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精霊達の土地編
33.レシピ
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「皆様!お待たせいたしました。このお菓子には卵、小麦粉、砂糖、バターが使われておりますの。アレルギー無い方、ご自由にお召し上がりください。」
この世界にもアレルギーがあり、食べ物は基本地球と同じ名前で呼ばれている。
まぁ、カカオみたいに見つかってないのもあるけれど。
今回は貴族でも食べやすいように、一口サイズのシュークリームにした。それぞれのテーブルに30個ずつ置いたので食べきりはしないだろう。基本立食では残すみたいだし。
毒見として私とウィール様がパクリ。うん、上々。
ライミリの国王はパクリと、マルクトリアの国王は観察してパクリ。
ってちょっとまて!二人とも毒見通さないの!?あー、ほら後ろの人に怒られてる。でしょうね!
他の人はじっーくり見た後、毒見の生存を確認して食べた。これが正しい反応である。
どうやら全員の口に合った様子。
一番に食べたライミリの国王は側近を置いていく勢いでこちらに向かい、マルクトリアの国王は優雅だがダッシュと見間違う速さでこちらに向かってきた。
会場内を自由に漂っていた下級精霊達が「ダッシュめ―」「なの!」と気の抜ける声を出して止めるが、感知できない=実体がないなので………
「きゃー」と言って散っていった。
……笑ってるからいっか。かわいいし。
二人はもちろん小精霊も見えないので、テーブルに乗せた小精霊は腕で×を作って
(腕が短いので出来ていない)「だめ!」を表しているのも見えない。
………かわいい。
ほっこりする暇もなく、優雅ダッシュをしていたイケオジとイケメンが「土産にもらうことは可能だろうか!」と聞いてきた。
圧! 圧がすごい! そしてイケオジとイケメンが合わさった「イケメンズの圧」が!
「個数を言っていただければ、先に容器に詰めてそのまま持ち帰っていただけますが……。いかんせん、日持ちがしないのです。」
この二人の国はここから遠いので、これで引くとおも「では、レシピを譲っていただくことは可能だろうか。」…………イケメン?引け?
「我が国も是非!」
「…………残念ですがレシピが広まれば、今まで安価に買えていたものが急に高価になってしまう可能性があります。その逆もしかりです。今後のことを考えると、国に売ることはできません。」
砂糖などが安価になるのはいいかもしれないが、平民の栄養源でもある卵は高いと平民が栄養失調で死ぬ。それはダメだ。
「ううむ……異世界の菓子をぜひ広めたいが、そうか。そんな弊害もあるのか。」
生まれてこの方王族だったライミリの国王は、当然だが平民の生活を知らない。それでも何とか平民の支持を得ようと、信頼のおける側近を使い情報を集めているが体験とは違う。その分、こういったことに少し疎い。
一方、マルクトリアの国王は誘拐されたときに平民の家に助けてもらったことから、平民を大事にしている。実体験からも平民の暮らしの辛さを思い知り、こういったことにも理解ができるのだろう。
…………まぁ、普通の王族は平民を切り捨てることが多いから、この二人が特殊なんだろうけど。
他の国もジリジリとこちらに寄り、おこぼれを狙っているようだ。
大方、交渉が成功すれば自分達も同じように続き、失敗してもこの二人を「精霊妃様に向かってなんと図々しい」と詰るつもりなんだろう。どちらに転んでも利が得られる。
……私が一番嫌いなタイプに、そんな良い思いはさせてやらんがな。
「そうだわ!レシピが欲しいのはお二人方だけのようですので、お菓子を振る舞う人の制限をすれば国内外の影響は少ないと思いますの!そうですね……、アクスとアイセンにお願いして誓約をすれば心配もありませんしね。」
アクスは水の精霊、アイセンは氷の精霊。アクスが出した水でアイセンが氷を作れば特殊な氷になる。その氷は真実のみを映すため、その前で誓約をすれば必ず嘘はつけない。後になって嘘をつけば血液が凍り水に浸かるため死ぬという、とっても怖い制約になっている。
「私はよく分からないのですが、レシピを使ったお菓子はどなたに振る舞えればいいのですか?できる限り最小限でお願いしたいのですけど……。」
「理由をお聞きしても?」
