ポンコツ能力は使いよう!?~戦術で最強を凌駕する~

シロクロ

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9 目的と計画

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 「アサギの目的は何ですか」
 
 休憩と気を抜いていた時だった。急に投げ掛けられた質問はアサギの頭を空白にした。
 「…………………」
 深い意味はないが言葉が浮かばなかった。
 「私も気になる」
 宮越もつられて興味を持つ。戦った時の剣術が気になるというのもあるのかもしれない。
 茅世弥と南は黙ってその様子をうかがっていた。
 「目的、ね。大したものはないけど……」
 なんとか誤魔化せないかなぁと思いながら焦らす。しかしそんな安い手にはさすがに乗る訳ではない。
 「構いませんよ?」
 「…………話さなきゃだめ?」
 「「「当たり前」」」
 何の躊躇もない。
 会って間もないが四人はアサギの何も知らずまた知ろうとも思わなかった。自分自身に精一杯で、だ。
 自分たちの目的は話したがアサギのは聞いていない。四人はそう考えた。
 「じゃあいいよ」

 アサギから語られたのは大きく分けて三つの目的だった。
 
 一つ目。第七師団、団員メンバー全員をまた集めること。
 これは本当はあまり言いたくなかったらしく比較的小さな声で伝えた。師団に関することは機密事項が多いため。

 二つ目。妹を見つけること。
 昔に生別れてしまったらしい。とある事件により生きているかわからない。しかし探さずにはいられないということ。
 ガーディアンに居ることはあり得ないが他国や多くの村、街と関われるため見つける幅が広がるからだ。

 三つ目。自分に降りかかった呪いを解くこと。
 これも事件関係らしくアサギの口からは詳細は語られない。言ったのはそれ以降に自身のずっと呪いが降りかかっているらしい。

 この三つだった。
 自分たちとは全く次元が違う目的に圧巻。言葉も出ない。そしてアサギが渋る理由もよくわかった。
 どれも重いのだ。
 過去とか余程辛いことを経験していることを四人は知る。
 「な?対して面白くないだろ?」
 慣れているのか、気にしていないのか、また別の何かか。ケラケラと笑いながら語るアサギを見て何も言えなくなる。
 「さて、こんな下らない話は終わりだ。やることやるぞ」
 
 また基礎練習が続く。各々アサギの気持ちに同情、に似た感情を抱き半端にやってはいけないと緊張感に浸り集中して取り組む事が出来た。
 昼頃までノンストップで続いた。

 
 そして時間は十二時半。次第に混み始めるトレーニングボックス。
 身動きが取れないとか邪魔になるほど多くはないが人一倍が四人、しめて人四倍の目を引き付ける。
 アサギの中ではそろそろ潮時かと思われた。
 そんな時だった。

 「いよう!アサギ。居るなんて珍しい事もあるんだなぁ」

 現れたのは青年の男性。高めの身長にでこに着けたまんまのアイマスクが特徴。
 「……………悠祐ゆうすけ。お前が来たってことは何かあったな?」
 慎重な表情へと切り替わるアサギ。一緒に剣を交え訓練中だったにも関わらず一度手を止めた。宮越を一度止める。
 「ん?この子は?」
 「成り行きチームメイトだよ。気にすんな」
 何となく酷いことを言われた気がした宮越は「えー」と不満そうな声を出すが一旦アサギはそれを放置。
 今はそれどころではないような気がした。
 「オレは国枝 悠祐くにえだ ゆうすけ。アサギとは知り合いさ。こいつはめんどうだろうけど仲良くしてやってくれよ?」
 「え、あ、はい」
 悠祐は自由気ままなやつだ。動きが読めないだけ厄介だ。そんな人物がパーティーに目をつけられるとロクな事がないと切り離す。
 「用がないならもういいか?」
 「いやぁ、ごめん。顔合わせるからね」
 「………何があった?」
 増していく緊張感。あれだけ自分の辛いであろう過去を語ったアサギに陰りを感じた宮越。
 遠目では他三人が心配そうに見つめていた。
「勿論。それもかなり、ね」
 その瞬間視線は宮越へ。
 アサギの目を悟った宮越は何も聞かず、言わずその場を離れていく。

 空気が読めるやつで助かった。
 
 心底感じる。
 二人になった所でアサギが悠祐に聞く前に話始めた。
 「アサギ。だ」
 「内容は?」
 意味深な発言にも動揺も見せず話を進めていく。
 悠祐も先ほどとは雰囲気を変える。
 「会議に呼ばれてる。それとそろそろだぞ」
 「…………わかった」
 どこかピリピリとした空気が流れる。それが伝わったのか四人は怪訝な顔でアサギたちの会話を見つめ続ける。
 
