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37.怪我

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出発して1か月が経った頃、シャノンが大けがを負った
「大丈夫かシャノン」
俺はシャノンを背負って山道を進んでいた
ルークは先に進み休める場所を探している

「…ごめんねシア」
「謝る必要はないよ。けがは誰にでもあり得ることだ」
「でも…」
手元にあるのは体力回復薬と魔力回復薬
体力回復薬は怪我を治す効能も持ってるから普通なら治るはずだった
でも、効かなかった
理由は分からない
俺の回復魔法で血は止まったものの傷口を塞ぐまでは出来なかった
結果、その傷口が今は膿み始めていた
怪我をしたのは1週間前
近隣に町はない
正直どうすればいいかわからない

「シア、こっちだ」
ルークが少し上がった場所から呼んでいた

「いい場所だな」
かなり広めの洞窟だ
これならテントを3つ出してもまだゆとりがある
シャノンがこの状態だけにこれはかなりありがたい
すでに預かっているシャノンのテントを先にだし寝かせると自分のテントも出す

「シャノンは?」
すでに自分のテントを出して野営の準備を始めていたルークは訪ねて来る

「かろうじて膿が広がるのを防いでる状態
俺の回復魔法もそれなりにレベルは上げてあるけど追いつかない

「…普通の傷じゃないってことだよな?だからあんな場所に行くのはよそうって言ったのに!」
ルークは声を荒げた
シャノンがケガをする原因になった場所は本来なら進んだりしないルートの先にある

『呪われた地』

そんな看板が立っていた
その先にシャノンは興味本位で足を踏み入れたのだ
慌てて追いかけた俺達の目の前でシャノンは黒い靄に包まれた魔物に襲われた

「だいたいシャノンは自由に動きすぎなんだよ!旅は3人でしてるんだぞ?一人勝手に進んでこんな怪我追って本当馬鹿!」
「やめろルーク」
「シアだって腹が立つだろう?俺達は止めてたのに…!」
「ルーク」
俺は真っすぐルークを見る

「俺だって悔しいよ。あの時ちゃんと止めれてたらシャノンはあんな傷を負うこともなかったはずだもんな」
「…」
「シャノンの怪我のせいで先に進みたいのにこの状態じゃ中々進めないのは事実だ。でもなルーク、自分の悔しさをシャノンへの怒りに変えるのはやめろ」
「…っ…」
「どんな理由であれケガするなんてことは俺達にもあり得ることだ。同じように何にもできない苛立ちを抱えることもあるだろう。でもそれは相手を責めていい理由にはならない」
「そんなこと分かってるよ!」
ルークは叫ぶように言うと洞窟を飛び出して行った

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