22 / 149
22
しおりを挟む
自分の頭が古いだけなのかもしれない、と思いながら良を見返すと、やはりその目は真っ直ぐに裕司を見ていて、何を疑う気も起きなかった。
「……他人のことに首突っ込んできて、ヤなこと言うやつだっているんだぞ?」
老婆心だと知りつつ言うと、良は裕司の袖をつかんで言った。
「それ、あんたは何も悪くないじゃん」
裕司は瞬いて良を見る。そこで自分を主語にするのか、と思った。
そんなに惚れてくれてもこれ以上どうやって愛せばいいのかわからない、と思って、何も言えずにいると、良は怪訝な顔をして首を傾けた。
「……俺おかしなこと言った?」
いや、と小さく呟いて、裕司は目線を外しながら良の頭をぽんぽんと叩く。黒い髪が熱を吸って熱いのがやけに愛しくて、そのまま抱き寄せたいのをこらえた。
人の目を気にする恋愛しかしたことがなかったし、それに慣れたつもりだったけれど、良を見ていると人目をはばかろうとする自分にもそうさせる世間にも、やるせない気持ちが湧くのを無視できなかった。
自分は隠すことも誤魔化すことも息をするようにできるけれど、良には同じことをさせたくないと思う自分が確かにあって、ずいぶんなわがままだと自分で思う。良が裕司を選んだのは良の意志だし、彼がそのことをどのように捉えて世間と折り合いをつけていくのかは、なおさら裕司が注文をつけることではなかった。
それを頭ではわかっているのに、どうしても彼に後ろ暗いものを背負わせている気がしてならなくて、その根深さに裕司は嘆息する。
「……裕司さん?」
窺うような、心配するような声を掛けられて、裕司は苦笑して良を見る。いつの間にか駅がもう目の前だった。
「……すまん、つまらんこと考えてた」
「……」
「そんな顔するなよ。年寄りは心配事が多いんだよ」
「……今度はオッサンどころかジイサンなわけ?」
「お前なあ」
だって、と言って良は口をつぐむ。いらぬ心配をさせている気がしてその言葉の続きを待つと、小さな声が居心地悪そうに呟いた。
「……俺が世間知らずであんたのこと困らせてるんじゃない?」
気まずそうにそんなことを言う良に、裕司はいくらか驚き、そして目を細めた。
「そんなわけあるかよ」
笑って良の肩を押して駅の屋根の下に入ると、西日の赤みを失った黒い目が答を待つようにじっと裕司を見つめてきた。
「……外であんまり可愛い顔すんな。抱き締めたくなるだろが」
冗談めかして言うと、それが気に入らなかったらしい良は不満げな声を出した。
「それはあんたの目のせいでしょ」
「目は悪くねえはずなんだがなあ」
「もう、そういう話してたんじゃないじゃん」
正論だ、と思って裕司は苦笑する。良の真摯さを冗談で隠してしまおうとしたのは裕司のずるさだった。
「悪い、ほんとにつまんねえこと考えてたんだ」
「……別にいいけど……」
良は呟きながら財布からICカードを出す。その財布は先月新調したものだった。良がもともと使っていた財布は傷んで合皮が破れかけていて、遠慮する彼に決して高価ではないそれを買ってやった。
遠慮はするけれど、与えたものはちゃんと使ってくれたし、彼の身嗜みが整っていくのを見るのは嬉しかった。けれど同時に、彼が自分の金でそうしたいと思う気持ちもよくわかった。
良の言葉や態度の端々には、裕司に守り育てられる者ではなくパートナーでありたいという意志が感じられたし、それは裕司にとってもとても望ましいことだった。ただ裕司は、必ずしもそれが経済的自立でなくてもよいのに、と思う。何故なら彼はまだ18なのだ。
──でも、お前にとってはそうじゃないよな。
良の早熟にならざるを得なかった精神は、裕司に何もかも頼ることをよしとしない。それは頼もしくも寂しくもあって、その一方でだからこそ彼を好きになったのだと思う。
子どものまま置いてきぼりになった心を抱きながら、それでも大人になろうとしている良は、裕司の目には沁みるほど美しかった。
「……何見てんの」
「え?」
「あんたってすっごい俺の顔見るよね」
自覚はしていたが指摘されると気恥ずかしくて、裕司が口ごもると、良はふふと笑って改札を抜けた。
「俺の顔、そんなに好きなわけ?」
おかしそうに言う良の横顔は瑞々しくて、裕司にはそれを言葉にしようがなかった。
しようがなくて、そうだよ、と言うと、良はくすくすと笑い声を漏らす。
「なんだっけ、そういうの、あばたもえくぼって言うんだっけ」
「ええ?」
「だって、俺みたいのが好きなわけじゃなかったのに、今は俺の顔が好きってそういうことじゃないの?」
是とも非とも言い難くて返答に窮していると、良は裕司の腕を引き寄せて、いくらか潜めた声で言った。
「俺も男に興味なかったけど、今はあんたの顔すごく好きだよ」
お前、と言いかけてから、裕司は口元を押さえる。気温のせいではなく顔が熱いのがはっきりとわかって、いたたまれなかった。
「……くそ、お前、外だから俺が反撃できねえのわかってやってるだろ」
低く呟くと、良は目を丸くした。
「俺、思ったこと言っただけだよ。……そんなにびっくりするようなこと言った?」
「……心臓にはよくなかったな」
