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23.裁判

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「お言葉ですが、私はナイジェル様に育てていただいた覚えはございません」
「な…」
「物心つくまでは乳母を脅して無償で面倒を見させ、私が物心ついてからは家の中の事は全て私がするよう命じられていましたので。それに…そのころからブラックストーン家の「黙れ…それ以上は…」政務的なことも私がしておりましたのにどう育てていただいたとおっしゃるのです?」
ナイジェルの遮る声を無視してアリシャナは続けた

「ナイジェル様が私に与えてくださったのは暴力と暴言のみでございます。その証拠に、ブラックストーン家は私が去って2か月も経っていないのに傾きかけているではないですか」
クスリと笑ってアリシャナは帝王に再び礼を告げ座った

「さて、これで越権行為と偽証、さらには育児に関する法にも違反していたことが証明されたが?」
「証明などと…全てその小娘のたわごとではないですか」
「なるほど。では先月末時点のブラックストーン家の資産状況を述べてみよ」
「は…?」
「長年携わっていれば大まかな内容くらい当然言えるだろう?毎月そなたの名で報告書が上がってきているのだからな」
「それは…!」
ナイジェルはアタフタして顔色がどんどん悪くなっていく

「答えられないということはそなたが自ら証明したということだ。さて、これだけの罪が重なると刑もたいそうなものになるな」
書類をパラパラとめくりながら帝王は思案しているようだった

「帝王」
「何だ?バックス」
「ここまで国を侮った者です。国の為にその身を生涯ささげていただいてはどうでしょう?」
「なるほど。確かに鞭打ちや処刑をしたところで誰の為にもならぬか…牢に閉じ込めておくにも税金が無駄になる。では魔力を封じたうえで魔術師団及び騎士団の実験体として提供すると言うのでどうだ?我の情けだ、ディフェントヒールのみ施してやる」
「お待ちください…それでは私は…」
ナイジェルが崩れ落ちる

ディフェントヒールは帝王を継いだ者のみが使える魔術である
どんな痛みや苦しみを感じても死に至る前にすべての治癒が施されるというものだ
一度施されると生涯その術は継続されるため、繰り返し痛めつけることで効力を発揮する拷問に使われることが多いものでもある
つまりナイジェルは寿命を迎えるまで永遠に人体実験のモルモットとなるということである

「新しい技の練習台にもってこいですな。技の習得のためとはいえ怪我人を減らせるのは有り難い」
そう言ったのは騎士団長だ
その言葉にローカン達も頷いている
「ナイジェル、これまで国を食い物にしてきた報いをその身を持って受けよ。因果応報、この言葉は確かブラックストーン家に代々受け継がれる思想だったか?」

「…ならば…ならばアリシャナにも報いを!シリルの命を奪って生まれた報いを!」
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