 「悪いがこれから用事があるから適当にやっといてくれ」
 全てを丸投げにし、アサギは会議室へと向かおうとする。
 それを止めたのは茅世弥。
 「ちょっと待って。説明してさっきの話」
 通せんぼう。体を大の字に広げアサギの行く手を塞いだ。
 「お前らは今出来ることをしてくれ。後々教えるから」
 妙に遠回しな口振り。さっきの会話で何かあったのを悟る四人。
 しかし事情も説明出来ないとは納得いかなかった。
 「なら今でも………」
いいじゃないか、と言おうとした時止めたのは意外にも南だった。
 「……茅世弥、アサギ困らせてる」
 服の裾をクイクイと引っ張り気付かせる。
 納得はいかない。しかしアサギを困らせるのはよくないそう考えたのだろう。
 じっと見つめる南の目が茅世弥を諦めさせる。
 「……わかったわ。アサギ君、終わったら本当に話してくれるのね?」
 「ああ、多少時間はかかるが必ず。約束する」
 真っ直ぐ茅世弥の目を見て答える。嘘は一切ないと伝える。
 「アサギ、私たちはこのままここでやってるので」
 「わかった」
 だいたい一時間くらいで戻ることを伝えトレーニングボックスを後にした。

 「良い仲間じゃん」
 トレーニングボックスの外で待っていた悠祐がニヤニヤと話しかける。
 「だからこそ厄介なんだよ」
 ため息をつきながら移動を開始する。


 会議室は三階。対策室とも呼ばれている。
 「さて、他はもう集まっているだろうから直ぐに始まるだろうよ」
 扉の前に立ち、準備はいいかと緊張を狙っているのかそんなことをいう。
 「そいつは早く終わりそうで何よりだ」
 アサギには全くそういうのには動じない。むしろ早くて助かるとかわされてしまった。
 ノリが悪いなぁと悠祐は思いながらドアノブに手をかける。
 
 「遅くなった。申し訳ない」
 反省の見えない挨拶で入る悠祐。そんな場違いな奴を中のほとんどが睨む。
 「……………」
 アサギは無言。
 中には数名の男女が椅子に座り、待機していた。写し出されたモニターだけの光が中を照らし他に光源となるものはない。
 そんな暗がりな部屋、ある一人の女性が声をあげた。
 「遅い。速くして。緊急って連絡入ってたでしょ?」
 悠祐とアサギ二人を睨み付け説教を始めようとする。
 悠祐はまあまあとなだめようとするがアサギは違った。
 「下らん説教を聞かされにきたなら帰るぞ」
 「なっ…………」
 遅いので叱ったら下らないと言われ怒りからか震えだす。
 
 「やれやれ、話が進まないから二人とも入って席に着きたまえ」

 中央に座る一人の男性。歳は三十代後半くらい。本田司令だ。
 このガーディアン本部を引き受け全隊員の指揮、司令をする総司令官ということだ。
 司令のいう通り空いている席に腰をかける。
 「さて、今回の議題は前々から言っていたについてだ」

 侵略防衛対策。これは他国、敵国からの侵略から国を守るための対策だ。多くの他国と戦争状態であるため頻繁にそれが起こる。死者、行方不明者が出ることもあり、それなりの対策が必要になる。

 今回は自国の偵察船が他国(敵国)である船が近隣を徘徊していたことの知らせがあった。一隻ではなく同時に数隻確認出来たのこと。
 敵国の侵略計画がうかがえる。
 モニターにはその証拠写真となるものが数枚映し出されていた。

 「これを皆はどう考える?」
 総司令官といってもあれやこれを勝手に決めつけてはいけない。そのためもあってこうして集まってもらったのだ。
 「少なくともまだ日数はあるだろう」
 一人の男性。気長には待てないが充分に対策できるという。また敵の戦力は未知数なので先に手出しはしないと誰もが納得した。
 「では、港に守備を固めるとしよう」
 総司令官のまとめ。しかし賛成しない者が一人。
 「いや、ダメだ。港に戦力は向けられない」
 真っ向から否定するのはアサギ。全員の視線がアサギへと向けられる。
 ほとんどの人が「こいつ正気か?」という疑いの目。
 「おいおい、見たこともない奴が来たなと思ったら何だ?邪魔しに来たのか?」
 もう一人の男性。いかにもうるさいなぁという表情を見せながらアサギに喧嘩を売る。
 周りもそんな感じで誰も止めには入らない。
 「いやぁ、悪いね。呼んだのは私だ。久しぶりに姿を見せたからね」
 止めはしないがアサギを何となくフォローするのは総司令官の本田。
 「話を戻すが最近を忘れたのか?」
 誰もがそれを思い出す。
 頻繁に起こる事件。
 それは本来港、つまり海岸から船によって敵国は侵入、侵略を開始するが以前から起こっていたのはいきなり街の至るところに敵国のつかいのモンスターたちが現れたことだ。
 まだ原因は掴めていない。
 そしてそのつかいのモンスターは人工的なものでロボットととらえた方が分かりやすい。しかも全く同じのが数えきれないほど目撃、駆除されていることから量産型だととらえることができる。
 
