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86.旺盛な食欲

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“コンコン”
ノックの音で意識が浮上する
「どーぞ」
俺はそう言って念動力でカギを開けながら体を起こす

「おはよう」
そう言いながら入ってきたのはレティだ

「おはよ。ちゃんと眠れたか?」
「いつもちゃんと寝れてるよ。シアって本当に心配性」
レティはクスクス笑いながら言うけど家に来る直前の事を考えるとやっぱり心配にはなる
まぁでもこの軽口が出て来るなら問題なさそうだ

「ねぇシア」
「ん?」
「私本当にこのままここにいてもいいのかな…」
「何で?」
「すごく良くしてもらって申し訳なくて…」
1人で頑張ってきた時間を思えばそうなるのも仕方ないんだろうか

「いいんだよ。でももし居づらいなら正直に言ってくれ。何か考えるから」
そういうと無言のまま頷いた

「どっちにしても当分はここでのんびりすればいい。今日は飯食ったら町を案内するよ」
「町?」
「ああ。ギルドのあったとこ。ここは町の外になる」
大抵の人は守ってもらえる場所である町の中に住むけど俺達はそう言う場所を好まない
バルドさんは店が、マリクたちは守りたいものがあるから町の中に住んでるだけのことだ

「おはよ」
「おはようございます」
「おはよう2人共。ご飯今から作るからちょっと待ってね」
母さんが準備しながらそう言った

「シエラは?」
「レイと一緒にまだ寝てるわよ」
そういや今日は休みの日か
休みの日はなんだかんだと皆起きるのが遅くなる
もっとも、予定が入ってれば別だけど

「今日の朝飯何?」
「ホットドッグとハンバーガー」
「ケインの希望か」
「良く分かってるじゃない」
そう言われて苦笑する

「シア、ハンバーガーって?」
ホットドッグは屋台でも売ってたりするから知ってるらしい
でもハンバーガーは売ってないからな

「丁度いい。レティも一緒に作るか。母さん、ハンバーガーは俺達で作るよ」
「あら助かるわ。材料はこれね」
母さんはそう言ってテーブルの上に材料をどっさり取り出した
レティにミンチを作ってもらってる間に俺は玉ねぎをみじん切りにする

「母さん、ミンチにするのもみじん切りにするのも何か道具作った方が良くないか?」
「そうね…今度作って見ましょうか。道具があれば小さい子も手伝えるし」
「道具を作る?」
「ああ。母さんはちょっと特殊なスキルを持ってるんだ。おかげでこの家は快適」
「あなたがこの家を出る時も作ってあげるわよ」
「ああ。その時は頼むよ…っていっても当分先な気もするけど」
「そうかしら?」
母さんは意味ありげにレティを見る
いや、付き合ってないぞ?
心の中で釘をさしておく

「これ楽しい」
レティはハンバーグの形を作った後の空気抜きが気に入ったらしい
パン、パンと小気味いい音が一定のリズムで繰り返されていた

「あとはこれを焼いて、野菜と一緒にパンに挟めば完成」
フライパンに油を引いて6つ程並べて蒸し焼きにしていく
レティにも魔道具のコンロとフライパン一式を渡すと真似をしながら焼き始めた

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