グランディオスの剣姫たち 月華の章 ――復讐のために入学したのに女子と同居とは聞いてないッ!――

杉戸 雪人

文字の大きさ
16 / 45

第16話 剣に想いを

しおりを挟む


「あんたさぁ、昨日のあれ――どういう意味」
「……何のことか分からないや」

本当は分かってた。
わたしは昨日、また間違えたんだ――


…………

「レディナ―、特待生くん今日はいないね」
「なによ急にー」

「だって、レディナずっとあの子のこと気になるって言ってたじゃん」
「まあ……そうだけどさ[[ 気になるの意味が違う。独りぼっちだから心配だった。]]」

「間近で見るといっそうかっこよかったもん」
「レディナー、付き合っちゃいなよー。でなきゃ私がいっちゃおっかなー」

「ばか……やめてよ」
「やめてってどっちの意味ー?」

「どっちもだって……まったくあんたらは……」

そんな会話を近くで聞いていたエフティア――ほとんど無意識に口を開く。

「ほんと――」

その滑り出てきた声が、女子たちに聞こえてしまう。

「――ばかみたい」

エフティアが言い切ると、女子たちがエフティアを囲んだ。

「今、うちらのこと言ったの」
「あっ、あっ……えっと……ちが……」
「何がちがうんだよ」

レディナは急いで女子たちに割り込むと、「何ー、またエフティアが変なこと言ったの~?」と軽い調子で女子たちに笑いかける。

がうちらのこと『ばかみたい』って……」
「あのさー、この子が独り言多いの知ってるでしょ?」

「でもタイミングが――」
「いやほんと! でもさー、この子いっつもタイミング怪しいじゃん? たまに口を開いたかと思えば、『鳥が飛んでるー!』とか関係ない話するじゃん? 今回もそれだよ」

「まあ……確かに?」
「それに、あんたたちだって寝ぼけて変なことよく言ってるよ~? ま、あたしも授業中にベッシュ先生のもじゃもじゃ頭を見て、『ひつじがいっぴきぃ……』とか言ったりするけどさぁ」

「あはは! あれは笑った」
「ていうかさ、そろそろ次の授業始まっちゃうって――あたしは走る!」

「おい、そんな焦んなってー! うちらも走ろ!」


…………


――どうして上手くいかないんだろう。

「昨日の、『ばかみたい』って言ったあれだよ」
「……どういう意味って聞かれても、それこそどういう意味か……わかんないよ」

「あぁ~もう! あんたが本気であたし達のことを馬鹿にしたのかって聞いてんの!」

わたしがレディナちゃんたちのことを、ばかに?
そんなこと――してないもん。

「わ、わたしの方がばかなのに、そんなこと思わないよ」
「じゃあ、何であんなこと言った!」
「それは――」

――なんでだろう。わたし、何であんなこと。

「普通に考えて……あたし達がアヴァル君で恋バナしてたのを馬鹿にしてたようにしか……そういう風にしか…………見てもらえないよ」
「わ、わたし――」

そっか、わたし。

「――みんなのこと、『ばかみたい』って、思ったんだ」
「……」

「みんなが、わたしのこと『ばか』って言うのが、初めて分かった」

あはは、おかしい!