 「それが何だというのだ?全員港に行くわけではあるまい?」
 「その船が囮だった場合はどうする?」
 「そ、それは………」
 黙ってしまう。
 そう、どうにもできなくなってしまう。隊員どころか住人まで被害が及んでしまうかもしれない。原因がわからず、対処できない今戦力を傾けては一気に崩れてしまう。
 「まぁ、逆もしかりだがな。今までが囮で船が本命ってこともある」
 どっちなのか。揺らぐ会議。予想が当たりませんでしたなんて事は決してしてはならない。そのための会議でもあるのだから。
 「け、けどさ。なら何で今まで一気に襲ってこなかったの?今まではちょこっとずつだったよね?」
 アサギと悠祐を説教しようとした女性。一発目から奇襲で使えばいいのでは?と疑問に思うのは無理もない。
 「それはあれだろ。準備とかこっちの様子をうかがってるとか」
 「または既に侵入済みとかな」
 悠祐が答えるのにアサギが付け足す。
 「ちょっと待って。侵入済みってどうゆうこと?」
 「隠れてりゃ良い話だろ。一般人としてな」
 アサギはやれやれとため息をつきながら答える。
 むっとするがまた総司令官に話が進まないと言われるので何も言わない。
 ここまで来ると言いたいのはひとつだ。
 「戦力を分散するしかない。おそらく今まででも見つからない突如出現の原因を探るより隊員の配置を考えた方がいいな」
 アサギの言っていることにほとんどの人はついていけない。しかしそれ意外に方法などない。
 「そうだな。アサギ隊員のいう通りにしようと思う。次は隊員の配置を考えたいが………」
 アサギに視線を送る。
 案を出せと言っているらしい。
 「待ってくれ、」
 止めたのは先ほどからアサギをよく思わない男性、杉原 春輝すぎはら はるきという名前。
 がたいのいい体と鋭い眼孔。見たからに強そうな人物。
 アサギとはあまり関わりはない。
 「どこの誰ともわからん奴に配置を考えさせるのか?」
 多少強かったり功績を上げたりすると名前が乗ったり知られるようになるがここ最近何もしていないのでアサギを知る人は少ない。
 この人も例外ではなく知らないようだ。

 「アサギこいつは強いぞ?」
 
 ヘラヘラと笑いながらアサギの肩にポンポンと手で叩く。
 馬鹿にしてるのかフォローしているのか。それは悠祐にしかわからない。
 「国枝さん。んなこと言ったってこいつからは全く魔力を感じない」
 「まぁ、こいつは魔力を隠すのがうまいからね!」
 どんどんハードルを上げる。
 周りはほとんどアサギを知らないので相当気に入っているととらえる。
 「いいよ悠祐。相手の実力を定められないや奴は自分より弱いかただの空けうつけだ。どっちにしろ相手にすることはない」
 完全に自分より実力がないと言い張るアサギ。それを聞いて黙っているほど杉原は弱腰ではない。
 アサギを知らぬ周りの人も同意見らしい。
 「調子に乗るなよランク外、潰すぞ?」 
 「…………相手にするまでもないなホントに」
 ボソッと、呟いた。
 それは勿論完全に杉原の耳に届く。
 「おい、これ終わったら面貸せや」
 完全スイッチオン。
 「構わんけど、今はこっちに集中してくれよ?」
 そこの冷静さはあるようで余裕むき出しのアサギに組み付く事もなく話が進む。
 「主戦力を半々に、遠距離と中距離をその都市と港の間に配置して両方から挟み撃ちがセオリーかな。敵数にもよるけど」
 この配置には誰も口に出さない。
 後の細かい人員の配置は総司令官とそのオペレーターが連携を取り組んでいく事になる。ここらでアサギたちはごめんやくになる。

 「逃げんなよ」
 席を立ち上がった瞬間に杉原から釘を刺される。
 「はいはい」
 会議室から出るとピッタリと後ろをマークされいつ逃げ出しても良いようにアサギの行動をじっと見張るかのような目で見ていた。
 
 アサギが四人から離れてからものの三十分とたっておらず、ちょっとくらい寄り道しても良いだろと甘い考えをしていた。
 寄り道と言っても杉原と戦うのでどうせ避けられはしないだろうが。
 素直にアサギが個人対戦ルームである方向へ向かう事にふんっと鼻を鳴らす杉原。
 わかってんじゃねーか、と。

 アサギはなぜかふとこの時ランダムで放送されている対戦観戦モニターに目を向けた。特に意味はない。
 
 そこで目にしたモノは、戦う四人。自分のチームであるポンコツたち。
 
 「何してやがる?」
 杉原がアサギの様子に気がつく。しかし答える素振りは見せない。
 
 対戦相手は三人。誰もおそらくは腕が上だろう。
 しかし、何というか、様子がおかしかった。
 圧倒的なのも負けていることも必然で当たり前だが
 いうならばそれは
         〝蹂躙〟
             ともいえる。

 「……………………………………………」
 おかしいのはそれだけではなかった。なぜこの四人がここにいるのか。それもそうだ。
 けどそこではない。
 それはすぐに訪れる。

 対戦が終わりぼろ負けした結果と共に叩きつけられる。
 出てきた四人は絶望的な表情だった。

 それを見たアサギ。仲間の圧倒的な敗北と………………。

 動かぬアサギはずっとその様子を見ていた。
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