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23.裁判

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母親の命を奪って生まれた子供に報いを
その発言にその場にいた者がざわついた

「子に報いを等…何を言ってるんだ?」
「気でも狂ったか?」
魔力の高い子どもを産めば母体の危険は高まる
それはこの国では知れ渡っていること
そのことに報いを受けさせていれば子など産む親はいなくなる
そもそも生まれてくる子に罪はないのだから

「帝王、発言させていただいても?」
「ああ、かまわん」
「ありがとうございます」
アリシャナはそう言って立ち上がる

「ナイジェル様、私が母の命を奪ったのではありません」
「なに?」
「母は胎内にいる私を何度も殺そうとしました。その挙句自ら命を絶ったのです」
「何を出鱈目な…」
「ここに母の日記がございます」
アリシャナは取り出した手帳を帝王に渡した
「角を折っているいるページがその証拠となるページです」
「角を…かなりの数あるようだが…」
帝王はそう言いながらパラパラと捲りながら中に目を通す

『胎児の命を刈り取ることが出来るお茶をようやく手に入れることが出来た。
早速飲んだのに何も起こらない。なぜ?』

『この1週間お茶を飲み続けているのに胎児は元気だと言われた。
ナイジェルの血を引く子供など生みたくもないのにこのままでは…
早く確実に殺す方法を見つけなければ』

『入手した毒を含む薬草を飲んでもこの子は死なない。
一体どうすればいいのか』

ページを捲りながら帝王が読み上げるたび周りに動揺が広がっていく
「リーシャ…」
エイドリアンはアリシャナを座らせ肩を抱き寄せる

帝王は何か所か読んだのち最初のページに目を止めた
『恐れていたことが起こった。
舞踏会の帰りにナイジェルに捕らえられ襲われた証拠がこの身に宿った。
両親がナイジェルに責任を取るよう詰め寄ったけどナイジェルはそれを喜んでいた。
きっと計画通りだったんだろう。
憎くて仕方がない。
あんな男の血を引く子供など生みたくもない。
何としても生まれる前に殺さなければ…
もしそれが叶わなかったときには私は死を選ぼう。
ナイジェルとその血を引く子供に捉われた人生などおぞましすぎるもの』

「すべてはナイジェルに起因するようだな?そなたの言う愛する妻は死を選ぶほどそなたを心底憎んでいたらしい。アリシャナの咎は皆無だ。これまで苦しんだ分、同じように理不尽な仕打ちによる苦しみを知るエイドリアン、そなたが癒してやれ」
「はい。必ず」
エイドリアンはしっかりと頷いていた
この場であえてそう言ったのは帝王なりの謝罪を込めての事だと理解したからだ
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