「エフティア、どうしてそう思ったの?」
「『ばかみたい』ってこと?」

「そうだよ」
「だって――」

エフティアは笑いながら涙を浮かべながら、笑って言った。

「――だって、アル君はだから」

レディナはエフティアの言葉を聞くと、背を向けた。

「あんたさ、いつの間にか仲良くなってたってわけ?[[ 本当は、自分が一番最初に仲良くなりたかった。]]」

震える問いかけに、エフティアは嬉しそうに答える。

「そうだよ。わたしとアル君、今一緒に住んでるんだ……毎日訓練をする約束もしてるし、今度一緒に料理も作ってくれるって!」
「へぇ……そうなんだ」

「アル君はすごいんだ……みんな、わたしのことを『ばか』って言うけど、アル君は違う。だって、アル君は使だから、わたしのことをちゃんと見てくれる。アル君見てくれる」

エフティアは、レディナの背中に向かって言葉をぶつけた。

「あんたさ、流暢に喋れるじゃん」
「えっ? そうかなぁ」

「……なに得意げになってんの」
「えへへ……うらやましいんだ、わたしのことが」

エフティアは両手を後ろに組んで体を揺らした。
レディナは肩を震わせ、呼吸が荒くなる。拳を強く握りしめ、背中を向けたまま――

「――だからあんたは馬鹿なんだァッ!!」

ほとんど絶叫に近かった。
あまりの剣幕に、エフティアはびくっと硬直した。

「おっ、おおきい声やめてよっ!」

レディナは振り返り、エフティアに構わず声を張り上げる。

「あんたは何にも分かってない!! ぜんぶ中途半端!!」
「うるさいよぉ! 何が中途半端なの! 何言ってるか分かんない!!」
「あっ――」

エフティアは耳を押さえ、その場にうずくまる。
レディナは開きかけた口をいったん閉じ、今度はゆっくりと口を開いた。

「――あんたさ、彼と仲良くなったか知らないけど、昨日の自主訓練の時に、誰とも試合しなかったよね。初めてのことだったから、あたし、びっくりしたよ」
「……」

レディナはさらに声を静める。

「あれってさ、アヴァル君がいるから、あたし達は必要なくなったってこと?」
「……わかんない……でも、なんだか……声を出すのもしんどくなっちゃった」

「声をかけられてもさ、全然笑わないし」
「笑う意味……あるの?」

「……一昨日までは意味があったの?」

エフティアは、アヴァルと深く関わる前のことを振り返る。
口がゆがみ、乾いた笑いがこみ上げてくる。

「へへ……」

エフティアは地面を見つめたまま言った。

「なかったみたい」

感情のこもらない声。

「じゃあ、やっぱり、もうってこと」
「あはは――」

エフティアは立ち上がり、横目でレディナを視界に入れた。

「――そうだね」

冷たい風が吹き、レディナの髪が揺れる。
目をぎゅっとつぶり、剣を構える姿勢を取った。

「剣に想いを――」

レディナの手に剣が握られる。

「――馳《は》せなさい、エフティア。
この『ばかみたい』な関係をさ、断ち切ろうよ」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

S級冒険者の子どもが進む道

干支猫
ファンタジー
【12/26完結】 とある小さな村、元冒険者の両親の下に生まれた子、ヨハン。 父親譲りの剣の才能に母親譲りの魔法の才能は両親の想定の遥か上をいく。 そうして王都の冒険者学校に入学を決め、出会った仲間と様々な学生生活を送っていった。 その中で魔族の存在にエルフの歴史を知る。そして魔王の復活を聞いた。 魔王とはいったい? ※感想に盛大なネタバレがあるので閲覧の際はご注意ください。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました

髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」 気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。 しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。 「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。 だが……一人きりになったとき、俺は気づく。 唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。 出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。 雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。 これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。 裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか―― 運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。 毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります! 期間限定で10時と17時と21時も投稿予定 ※表紙のイラストはAIによるイメージです

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

氷結の夜明けの果て (R16)

ウルフィー-UG6
ファンタジー
Edge of the Frozen Dawn(エッジ・オブ・ザ・フローズン・ドーン) よくある異世界転生? 使い古されたテンプレート? ――そうかもしれない。 だが、これはダークファンタジーだ。 恐怖とは、姿を見せた瞬間よりも―― まだ見えぬまま、静かに忍び寄るもの。 穏やかな始まり。ほのかな優しさ。 だが、石の下には、眠る獣がいるかもしれない。 その時が来れば、闇は牙を剥く。 あらすじ 失われた魂――影に見つめられながら。 だが、英雄とは……本当に常に“光”のために戦う者なのか? 異国の大地で、記憶のないまま、見知らぬ身体で目を覚ます。 生き延びようとする本能だけが、彼を前へと突き動かす。 ――英雄か、災厄か。それを分けるのは、ただ一つの選択。 冷たく、謎めいた女戦士アリニアと共に、 彼は武器を鍛え、輝く都市を訪れ、古の森を抜け、忘れられた遺跡へと踏み込んでいく。 だが、栄光へと近づく一歩ごとに、 痛みが、迷いが、そして見えない傷が刻まれていく。 光の道を歩んでいるかのように見えて―― その背後で、影は静かに育ち続けていた。 ――これは、力と希望、そして自ら築き上げる運命の物語。 🔹 広大で容赦のない世界が、挑む者を待ち受ける。 🔹 試練と沈黙の中で絆を深めていく、二人の仲間。 🔹 「居場所」を探す旅路の果てに待つものとは――。 ヴェイルは進む。 その選択はやがて、一つの伝説を生み出すだろう。 それが光か、闇か。――決めるのは、あなた自身だ。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

処理中です...