「今回のレシピは複雑なので今回は心配ないのですけれど、簡単なレシピはマネできてしまいます。たとえマネされたレシピと分かっても異世界の物が食べれると分かれば、結局レシピは広まり影響が出てしまいます。それを避けるための誓約なので影響が出ない範囲で、でもお二人が納得できる範囲にしたいのです。」
「なるほど、模倣品ですか。理解できました。」
「私は身内である二国の王族の皆様のみ食べられればいいと思うのですが……。それでは範囲が狭いでしょうか。」
「そうですな……。私の方は我が国の王族と、王族主催の行事と茶会で振る舞えればよいかと存じます。」
「我が国も同じでございます。」
「分かりました。一心、書面にまとめたのをくれるかしら?」
「こちらです。」
一心から契約書を受け取り、確認していく。他の国の顔色は無視だ。
「では確認しますね。マルクトリア国とライミリ精霊信仰国に今回振る舞ったお菓子『シュークリーム』のレシピを譲渡する。ただし、マルクトリア国とライミリ精霊信仰国の王族、また、王族主催の行事と茶会でのみ振る舞うことを許可する。対価として、上記の二国が人の子の生活に影響が出ないように努力することとする。…異論はありますか?」
「「ございません。ご配慮に感謝いたします。」」
「ではアクス、アイセン来てくれる?」
「聞いていたぞ、姫。」
「俺達の出番だな。任せろ、姫。」
アクスが出した水を、アイセンが冷やしていく。すぐに凍った水球はキンッと音を立てて、六角形の長細い立体になる。(クリスタルの形かな)
「姫、人の子の王達、誓約を。」
アクスの声を合図に、誓いの言葉を立てる。
「『今代の精霊妃、小鳥美の名のもとに今ここに誓約を結ぶ。私は人の子の王ルイフェストルク=マルクトリアと人の子の王ガストロ=ライミリに「シュークリーム」のレシピを譲ることを誓う。ルイフェストルク=マルクトリアとガストロ=ライミリは対価として、「シュークリーム」のレシピ、模倣のレシピによって人の子の生活に多大な影響が出ることを阻止できるように努力することを誓うか?』」
「『ルイフェストルク=マルクトリアはレシピを受け取り、人の子の生活に多大な影響が出ることを阻止できるように努力することを誓う』」
「『ガストロ=ライミリはレシピを受け取り、人の子の生活に多大な影響が出ることを阻止できるように努力することを誓う』」
「『誓約はなされた。決して破ることなかれ。』……姫、お疲れ様。」
「なんのことかしら?」
ズワリと精霊の力が抜けたことで強い倦怠感と疲労が襲うが、このくらい日常の範囲内だ。顔に出るものは何一つとしてない。
「では、レシピを送らせていただきますわ。各一人ずつ付いて来てくださいませ。」
そのままキッチンに戻り、レシピを渡す。二人の側近は細かな質問をするとそのままキッチンを後にする。
「さてと、後片づけしなきゃな…。」
どことなく一人呟くと、首元にひんやりとしたものを押し当てられる。
「動くと命の保証ができませんよ。大人しくしゅーくりーむとやらのレシピをこちらに渡してもらえますね?」
「お断りしますわ。」
そのままイアの力でキッチンを炎の海にする。
燃える袖に驚き、人質の私を放って火を消そうとしているが意味なんてない。
慌てて辺りを見渡すミセッシャスト国王の側近は、すぐに愕然とした。
「なんだこれは!」
怒りが浮かんだようだが、にっこりと笑う私を見て顔色を変えて助けを呼ぼうと声を荒げる。
「だ!だ…れ……」
名も知らぬ側近は手刀一つで気絶した。
まやかしの炎を消して、ダーネスの力で我が家の地下へと捕らえる。
明かり一つもないこの場所は、ダーネスに頼んで空間をゆがめ、時間が速く進むようになっているので、10分放置すればいいだろう。
「じゃあ~こっの後は~新薬の~実験タイム~♪」
「マスター?精霊妃としての仕事を放り出していいはずないですよね?」
こちらもにっこり笑顔の一心。
……ストレス発散で私がやりたい!
「私がやるもん。」
「ダメです。」
「私が、」
「ダメです。私がしっかりこなして書類にまとめますから、マスターもしっかり行ってください。」
ゲームの浄化魔法で私の服のごみを払い、整えて背中を押す一心。
「まだ媚薬持ちが残ってます。お気をつけて。」
そのまま追い出された私は、会場に戻った。
…………ちぇ。
入り口前までなら頬を片方膨らませたっていいでしょ!
