4 / 18
己も悪いのだ
しおりを挟む昨晩泊まった高級ホテル、私はそのまま連泊し、本日はショップの視察だ。
三ヶ月ぶりのデートも兼ねてジャンも誘ったのだが、「あ~……明日はぁ~~……」と目が泳いだので恐らくまたモニカと何処かに出掛けるのだろう。
腹が立つし証拠を集めたいが、視察は仕事であるためそちらが優先だ。
(そんな感じで仕事を優先してジャンを放ったらかしにしてた私も悪いんだけど)
「じゃあ、また帰るときに寄るわね」
「うん。頑張って!」
アイビーいつも有難う、と言うことはちゃんと言ってくれる男なので手酷く突き放せないのが悔しい。
ジャンが人間のクズであるならば私も容赦しないのに。
彼が憎めない男だから、彼の正しい扱い方も知らぬような女に寝取られたなんて悔しすぎる。
あまりにも悔しいから、私が居なきゃ生きていけない人生にしてやろうじゃないの。
ふん、と勢いよく鼻を鳴らして、視察へと出掛けた私だった。
──そして案の定、奴等を目撃したのである。
視察も終わり、ホテルへの帰り路。
日が沈み、僅かに残る橙の空が幻想的な時間帯。
道路の反対側には大層にも仮面をつけて変装しているが、隠しきれないイケメンオーラ。
そして隣には艷やかな黒髪が美しく、イケメンに相応しい女。
わなわなと拳に力がるが、とりあえず一度深呼吸。
桃色の瞳に似合う桃色のドレスを纏った彼女は、どう観察してもコート男爵家では買えぬ高級ブティックのドレス、そしてこちらも高そうな仮面。
(いやまさか。…………そのまさかだったら本気で許さねェ……)
婚約者が頑張って稼いだお金を他の女に充てるなど許すまじ。
と言うか二人とも単なる変装ではなくドレスアップしているように見えるのだが。
暫く後を付いて証拠を収めていると、なんと二人は宮殿へと入っていくではないか。
一体どういうことだ?
何故二人が宮殿に?
まさか正式に婚約者の座を奪われる?
一度仕事のスイッチを切ってしまうと簡単に思考停止してしまう。
脳内処理が追いつかず宮殿の中へと消えていく二人を眺めていると、その後ろにも続々と似たように仮面をつけている貴族達。
「あ……そうだわ……そういえば今夜は仮面舞踏会だったっけ……」
そりゃあ私とのデートも断るわけだ。
貴族層をターゲットにしていないメリーウェザー領の事業、社交界に顔を出すより王都を視察したほうがよっぽど有意義なのだが、それはあくまでメリーウェザー家の意見である。
しかしいくら目元を隠そうが、その人の雰囲気である程度予想はつくだろうに。
貴族の噂が事業にまで影響しなければいいけれど。
(あぁ……でも、いくらシステムトラブルの対応していたからって、家にも招待状は届いていたのにジャンを放ったらかしにしてしまった私も悪いのよね……)
だからと言って他の女に突っ込んだ事を許す訳はないので、参加者の入場手続きが一通り終わったら私も潜入することにした。
どうせ性欲大魔王の事だから二階の休憩室や庭園の奥なんかで一発でも二発でもやってしまうのだろう。
「まさかこんな事でこれを使うとは……曾御祖父様、誠に申し訳ありません……」
これとは我がメリーウェザー家に伝わる宝──、その昔財政危機に陥った国を先々代が領地事業改革によって救った功績を称え贈られた品だ。
朗らかな天気の象徴である太陽をデザインした、大きなペリドットのネックレス。
これを見せれば宮殿の出入りなんて何のその、メリーウェザー家だけの許可証は、簡単に言えば『通りぬけフープ』である。
「ご令嬢、招待状と仮面を……あ、失礼致しました」
「こんな日にごめんなさいね、用事を済ませたら直ぐに帰るわ」
そうして難なく潜入して、遠くからでもイケメンオーラを隠せぬジャンを発見し証拠集めに勤しんでいたのだが……。
──「誰だ! そこで何をやっている!?」
少し勤しみすぎたようだ。
11
あなたにおすすめの小説
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
ゆるふわな可愛い系男子の旦那様は怒らせてはいけません
下菊みこと
恋愛
年下のゆるふわ可愛い系男子な旦那様と、そんな旦那様に愛されて心を癒した奥様のイチャイチャのお話。
旦那様はちょっとだけ裏表が激しいけど愛情は本物です。
ご都合主義の短いSSで、ちょっとだけざまぁもあるかも?
小説家になろう様でも投稿しています。
王宮医務室にお休みはありません。~休日出勤に疲れていたら、結婚前提のお付き合いを希望していたらしい騎士さまとデートをすることになりました。~
石河 翠
恋愛
王宮の医務室に勤める主人公。彼女は、連続する遅番と休日出勤に疲れはてていた。そんなある日、彼女はひそかに片思いをしていた騎士ウィリアムから夕食に誘われる。
食事に向かう途中、彼女は憧れていたお菓子「マリトッツォ」をウィリアムと美味しく食べるのだった。
そして休日出勤の当日。なぜか、彼女は怒り心頭の男になぐりこまれる。なんと、彼女に仕事を押しつけている先輩は、父親には自分が仕事を押しつけられていると話していたらしい。
しかし、そんな先輩にも実は誰にも相談できない事情があったのだ。ピンチに陥る彼女を救ったのは、やはりウィリアム。ふたりの距離は急速に近づいて……。
何事にも真面目で一生懸命な主人公と、誠実な騎士との恋物語。
扉絵は管澤捻さまに描いていただきました。
小説家になろう及びエブリスタにも投稿しております。
氷のメイドが辞職を伝えたらご主人様が何度も一緒にお出かけするようになりました
まさかの
恋愛
「結婚しようかと思います」
あまり表情に出ない氷のメイドとして噂されるサラサの一言が家族団欒としていた空気をぶち壊した。
ただそれは田舎に戻って結婚相手を探すというだけのことだった。
それに安心した伯爵の奥様が伯爵家の一人息子のオックスが成人するまでの一年間は残ってほしいという頼みを受け、いつものようにオックスのお世話をするサラサ。
するとどうしてかオックスは真面目に勉強を始め、社会勉強と評してサラサと一緒に何度もお出かけをするようになった。
好みの宝石を聞かれたり、ドレスを着せられたり、さらには何度も自分の好きな料理を食べさせてもらったりしながらも、あくまでも社会勉強と言い続けるオックス。
二人の甘酸っぱい日々と夫婦になるまでの物語。
契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件
水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。
「君を愛するつもりはない」
結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。
出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。
愛を期待されないのなら、失望させることもない。
契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。
ただ「役に立ちたい」という一心だった。
――その瞬間。
冷酷騎士の情緒が崩壊した。
「君は、自分の価値を分かっていない」
開始一分で愛さない宣言は撤回。
無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話
下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。
御都合主義のハッピーエンド。
小説家になろう様でも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる