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第十七話 理想と現実
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第十七話 理想と現実
「これは厳しいな……」
航は頭を抱えていた。
決して楽だと思っていたわけではない。
わけではないが、歯が立たない。
文字通り、歯が木に食い込んでいかないのだ。
「これは、参った」
近くの林で大量にとれるブナやミズナラ系統の広葉樹の倒木。
形を整えようと、石斧で切ろうとしたが、
現状表面が削れるくらいだ。
「うーん、どうしたものか」
流石に太すぎたのか、
乾燥している太い木は固い。
早々に、その木はいったん放置することにした。
薪にできない以上、水につけて再度挑戦だ。
「二グリンに、セルロース……」
「修正を要求します、二グリンではなくリグニンです」
「失礼しました……リグニンです……」
この二つを制御しなければ……。
力技では、やっぱり難しかった。
出来るところから進めていかないと
何も進まないな。
丸太小屋をイメージして、サウナハウスを先に作りたくなってしまったのがまずかった。
「俺にはまだ早かったという事だね、これは……」
どうしても先程の指摘の余韻が消えないが、
恥ずかしがってもいられない。
と、いう事で、やるべき作業に移る。
ベニー監督にこれ以上指導される前に動かなくては。
監督に指示された、プランターを作成する。
大きめの石を丸く積んで、その中に小さめの石を敷き詰める。
砂がないので、細めの木の枝や笹の柄を敷き
その上に、広葉樹の林から土を取ってきて
野草などを植えておけるようにする。
小さめのを2、3作っておく。
土は昨日ツタで編んだ小さめのざるに笹の葉を敷き、そこに載せて持ってくる。
何度も往復をするのは手間だが、素手よりましだ。
焚き火で炭を作れることも実証できたので、
こちらも、メインとは別の場所にもう一つ
焚き火スペースを用意する。
これだけでも結構な時間を使ってしまう。
午後一でムカゴの採取もしておきたい。
その前に昨日考えた道具も用意したい。
やりたいことは多く、時間は有限。
あと4日も経てば、池の水も
触れるレベルになっている
というベニーの計算が出ているので、
使える水場が近くなる。
それまでは、池の周囲200m程奥に
いったところを水場として使わなければならない。
二つ目の焚き火の場所を決め、プランター3個目に
取りかかりながら、輸送道具を作らなければ
いけないなと、何かいいものがないかと考える。
石は、昨日作ったツタで編んだかごを使って
運んだ。
容量で言えば5Lくらいだが、結構力作で気に入っている。
これだけでもかなり運ぶのが楽になった。
そうこうしている間に3つ目も積み上がり、
さて次は……。
といったところで、声が掛かる。
「早いですが、昼食を摂取してください」
もう、そんな時間になるのか……。
と、昨日の残りのむかごを笹の葉で
包み、焚き火の端で燃え残りと
灰で覆って蒸し焼きにし、
汲んでおいた水に、スライスして
干しておいたしょうがを入れて昼食の準備をする。
今度から、昼食の準備も時間に加えないと
いけないんだな。
このサバイバルの生命線であるナノマシンの
延命措置の為、少しでも非常食は残しておきたい。
昼食の準備を進めながら、少し池の周囲を奥へ
進み、葦を数束刈り取って、乾燥に回す。
あとで、笹も追加だな。
刈り取る事で、歩きやすくもなり、移動も
スムーズになっていく。
「黒曜石は、本当によく切れる」
原始の時代の人間の発想力に感嘆
しつつ、今でも道具として使える
事にありがたみを覚える。
束を抱えて戻る途中で、石を見つけては
ポケットに入れ、ついでに見つけた、野草も
根っこから摘んで戻る。
まだ三日目だが、結構順応している自分に
苦笑いが起きた。
つい数日前までは、都会のど真ん中で仕事をし
電車に揺られて、深夜のスーパーで買い物をし
暖かい風呂に入り、暖かい布団で眠りにつく
生活だったはずなのだが。
必死だったとはいえ、仲間の事も心配せずに
随分冷たい人間だったのだな。
と、この生活を少しずつ楽しみ始めている
事に、軽い自己嫌悪に陥る。
だが、それはそれとして、生きねばならぬ。
昼食が蒸しあがるまで、何を作ろうか。
そんなことを考えながら、戻っていった。
焚き火について、荷物を下ろし、適当な
木を集めて並べる。
しばらく眺めていたが。
「よし、これでいこう」
傍らに置いてあった葦の束を広げ
適当な大きさに並べていく。
「これぐらいかな」
並べた上に今度は垂直になるように
別の束を重ねて並べる。
大きさが決まったら、順次編み込み始める。
夢中になって編み込んでいると。
「蒸し上がりの時間です」
ベニータイマーが鳴った。
「つい、没頭してしまった。
さて、お昼にしようか」
蒸し上がったむかごを口に
放り込み、ほふほふと味わう。
干し生姜汁は、生絞りよりまろやかで
幾分飲みやすい。
一息入れたら、採集して、また拠点の建築だ。
そう考えながら、心地よい空気にしばしの
休息をとるのだった。
後書き
最後までお読みいただきありがとうございます。
航の地味な作業回ですが、お付き合いお願いしたいです。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
