異世界でダンジョンと過ごすことになりました

床間信生

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カロリーの新スキル

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「はい、バリスタでございます」

俺の記憶に間違いがなければ、攻城用兵器バリスタというのは、大昔に使われた兵器の一つで、矢や石などを飛ばす固定砲台のような武器だったはずだ。
大きさは人が担げるサイズから、大人数で運んだりするものまで様々あり、大きい物ほど移動は大変だが威力が凄まじくなり、中にはお城を攻め落とすときに使用したものもあるらしい。

彼女の攻城用兵器バリスタの場合、自由自在に左手を動かせることから、重さもそれほどでも無いようなので、威力的にはそれほど大きな武器になるとは考えにくい。
だが、それでもあれくらいなら小型のモンスターを相手にすることくらいはできそうだ。

確かに使い方によって、支援攻撃などであればだが戦力として考えてもいいのかもしれない。

「イダ様。前回のゴブリンどもとの戦い。わたくしは是が非でも参加したかったのですが、自分の能力ではどうしようもないというのは自分でも分かっていました。なのでわたくしは涙ながらに見守るしか手段がありませんでしたが、今回からは違います!わたくしには何せコレがあるのですから!」

彼女の熱弁が凄い…

俺の方としては全く気にしていなかったのだが、どうやら彼女の中では俺とリンだけに戦闘を任せるというのは何やら心苦しいものがあったのだろう。

「えっ…いや、別にそんな…」
「いいえ!イダ様!これは大切な問題でございます!」

俺の言葉を遮るようにして彼女の言葉が来る。
外見的には可愛らしい少女的な見た目なのだが、正直ここまでくると若干暑苦しい…

「あー…、そうなんだ。それなら今後の為に、それがどのくらいの威力があるのか見せてくれると嬉しいのだけど…」

俺のこの言葉の直後、リンが一瞬だけ俺の方を驚いた表情で見た後、二歩三歩と距離をとってきた。
最初は「なんだ?」と思ったのだが、直後カロリーが俺の前で左手を掲げポージングのような物を決めていた。

「はい。かしこまりました。イダ様のお望みとあらば、お見せいたします。このカロリーの新たなスキル、リトルバリスタの性能を!」

なんてことを言っているのだが…

「おいおい、ちょっと待って!」

お前は今この場で、この小屋の中で。
それも俺の目の前で攻撃のデモンストレーションを行うというのか!
危険そのものではないか!
そう思った時にはもう遅かった…

「お熱いうちに召し上がれ」
「…?」

彼女の言葉と共に、左手に備えられている物から黒っぽい液体のようなものが一直線に飛んでいく。

うわっ!
ヤバイ!
と思ったが、こうなっては下手に動くのは危険だ。
とりあえず彼女の能力を見るしかない。

彼女の左手から飛んでいく黒っぽい液体は俺のカップをめがけて一直線に飛んでいった。

あれ?
攻城用兵器バリスタって矢とか石とか飛ばすんじゃないの?
なんで液体なの?
って…あの液体って何?

「完了でございます。イダ様」

俺の疑問をよそに、やりきったという表情のカロリーと目の前に何やら黒い液体が注がれているコーヒーカップ。
このコーヒーカップは、先ほどまでコーヒーが注がれていて、俺は堪能していたのだが、今は彼女がスキルによって、何か分からないが黒い液体を注いだ後だ。

「えっ…完了って…コレ?」
「はい。左様でございます。宜しければ、イダ様。ここは味見をお願いいたします」

味見って…
今、目の前にあるこの黒い液体のことだよな?

「これからは自分も戦いに…」みたいなことをいっていた気がする
だとすると、この液体は危険だと思うのだが…
違うのか?
俺の中で様々な感情が渦巻いていく。

若干、視線をそらすと彼女とリンの二人が何かを期待するような視線。

「ここで飲まないとか無しなんだろうな」と思いながら、彼女の言われるままにコーヒーカップを持ち上げて、中の液体を一口飲んだ。

「あっ…美味しい。って…あれ…?」

思わず出た一言。
いやいや…ちょっと待て!
そういうことではないだろう。
直ぐに俺は我に反ると、その直後。
自分の体に不思議な感覚が宿った。

「お気づきになりましたか?実は私の新スキル目覚めの一杯リトルバリスタにより精製されたコーヒーには、簡単な状態異常効果であれば回復することができます」

俺は彼女の言葉の後、ここでようやく彼女のステータスをメニューにて確認する。

カロリー(--☆2)
種族  家妖精シルキー
レベル 1  
体力  29
魔力  35
力   26
俊敏  26
器用  28
適性  内政D 戦闘G 生産B+
スキル 能力上昇食品バランスアップ
    …プレーン・メープル・チョコレートと三種類があり、どれもとても美味しい。
             目覚めの一杯リトルバリスタ…朝の目覚めの一杯に最適のホットコーヒー。どんなに憂鬱な朝もコレを一杯飲むだけで清々しい朝に早変わり。ですが朝食は別途必要なのでご注意ください。

「えっ…バリスタってそっちの意味?」
「イダ様の元いた世界にはバリスタと呼ばれるコーヒーを淹れる職業の方がいたと思うのですが…」

あー…俺が異世界の人だというのは知っているのね…
って結構ディープな知識の気がするんだけど、誰に教えてもらったんだろう…

「あっ…まー、確かにね…」
「ですよね!」

思いっきり満面の笑みを向けてくるカロリー。
眩しすぎてみていられない。
この笑顔の理由が別な理由であったならば、俺は彼女に惚れていたかもしれないし、聖女だと崇めていた可能性もあるほどの笑顔だ。

でも今回に限っていうと間違いなく、そんな心配はない。

彼女はこの能力でどうやって戦闘要員に立候補するつもりなのか、俺の中では彼女は今後も非戦闘要員に確定する他なかった。
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