この悪魔は僕を離す気がないらしい。

ダヨ

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序章

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次の日も、またベットに引き寄せられあの安心感のある胸板のホールドから逃げることはできなかった。
だから僕は対策のために、お前は床で寝ろと指示した。
のはずが、あろうことか結局は一緒になる流れに持ってかれてしまった。
そして、次の日も、次の日も、その次の日も。もちろん対抗はした。だが一度捕まってしまえば逃げることはできないし、諦めるほかなかった。
そしてなにより、こいつは腕が治っていることがわかったのにも関わらず、自分でご飯を食べようとはしなかった。

「食べさせてくれないのか?」

無言で飯を差し出した僕にそんなことを聞いてきた。

「腕は治っているはずだ。もう自分で食えるだろ。」

「……まだ痛むし、指先の細かい操作がきかない。」

そんなはずあるわけないだろ、と僕は絶句した。昨晩、確かにこいつは僕の腕をひきそしてその腕で僕を包んだ。腕は十分使えていたし、傷口もそこそこ癒えていた。意味のわからない言い訳を前に絶句していると、言い返してこない僕にこいつは無言で口を開けてきた。アーンしろと言う合図だ。けど、僕は文句を言えなかった、もしかして本当に痛むのかもしれないし、指先の操作ができるかは知らない、だから僕はまた無言でこいつの口にスプーンを突っ込む他なかったのだ。


…そしてこいつは徐々に調子に乗り始めた。

朝に重く煩わしい腕から抜け出そうと起きようとすれば、腕に強く力を込められ抜け出せないところから始まった。僕が痺れを切らし、軽く一蹴するとようやく力は弱まる。
食事の際はまだ無言で口をあけアーン待ちをしていたので僕は、なら食うなといえば、不服そうに食べ始める。そんなことを毎食繰り返す。
こんなに礼儀を欠いた男をなぜ僕は拾ってしまったのだろう。十分に動き回れるようになった時には僕にうざったいほど、ひっついてきた。僕が一歩すすめば一歩進み一歩横にずれれば横にズレる、ただでさえ広くない家だと言うのにさらに狭く感じた。どんな嫌がらせをしたいんだこの男は。

完全に回復したころ、朝からそいつの姿が見えなかったことがあった。ようやく出て行ったかと思えば、数日後また戻ってきたんだ。
僕が出て行くなら一言くらい言えと帰ったばかりのそいつに言った瞬間僕を引き寄せ、正面から覆い被さるように抱きしめてきた。

な、なんなんだ?ほんとに。僕の頭は疑問符で埋め尽くされた。この男が何を考えているかわからないし何をするのか行動の予測が全くつかないんだ。

「明日からまた世話になる」

確かに今、こいつは耳元でそう言った。
ぼくはそんなこと了承していない。なんで勝手に世話させることになってるんだ?怪我は治ったはずだろ、

「怪我は治ったはずだ」
力強い腕から逃れるように胸板を強く押し返しながら言い返す。

「ああ。だが俺はここが気に入った。だから明日からここに住むことにする。」

この男の横暴さに僕は怒りを通り越して呆れ返った。
いいはずがあるわけがない、僕は最初に言ったはずだ出ていけと、しかも素性を知らないような男を置いておけるはずがないし、僕のことを知られてもこまる。

「だめだ、怪我が治ったら出て行くと言うやく、そっうわっ…」

否定を並べる僕を抱きしめながら少しずつ体は移動していき、ついにはベットに押し倒されてしまった。

「リーユ、そんなことを言える立場だと思っているのか?」

な、なんで名前を?僕は名前なんて教えたことがなかったはずだ、二人とも素性について語り合ったこともなければ名前で呼び合ったこともなかった。それなのになんでこいつは、拘束される腕をよそに僕は必死に頭を動かす。


「リーユ。天使のリーユ。天使である貴様がなぜこの地にいるんだ?」


ヒュッと喉元が詰まる音が聞こえた。室温が一気に降下する。

「リーユ、なぜ貴様は悪魔であるこの俺を助けた?助けるふりをして寝首を掻こうとしたのか?」

ありえないほど静かな部屋に尋常でない速さの僕の心臓の音が響く。

「答えてくれリーユ。貴様は何を考えている?」

その時初めて,無表情だと思っていたこいつの顔に嫌なニヤけた笑顔がみえた。




ーーだから嫌だったんだ。
誰かを助けるのも、非日常に接触するのも、安定した生活を壊したくなかった、なんで僕はあの時助けてしまったんだ?
関われば最後ロクなことにはならないとわかっていたはずだ。腕が治った時点で追い出せばよかったのに、天使であるにも関わらず下界、悪魔の地で身を隠す僕は静かに平穏に暮らさなければならなかったのに。

どうして僕は、この悪魔に見つかってしまったんだ。
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