では次回もよろしくお願いいたします。
「これは厳しいな……」
航は頭を抱えていた。
決して楽だと思っていたわけではない。
わけではないが、歯が立たない。
文字通り、歯が木に食い込んでいかないのだ。
「これは、参った」
近くの林で大量にとれるブナやミズナラ系統の広葉樹の倒木。
形を整えようと、石斧で切ろうとしたが、
現状表面が削れるくらいだ。
「うーん、どうしたものか」
流石に太すぎたのか、
乾燥している太い木は固い。
早々に、その木はいったん放置することにした。
薪にできない以上、水につけて再度挑戦だ。
「二グリンに、セルロース……」
「修正を要求します、二グリンではなくリグニンです」
「失礼しました……リグニンです……」
この二つを制御しなければ……。
力技では、やっぱり難しかった。
出来るところから進めていかないと
何も進まないな。
丸太小屋をイメージして、サウナハウスを先に作りたくなってしまったのがまずかった。
「俺にはまだ早かったという事だね、これは……」
どうしても先程の指摘の余韻が消えないが、
恥ずかしがってもいられない。
と、いう事で、やるべき作業に移る。
ベニー監督にこれ以上指導される前に動かなくては。
監督に指示された、プランターを作成する。
大きめの石を丸く積んで、その中に小さめの石を敷き詰める。
砂がないので、細めの木の枝や笹の柄を敷き
その上に、広葉樹の林から土を取ってきて
野草などを植えておけるようにする。
小さめのを2、3作っておく。
土は昨日ツタで編んだ小さめのざるに笹の葉を敷き、そこに載せて持ってくる。
何度も往復をするのは手間だが、素手よりましだ。
焚き火で炭を作れることも実証できたので、
こちらも、メインとは別の場所にもう一つ
焚き火スペースを用意する。
これだけでも結構な時間を使ってしまう。
午後一でムカゴの採取もしておきたい。
その前に昨日考えた道具も用意したい。
やりたいことは多く、時間は有限。
あと4日も経てば、池の水も
触れるレベルになっている
というベニーの計算が出ているので、
使える水場が近くなる。
それまでは、池の周囲200m程奥に
いったところを水場として使わなければならない。
二つ目の焚き火の場所を決め、プランター3個目に
取りかかりながら、輸送道具を作らなければ
いけないなと、何かいいものがないかと考える。
石は、昨日作ったツタで編んだかごを使って
運んだ。
容量で言えば5Lくらいだが、結構力作で気に入っている。
これだけでもかなり運ぶのが楽になった。
そうこうしている間に3つ目も積み上がり、
さて次は……。
といったところで、声が掛かる。
「早いですが、昼食を摂取してください」
もう、そんな時間になるのか……。
と、昨日の残りのむかごを笹の葉で
包み、焚き火の端で燃え残りと
灰で覆って蒸し焼きにし、
汲んでおいた水に、スライスして
干しておいたしょうがを入れて昼食の準備をする。
今度から、昼食の準備も時間に加えないと
いけないんだな。
このサバイバルの生命線であるナノマシンの
延命措置の為、少しでも非常食は残しておきたい。
昼食の準備を進めながら、少し池の周囲を奥へ
進み、葦を数束刈り取って、乾燥に回す。
あとで、笹も追加だな。
刈り取る事で、歩きやすくもなり、移動も
スムーズになっていく。
「黒曜石は、本当によく切れる」
原始の時代の人間の発想力に感嘆
しつつ、今でも道具として使える
事にありがたみを覚える。
束を抱えて戻る途中で、石を見つけては
ポケットに入れ、ついでに見つけた、野草も
根っこから摘んで戻る。
まだ三日目だが、結構順応している自分に
苦笑いが起きた。
つい数日前までは、都会のど真ん中で仕事をし
電車に揺られて、深夜のスーパーで買い物をし
暖かい風呂に入り、暖かい布団で眠りにつく
生活だったはずなのだが。
必死だったとはいえ、仲間の事も心配せずに
随分冷たい人間だったのだな。
と、この生活を少しずつ楽しみ始めている
事に、軽い自己嫌悪に陥る。
だが、それはそれとして、生きねばならぬ。
昼食が蒸しあがるまで、何を作ろうか。
そんなことを考えながら、戻っていった。
焚き火について、荷物を下ろし、適当な
木を集めて並べる。
しばらく眺めていたが。
「よし、これでいこう」
傍らに置いてあった葦の束を広げ
適当な大きさに並べていく。
「これぐらいかな」
並べた上に今度は垂直になるように
別の束を重ねて並べる。
大きさが決まったら、順次編み込み始める。
夢中になって編み込んでいると。
「蒸し上がりの時間です」
ベニータイマーが鳴った。
「つい、没頭してしまった。
さて、お昼にしようか」
蒸し上がったむかごを口に
放り込み、ほふほふと味わう。
干し生姜汁は、生絞りよりまろやかで
幾分飲みやすい。
一息入れたら、採集して、また拠点の建築だ。
そう考えながら、心地よい空気にしばしの
休息をとるのだった。
後書き
最後までお読みいただきありがとうございます。
航の地味な作業回ですが、お付き合いお願いしたいです。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
では次回もよろしくお願いいたします。
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