グランディオスの剣姫たち 月華の章 ――復讐のために入学したのに女子と同居とは聞いてないッ!――

杉戸 雪人

文字の大きさ
28 / 45

第28話 月の令嬢

しおりを挟む
「そもそもなんだけど、先生に相談とかはしないの」
「ヴァルっちそれは野暮ってもんにゃ」
「野暮ってわけでもないんだけどね。こういうのはこじれると後々面倒だからさ」

僕には難しい問題だろうか。少なくとも、レディナさんには分かる複雑な学内政治があるのだろう。

「一応確認をしておきたいんだけど、最終的な目標はリゼさんを助けることとして、どうなったら助かったことになるって考える? ソーニャ?」

「リゼっちが事実を知ればそれでいいんじゃにゃいの? そこから先はリゼっちに任せたいにゃ」

「僕は、間違っていることは正すべきだと思う。もし本当にお金のやり取りがあったのだとしたら、リゼさんはお金を返してもらうべきだ。とは言っても、本当にそんなことがあったのか、きちんと確認するべきだよ。レディナさんの思い込みという可能性は捨てきれないのだから」

「そうね……二人とも、もっともな意見だね。思い込みの部分については、あたしも裏を取らなきゃって思ってる。それでなんだけどさ――」

レディナは何かを伝えようとしためらうが、思い直したように首を振る。

「――みんな仲良く終わる方法とかってないかな」

レディナはそう言ってから、「ないない……あはは、何言ってんだか」と自嘲気味に笑った。




(じゃあ、あたしとソーニャが取り巻き二人、アルちゃんがリゼを引き留める役割ね)

レディナの言葉を思い出す。
そうは言われても、一人というのは荷が重い。

(心配しなくても大丈夫。彼女、あんたのこと気になってたみたいだし)

気になるってどういう意味だ。
尋ねようとしたがやめておいた。詳しく聞いて、変に意識してしまうと上手く話せる気がしない。


「図書館か」

最近は色々あって来ていなかったが、ここにはよく来ていた。
グランディオス第五学園は、剣に重きを置いているものの、知識を軽んじているわけではない。それゆえに、蔵書も充実していて、気づけば一日が終わってしまうことも珍しくはなかった。

学園の図書館の三階、少し奥まったところにある小さな空間に彼女はいた。

三日月を折り重ねたような金髪の令嬢が、窓辺に奥ゆかしく座っていた。こうしてみると、威勢が良い時とは印象が全く違う。
何かの本に夢中になっているようで、その顔は真剣そのものだった。どうしよう、何か適当な本でも読んで待とうかな。

これでいいか――




リゼ=ライナザルは戸惑っていた。

これはいったいどうしたことですの?
ミルラさんとイルマさんをお待ちしていたら、どういうわけかアヴァルさんがいらっしゃいましたわ……!

アヴァルは静かにページをめくっては、リゼのことなど意識していない様子だった。

『アトラ式魔術の応用』……何だか難しそうなご本をお読みですわ。さすが特待生といったところでしょうか。

(そうですわ――)

これ見よがしに本の背をアヴァルに向け、本の題名を見せつける。

『剣と知』

既に半分ほど読み終わりましたのよ……内容はその半分も理解していませんけれど。

「読書中にごめんなさい。リゼさんも『剣と知』、読んでるんですね」

きましたわぁ!
どうしましょう、なんてお返事しましょう……そうですわ!

「あら、アヴァルさんも読んでいらして? わたくしは二日前から読んでもう半分まで読みましたのよ!」
「あっ……そうなんですね」

もしかして、二日で半分は少なすぎたのでしょうか……。

「普段はもっと読むのは早いんですのよ……!」
「すごいなぁ、僕はその本、半分読むのに5日かかりましたよ」

わたくしのおばかさん……!

「……気落ちする必要はございませんわ、人にはそう……それぞれペースというものがありましてよ」
「ありがとうございます。自分の中で理解したと言えるようになるまで時間がかかるから、どうしても時間がかかってしまって」
「……この本の内容を理解されているの?」
「説明するとなると、僕の言葉になってしまいますけど、ある程度は」

すごいですわ……。

「で、では、この……『剣を呼ぶという行為は、内在化した神剣《イディアス》の輝きを身体の内側に満たし、元々内側にあった影を外に押し出すということに他ならないのである』という記述は理解されていて……?」
「あぁ、神剣《イディアス》と人《ヒュリアス》の関係を光と影に例えた部分ですね」
「…………ですわ!」

本に出てきていない言葉が登場しましたわ。

「でも、僕はこの意見については懐疑的なんです」
「懐疑的……ですの?」

「はい。疑わしく思ってます。もしも神剣が魂に在るというのなら、僕達はそれを直接感じ取って、少なくともそれに近い剣《エイドス》を呼び起こすと思うんです」
「……? で、ですが、本に書かれていますのよ?」

「神様だって全てを伝えきれてないかもしれません。人ならば、なおさら僕達に伝えきれていないこともあるでしょう。あるいは、実際に本を書いた人と話をしてみれば、案外腑に落ちることもあるかもしれませんね」
「そ……うかもしれませんわ。ですが、アヴァルさんは神様達のお言葉も疑うんですの……?」

「はい。今伝えられている神様の言葉の多くは、僕達が直接聞いた言葉ではないですから。叶うなら、直接話せたらと願うばかりです」

そのようなこと、考えた事もありませんでしたわ。

「リゼさんは、よくここに来るんですか」
「ええ、最近はよく、ミルラさんとイルマさんと一緒にお話したりしていますわ。あ……もちろん図書館ですから、今みたいに静かに話してますわ。本当はそれも良くないのかもしれませんが……うふふ、何だか楽しくって……お許しくださいまし」




アヴァルは目の前の少女の笑顔を直視できず、思わず手元の本に目を落とした。

剣を重ねた時とはまるで違う……高飛車な人だと思っていたけれど、こんなにもしおらしくなるなんて。

(アルちゃん知ってた? リゼちゃん、最近髪飾りが変わったのよ。会話に困ったら褒めてあげてね)

褒めてと言われても――

「リゼさん。その……髪……」
「髪……? 嫌ですわ、何かついていまして……?」
「髪……月みたいにきれいですね」

間違えた。

「……その、髪飾りもきれいです」

これでよし。

「こ、この髪飾りはイルマさんとミルラさんがくださいましたの! それで、その……髪はお母さま譲りですわ!」

リゼは明らかに動揺した様子で目線が定まらない。
どうしよう、何が『これでよし』だ。全然よくない。
必死に何か言いつくろうととしたが、何も浮かばなかった。

情けない僕よりも先に、リゼが先に口を開く。

「あのぉ……えぇと……わたくしと……になってくださいな!」

彼女の中にいったいどんな思考が巡ったのかは分からない。
けれど、ついこの前聞いたのと同じ言葉が、少し違って聞こえた。

「リゼさんにとって、おともだちってどういう存在なんですか――」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

無限に進化を続けて最強に至る

お寿司食べたい
ファンタジー
突然、居眠り運転をしているトラックに轢かれて異世界に転生した春風 宝。そこで女神からもらった特典は「倒したモンスターの力を奪って無限に強くなる」だった。 ※よくある転生ものです。良ければ読んでください。 不定期更新 初作 小説家になろうでも投稿してます。 文章力がないので悪しからず。優しくアドバイスしてください。 改稿したので、しばらくしたら消します

最初から最強ぼっちの俺は英雄になります

総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!

勇者の隣に住んでいただけの村人の話。

カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。 だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。 その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。 だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…? 才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

処理中です...