食の雑学

床間信生

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2-ハムはこうして日本に伝わった

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 人生万事塞翁が馬と言う言葉が指し示す通り、自分の人生で気が付くと思いがけないことが起きてしまったと言うのはよくある話。

 本日の食の雑学は、みんな大好きロースハム。

 今や日本人であれば、ほとんどの方が一度は口にしたことがあるのではないかと言うような食べ物であると思います。

 子供に好きかと問うと、かなり多くの子供が笑顔を見せるのではないでしょうか。

 それほど自然に、そしてどこにでもある食べ物ですが、今日の私たち日本人の口に合うようになるまでに実はとあるドイツ人が奇妙な形で関わっているのをご存じであろうか?

 その男の名はアウグスト・ローマイヤー。

 今回は、その男の人生を少しだけご紹介したいと思います。

 それでは本日の食の雑学。

 いただきます!

①少年時代

 1892年ドイツのヴェストファーレン・ファールの農家の次男として生まれる。だがしかし、彼の家は貧しい家庭で生活することもままならない環境でした。

 彼が生まれてから2年後、両親は起死回生の一発勝負をかけるべく現在のポーランドの辺りに移住することになります。

 そのまま心機一転今度こそは良い結果をと願いながら両親は働いていき…

 1906年に彼の母ドロテーが過労でこの世を去ってしまいます。

 そしてほどなくして父が蒸発したことを皮切りに5人いた兄弟は全て散り散りになってしまいます。

 その後アウグストは職を転々としながら何とか食いつなぎブレーメンで食肉加工業者の見習いとして働きはじめます。
 
②海軍時代

 1914年、この頃になるとアウグストはドイツの国の内情もあってなのか食肉加工業者をやめ海軍に入隊していた。

 海軍に入隊したアウグストは、紆余曲折の果てに中国の青島(チンタオ)市へ向かう。
 この青島市と言うのは当時、ドイツの租借地でした。
 
 同年、日本とドイツの間で青島の戦いが始まるとアウグストも当然、ドイツ軍として参加。

 結果は日本の勝利でアウグストは捕虜としてとらえられ翌年に久留米市の収容所送りとなってしまいます。

③収容所時代

 久留米市の収容所に送られると、彼はドイツで食肉加工をしていた経験を活かし調理場を担当しながら、日本語の習得に励んだ。

 約5年の収容所生活の果て彼は解放となると、ドイツへの帰国か日本に在留の選択を迫られることになるが、この時に彼は日本に在留と言う選択をし、東京帝国ホテルへの就職を決めた。

④東京での彼

 東京帝国ホテルで彼はホテルが所有していた豚を担当することになる。

 そしてその時に日本では、ほとんど馴染みがなかったハムやソーセージといった加工食品を披露したところ様々な人たちに高い評価を受けて、自信をつけた彼は一発逆転の勝負をかけるため翌年、東京帝国ホテルを退社した。

 ホテルを退社した彼は30前にして大崎に合資会社ローマイヤー・ソーセージを立ち上げる。

 そこで彼は本格的な洋風ハムの製作に取りかかり翌年、豚ロース肉を使ったボイルドハムが生まれた。

 その後、アウグストは最愛の人物と出逢ったり、関東大震災の影響を受けたりと様々な出来事を経験したりすることになりますが…

 それは別なお話になってしまいます。

 たかがハムと言ってしまえばそれまでなのかもしれませんが…

 ですがこの「たかが」と言う言葉。

 私たちが、それだけ自然にハムやソーセージを口にすると言う事実に他ならない気がします。

 そして、それは即ちアウグストの知恵と努力を現代の私たちが好んでいると言う事実に他ならないのではないでしょうか。

 本日の食の雑学はここまでです。

 ごちそうさまでした。
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