裕司の言葉に、良は首を捻る。普段聡いくせにどうしてそこはわからないんだ、と思いながら、駅のホームで西日の陰影を浴びる良の姿に、目を奪われずにはいられなかった。
「……他人のことに首突っ込んできて、ヤなこと言うやつだっているんだぞ?」
老婆心だと知りつつ言うと、良は裕司の袖をつかんで言った。
「それ、あんたは何も悪くないじゃん」
裕司は瞬いて良を見る。そこで自分を主語にするのか、と思った。
そんなに惚れてくれてもこれ以上どうやって愛せばいいのかわからない、と思って、何も言えずにいると、良は怪訝な顔をして首を傾けた。
「……俺おかしなこと言った?」
いや、と小さく呟いて、裕司は目線を外しながら良の頭をぽんぽんと叩く。黒い髪が熱を吸って熱いのがやけに愛しくて、そのまま抱き寄せたいのをこらえた。
人の目を気にする恋愛しかしたことがなかったし、それに慣れたつもりだったけれど、良を見ていると人目をはばかろうとする自分にもそうさせる世間にも、やるせない気持ちが湧くのを無視できなかった。
自分は隠すことも誤魔化すことも息をするようにできるけれど、良には同じことをさせたくないと思う自分が確かにあって、ずいぶんなわがままだと自分で思う。良が裕司を選んだのは良の意志だし、彼がそのことをどのように捉えて世間と折り合いをつけていくのかは、なおさら裕司が注文をつけることではなかった。
それを頭ではわかっているのに、どうしても彼に後ろ暗いものを背負わせている気がしてならなくて、その根深さに裕司は嘆息する。
「……裕司さん?」
窺うような、心配するような声を掛けられて、裕司は苦笑して良を見る。いつの間にか駅がもう目の前だった。
「……すまん、つまらんこと考えてた」
「……」
「そんな顔するなよ。年寄りは心配事が多いんだよ」
「……今度はオッサンどころかジイサンなわけ?」
「お前なあ」
だって、と言って良は口をつぐむ。いらぬ心配をさせている気がしてその言葉の続きを待つと、小さな声が居心地悪そうに呟いた。
「……俺が世間知らずであんたのこと困らせてるんじゃない?」
気まずそうにそんなことを言う良に、裕司はいくらか驚き、そして目を細めた。
「そんなわけあるかよ」
笑って良の肩を押して駅の屋根の下に入ると、西日の赤みを失った黒い目が答を待つようにじっと裕司を見つめてきた。
「……外であんまり可愛い顔すんな。抱き締めたくなるだろが」
冗談めかして言うと、それが気に入らなかったらしい良は不満げな声を出した。
「それはあんたの目のせいでしょ」
「目は悪くねえはずなんだがなあ」
「もう、そういう話してたんじゃないじゃん」
正論だ、と思って裕司は苦笑する。良の真摯さを冗談で隠してしまおうとしたのは裕司のずるさだった。
「悪い、ほんとにつまんねえこと考えてたんだ」
「……別にいいけど……」
良は呟きながら財布からICカードを出す。その財布は先月新調したものだった。良がもともと使っていた財布は傷んで合皮が破れかけていて、遠慮する彼に決して高価ではないそれを買ってやった。
遠慮はするけれど、与えたものはちゃんと使ってくれたし、彼の身嗜みが整っていくのを見るのは嬉しかった。けれど同時に、彼が自分の金でそうしたいと思う気持ちもよくわかった。
良の言葉や態度の端々には、裕司に守り育てられる者ではなくパートナーでありたいという意志が感じられたし、それは裕司にとってもとても望ましいことだった。ただ裕司は、必ずしもそれが経済的自立でなくてもよいのに、と思う。何故なら彼はまだ18なのだ。
──でも、お前にとってはそうじゃないよな。
良の早熟にならざるを得なかった精神は、裕司に何もかも頼ることをよしとしない。それは頼もしくも寂しくもあって、その一方でだからこそ彼を好きになったのだと思う。
子どものまま置いてきぼりになった心を抱きながら、それでも大人になろうとしている良は、裕司の目には沁みるほど美しかった。
「……何見てんの」
「え?」
「あんたってすっごい俺の顔見るよね」
自覚はしていたが指摘されると気恥ずかしくて、裕司が口ごもると、良はふふと笑って改札を抜けた。
「俺の顔、そんなに好きなわけ?」
おかしそうに言う良の横顔は瑞々しくて、裕司にはそれを言葉にしようがなかった。
しようがなくて、そうだよ、と言うと、良はくすくすと笑い声を漏らす。
「なんだっけ、そういうの、あばたもえくぼって言うんだっけ」
「ええ?」
「だって、俺みたいのが好きなわけじゃなかったのに、今は俺の顔が好きってそういうことじゃないの?」
是とも非とも言い難くて返答に窮していると、良は裕司の腕を引き寄せて、いくらか潜めた声で言った。
「俺も男に興味なかったけど、今はあんたの顔すごく好きだよ」
お前、と言いかけてから、裕司は口元を押さえる。気温のせいではなく顔が熱いのがはっきりとわかって、いたたまれなかった。
「……くそ、お前、外だから俺が反撃できねえのわかってやってるだろ」
低く呟くと、良は目を丸くした。
「俺、思ったこと言っただけだよ。……そんなにびっくりするようなこと言った?」
「……心臓にはよくなかったな」
