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第十一話 女王の休日
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「よし、二人はパン屋に入った」
「何とか陛下は納得しましたね」
「作戦は継続する。各自は距離を保ちつつ、展開して護衛に当たれ」
「「「「「了解」」」」」
ユリーシアとリックを物陰から見張り、隠密行動をとっている集団がいる。
全員女性であり、普段着ているメイド服ではなく、街の人々が着ているものと同じような私服を身に纏い、獲物を狙う狩人のような目をして、二人から視線を外さない。
怪しさ満点で、傍から見れば恐ろしい事この上ないが、彼女たちは二人の命を狙っているわけではなく、これでも護衛をしているのだ。
ヴァスティナ帝国メイド部隊。女王の身のまわりの世話をし、彼女に忠誠を誓う女性たち。
メイド長であるウルスラをはじめ、彼女たちは闇を抱えている。他人に過去を知られたくない者も多く、元は傭兵や暗殺者だった者もいる。
ウルスラとメシアが彼女たちを集め、仕事を教えて、半ば強制的にメイドにした。彼女たちの多くは、初めこそ不満を持っていたものの、ユリーシアのおかげで、メイドとして生きる事を決めた。
過去の闇に苦しめられていた彼女たちに、ユリーシアの存在は眩しく、そして温かい。
だが、彼女たちは気付いた。同じ闇を抱えるものとして。自分たちの主となった少女が、自分たちと同じように、闇を抱えていた事に・・・・・・。
「陛下に近付こうとする怪しい奴は、片っ端から仕留めていいんですよねメイド長?」
「ちょっと!あんた見境ないんだから、仕留める奴は選びなさいよね」
「あのー、そのー、あんまり物騒な事は・・・・・・」
「ああん、陛下とデートなんて羨ましい」
「・・・・・・・」
個性豊かなメイドたち。
今でこそメイドとして、日々女王のために尽くし、毎日を忙しくとも楽しく生きている彼女たちも、帝国に来た時は心が死んでいた。
メイドたちに生きる意味を与え、心に光を差したのはユリーシアだ。
少女ユリーシアが彼女たちの心を理解できたのは、同じようにユリーシア自身が闇を抱えていたからである。か弱きその身体に、一体どんな闇を抱えているのかは、メイドたちもウルスラも知らない。
彼女は誰にもそれを語ろうとしない。自分の闇を抱えたまま、他者の闇を救おうとしてしまう。
完全に取り払う事ができなくとも、せめて癒す事だけでもできたならと、ユリーシアはメイドとなった彼女たちに、人の優しさと温もりを思い出させた。
以来彼女たちは、自分たちを絶望から救ってくれたユリーシアに、生涯の忠誠を誓った。この命果てる時まで、彼女を守り続ける。そしていつの日か、彼女を闇から、今度は自分たちが救い出すために。
ウルスラはメイドたちの気持ちを知っている。彼女たちがユリーシアの事を、自分以上に心配していた事もだ。ふざけている様に見えるが、彼女たちは真剣に護衛している。
「暗殺者が現れた場合は、全力を持ってこれを排除する。無駄口を叩かず行動に移れ」
メイド長ウルスラの命令で、五人のメイドたちが動く。
今日一日、全力で護衛する彼女たちに狙われたら最後、命はない。
(後方支援はお任せを。参謀長、陛下を頼みます)
「何とか陛下は納得しましたね」
「作戦は継続する。各自は距離を保ちつつ、展開して護衛に当たれ」
「「「「「了解」」」」」
ユリーシアとリックを物陰から見張り、隠密行動をとっている集団がいる。
全員女性であり、普段着ているメイド服ではなく、街の人々が着ているものと同じような私服を身に纏い、獲物を狙う狩人のような目をして、二人から視線を外さない。
怪しさ満点で、傍から見れば恐ろしい事この上ないが、彼女たちは二人の命を狙っているわけではなく、これでも護衛をしているのだ。
ヴァスティナ帝国メイド部隊。女王の身のまわりの世話をし、彼女に忠誠を誓う女性たち。
メイド長であるウルスラをはじめ、彼女たちは闇を抱えている。他人に過去を知られたくない者も多く、元は傭兵や暗殺者だった者もいる。
ウルスラとメシアが彼女たちを集め、仕事を教えて、半ば強制的にメイドにした。彼女たちの多くは、初めこそ不満を持っていたものの、ユリーシアのおかげで、メイドとして生きる事を決めた。
過去の闇に苦しめられていた彼女たちに、ユリーシアの存在は眩しく、そして温かい。
だが、彼女たちは気付いた。同じ闇を抱えるものとして。自分たちの主となった少女が、自分たちと同じように、闇を抱えていた事に・・・・・・。
「陛下に近付こうとする怪しい奴は、片っ端から仕留めていいんですよねメイド長?」
「ちょっと!あんた見境ないんだから、仕留める奴は選びなさいよね」
「あのー、そのー、あんまり物騒な事は・・・・・・」
「ああん、陛下とデートなんて羨ましい」
「・・・・・・・」
個性豊かなメイドたち。
今でこそメイドとして、日々女王のために尽くし、毎日を忙しくとも楽しく生きている彼女たちも、帝国に来た時は心が死んでいた。
メイドたちに生きる意味を与え、心に光を差したのはユリーシアだ。
少女ユリーシアが彼女たちの心を理解できたのは、同じようにユリーシア自身が闇を抱えていたからである。か弱きその身体に、一体どんな闇を抱えているのかは、メイドたちもウルスラも知らない。
彼女は誰にもそれを語ろうとしない。自分の闇を抱えたまま、他者の闇を救おうとしてしまう。
完全に取り払う事ができなくとも、せめて癒す事だけでもできたならと、ユリーシアはメイドとなった彼女たちに、人の優しさと温もりを思い出させた。
以来彼女たちは、自分たちを絶望から救ってくれたユリーシアに、生涯の忠誠を誓った。この命果てる時まで、彼女を守り続ける。そしていつの日か、彼女を闇から、今度は自分たちが救い出すために。
ウルスラはメイドたちの気持ちを知っている。彼女たちがユリーシアの事を、自分以上に心配していた事もだ。ふざけている様に見えるが、彼女たちは真剣に護衛している。
「暗殺者が現れた場合は、全力を持ってこれを排除する。無駄口を叩かず行動に移れ」
メイド長ウルスラの命令で、五人のメイドたちが動く。
今日一日、全力で護衛する彼女たちに狙われたら最後、命はない。
(後方支援はお任せを。参謀長、陛下を頼みます)
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