ぶーぶー。私の獲物~!
この世界にもアレルギーがあり、食べ物は基本地球と同じ名前で呼ばれている。
まぁ、カカオみたいに見つかってないのもあるけれど。
今回は貴族でも食べやすいように、一口サイズのシュークリームにした。それぞれのテーブルに30個ずつ置いたので食べきりはしないだろう。基本立食では残すみたいだし。
毒見として私とウィール様がパクリ。うん、上々。
ライミリの国王はパクリと、マルクトリアの国王は観察してパクリ。
ってちょっとまて!二人とも毒見通さないの!?あー、ほら後ろの人に怒られてる。でしょうね!
他の人はじっーくり見た後、毒見の生存を確認して食べた。これが正しい反応である。
どうやら全員の口に合った様子。
一番に食べたライミリの国王は側近を置いていく勢いでこちらに向かい、マルクトリアの国王は優雅だがダッシュと見間違う速さでこちらに向かってきた。
会場内を自由に漂っていた下級精霊達が「ダッシュめ―」「なの!」と気の抜ける声を出して止めるが、感知できない=実体がないなので………
「きゃー」と言って散っていった。
……笑ってるからいっか。かわいいし。
二人はもちろん小精霊も見えないので、テーブルに乗せた小精霊は腕で×を作って
(腕が短いので出来ていない)「だめ!」を表しているのも見えない。
………かわいい。
ほっこりする暇もなく、優雅ダッシュをしていたイケオジとイケメンが「土産にもらうことは可能だろうか!」と聞いてきた。
圧! 圧がすごい! そしてイケオジとイケメンが合わさった「イケメンズの圧」が!
「個数を言っていただければ、先に容器に詰めてそのまま持ち帰っていただけますが……。いかんせん、日持ちがしないのです。」
この二人の国はここから遠いので、これで引くとおも「では、レシピを譲っていただくことは可能だろうか。」…………イケメン?引け?
「我が国も是非!」
「…………残念ですがレシピが広まれば、今まで安価に買えていたものが急に高価になってしまう可能性があります。その逆もしかりです。今後のことを考えると、国に売ることはできません。」
砂糖などが安価になるのはいいかもしれないが、平民の栄養源でもある卵は高いと平民が栄養失調で死ぬ。それはダメだ。
「ううむ……異世界の菓子をぜひ広めたいが、そうか。そんな弊害もあるのか。」
生まれてこの方王族だったライミリの国王は、当然だが平民の生活を知らない。それでも何とか平民の支持を得ようと、信頼のおける側近を使い情報を集めているが体験とは違う。その分、こういったことに少し疎い。
一方、マルクトリアの国王は誘拐されたときに平民の家に助けてもらったことから、平民を大事にしている。実体験からも平民の暮らしの辛さを思い知り、こういったことにも理解ができるのだろう。
…………まぁ、普通の王族は平民を切り捨てることが多いから、この二人が特殊なんだろうけど。
他の国もジリジリとこちらに寄り、おこぼれを狙っているようだ。
大方、交渉が成功すれば自分達も同じように続き、失敗してもこの二人を「精霊妃様に向かってなんと図々しい」と詰るつもりなんだろう。どちらに転んでも利が得られる。
……私が一番嫌いなタイプに、そんな良い思いはさせてやらんがな。
「そうだわ!レシピが欲しいのはお二人方だけのようですので、お菓子を振る舞う人の制限をすれば国内外の影響は少ないと思いますの!そうですね……、アクスとアイセンにお願いして誓約をすれば心配もありませんしね。」
アクスは水の精霊、アイセンは氷の精霊。アクスが出した水でアイセンが氷を作れば特殊な氷になる。その氷は真実のみを映すため、その前で誓約をすれば必ず嘘はつけない。後になって嘘をつけば血液が凍り水に浸かるため死ぬという、とっても怖い制約になっている。
「私はよく分からないのですが、レシピを使ったお菓子はどなたに振る舞えればいいのですか?できる限り最小限でお願いしたいのですけど……。」
「理由をお聞きしても?」
「今回のレシピは複雑なので今回は心配ないのですけれど、簡単なレシピはマネできてしまいます。たとえマネされたレシピと分かっても異世界の物が食べれると分かれば、結局レシピは広まり影響が出てしまいます。それを避けるための誓約なので影響が出ない範囲で、でもお二人が納得できる範囲にしたいのです。」
「なるほど、模倣品ですか。理解できました。」
「私は身内である二国の王族の皆様のみ食べられればいいと思うのですが……。それでは範囲が狭いでしょうか。」
「そうですな……。私の方は我が国の王族と、王族主催の行事と茶会で振る舞えればよいかと存じます。」
「我が国も同じでございます。」
「分かりました。一心、書面にまとめたのをくれるかしら?」
「こちらです。」
一心から契約書を受け取り、確認していく。他の国の顔色は無視だ。
「では確認しますね。マルクトリア国とライミリ精霊信仰国に今回振る舞ったお菓子『シュークリーム』のレシピを譲渡する。ただし、マルクトリア国とライミリ精霊信仰国の王族、また、王族主催の行事と茶会でのみ振る舞うことを許可する。対価として、上記の二国が人の子の生活に影響が出ないように努力することとする。…異論はありますか?」
「「ございません。ご配慮に感謝いたします。」」
「ではアクス、アイセン来てくれる?」
「聞いていたぞ、姫。」
「俺達の出番だな。任せろ、姫。」
アクスが出した水を、アイセンが冷やしていく。すぐに凍った水球はキンッと音を立てて、六角形の長細い立体になる。(クリスタルの形かな)
「姫、人の子の王達、誓約を。」
アクスの声を合図に、誓いの言葉を立てる。
「『今代の精霊妃、小鳥美の名のもとに今ここに誓約を結ぶ。私は人の子の王ルイフェストルク=マルクトリアと人の子の王ガストロ=ライミリに「シュークリーム」のレシピを譲ることを誓う。ルイフェストルク=マルクトリアとガストロ=ライミリは対価として、「シュークリーム」のレシピ、模倣のレシピによって人の子の生活に多大な影響が出ることを阻止できるように努力することを誓うか?』」
「『ルイフェストルク=マルクトリアはレシピを受け取り、人の子の生活に多大な影響が出ることを阻止できるように努力することを誓う』」
「『ガストロ=ライミリはレシピを受け取り、人の子の生活に多大な影響が出ることを阻止できるように努力することを誓う』」
「『誓約はなされた。決して破ることなかれ。』……姫、お疲れ様。」
「なんのことかしら?」
ズワリと精霊の力が抜けたことで強い倦怠感と疲労が襲うが、このくらい日常の範囲内だ。顔に出るものは何一つとしてない。
「では、レシピを送らせていただきますわ。各一人ずつ付いて来てくださいませ。」
そのままキッチンに戻り、レシピを渡す。二人の側近は細かな質問をするとそのままキッチンを後にする。
「さてと、後片づけしなきゃな…。」
どことなく一人呟くと、首元にひんやりとしたものを押し当てられる。
「動くと命の保証ができませんよ。大人しくしゅーくりーむとやらのレシピをこちらに渡してもらえますね?」
「お断りしますわ。」
そのままイアの力でキッチンを炎の海にする。
燃える袖に驚き、人質の私を放って火を消そうとしているが意味なんてない。
慌てて辺りを見渡すミセッシャスト国王の側近は、すぐに愕然とした。
「なんだこれは!」
怒りが浮かんだようだが、にっこりと笑う私を見て顔色を変えて助けを呼ぼうと声を荒げる。
「だ!だ…れ……」
名も知らぬ側近は手刀一つで気絶した。
まやかしの炎を消して、ダーネスの力で我が家の地下へと捕らえる。
明かり一つもないこの場所は、ダーネスに頼んで空間をゆがめ、時間が速く進むようになっているので、10分放置すればいいだろう。
「じゃあ~こっの後は~新薬の~実験タイム~♪」
「マスター?精霊妃としての仕事を放り出していいはずないですよね?」
こちらもにっこり笑顔の一心。
……ストレス発散で私がやりたい!
「私がやるもん。」
「ダメです。」
「私が、」
「ダメです。私がしっかりこなして書類にまとめますから、マスターもしっかり行ってください。」
ゲームの浄化魔法で私の服のごみを払い、整えて背中を押す一心。
「まだ媚薬持ちが残ってます。お気をつけて。」
そのまま追い出された私は、会場に戻った。
…………ちぇ。
入り口前までなら頬を片方膨らませたっていいでしょ!
ぶーぶー。私の獲物~!
応援ありがとうございます!
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