裕司の言葉に、良は首を捻る。普段聡いくせにどうしてそこはわからないんだ、と思いながら、駅のホームで西日の陰影を浴びる良の姿に、目を奪われずにはいられなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
寂しいを分け与えた
こじらせた処女
BL
いつものように家に帰ったら、母さんが居なかった。最初は何か厄介ごとに巻き込まれたのかと思ったが、部屋が荒れた形跡もないからそうではないらしい。米も、味噌も、指輪も着物も全部が綺麗になくなっていて、代わりに手紙が置いてあった。
昔の恋人が帰ってきた、だからその人の故郷に行く、と。いくらガキの俺でも分かる。俺は捨てられたってことだ。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
2度目の恋 ~忘れられない1度目の恋~
青ムギ
BL
「俺は、生涯お前しか愛さない。」
その言葉を言われたのが社会人2年目の春。
あの時は、確かに俺達には愛が存在していた。
だが、今はー
「仕事が忙しいから先に寝ててくれ。」
「今忙しいんだ。お前に構ってられない。」
冷たく突き放すような言葉ばかりを言って家を空ける日が多くなる。
貴方の視界に、俺は映らないー。
2人の記念日もずっと1人で祝っている。
あの人を想う一方通行の「愛」は苦しく、俺の心を蝕んでいく。
そんなある日、体の不調で病院を受診した際医者から余命宣告を受ける。
あの人の電話はいつも着信拒否。診断結果を伝えようにも伝えられない。
ーもういっそ秘密にしたまま、過ごそうかな。ー
※主人公が悲しい目にあいます。素敵な人に出会わせたいです。
表紙のイラストは、Picrew様の[君の世界メーカー]マサキ様からお借りしました。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?
中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」
そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。
しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は――
ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。
(……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ)
ところが、初めての商談でその評価は一変する。
榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。
(仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな)
ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり――
なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。
そして気づく。
「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」
煙草をくゆらせる仕草。
ネクタイを緩める無防備な姿。
そのたびに、陽翔の理性は削られていく。
「俺、もう待てないんで……」
ついに陽翔は榊を追い詰めるが――
「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」
攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。
じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。
【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】
主任補佐として、ちゃんとせなあかん──
そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。
春のすこし手前、まだ肌寒い季節。
新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。
風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。
何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。
拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。
年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。
これはまだ、恋になる“少し前”の物語。
関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。
(5月14日より連載開始)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる