エフティアは地面を見つめたまま言った。
「なかったみたい」
感情のこもらない声。
「じゃあ、やっぱり、もういらないってこと」
「あはは――」
エフティアは立ち上がり、横目でレディナを視界に入れた。
「――そうだね」
冷たい風が吹き、レディナの髪が揺れる。
目をぎゅっとつぶり、剣を構える姿勢を取った。
「剣に想いを――」
レディナの手に剣が握られる。
「――馳《は》せなさい、エフティア。
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