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30.帝王の謝罪

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「今日は皆に伝えたいことがある」
その言葉に一斉に会場が静まり返る
「エイドリアン・スターリングの呪いの噂についてだ」
「!」
エイドリアンの体がこわばるのが分かる
静まり返った会場もどこか緊迫している

「我はエイドリアンに、そしてスターリング家に謝罪せねばならん」
謝罪という言葉に会場がざわつく

「帝王が謝罪?」
「どういうことだ?そんなことがあり得るのか?」
「そんなことされたら…」
「そうよ、私達はどうなるのよ…」
口々に零される言葉の端々に、これまで自分たちが取ってきた態度がまずかったのではないかという不安が見える

「エイドリアンが纏っていた入れ墨は呪いではなく、魔術国に伝わる祝福であると我は知っていた。知った上で国の平和の為に呪いの噂を放置した」
「呪いじゃなく祝福?」
「どういうこと?」
所々からそんな声が聞こえる

「エイドリアンの入れ墨は魔力を封印したもの。そしてその封印を解けるのはアリシャナが成人してから…それまでの間、我はエイドリアンの封印された状態の性質を利用した」
「…帝王は一体…」
エイドリアンが呟く

「エイドリアンが呪い持ちと忌み嫌われ強い魔力で恐れられ、そのことに苦しめばその分この国は平和を保つことが出来た。我はその平和の為ならエイドリアンの犠牲は仕方ないと結論付けていたのだ」
帝王は淡々と説明する
「だが、それは間違いだったと今はそう思う。エイドリアン始めスターリング家の者にはまことに申し訳なかった」
そう言って頭を下げる帝王に皆の視線がエイドリアンに向けられた

「もうやめましょう帝王」
エイドリアンの言葉に帝王は頭をあげた
「確かに俺は苦しみました。家族も悔しい思いをしたでしょう。でもそのおかげで信用できる人間を見極めることが出来ました。それに何よりアリシャナを手に入れた。あなたの命のおかげで未来永劫、俺からアリシャナを取り上げられることもない」
「エイドリアン…そなた…」
「俺の為に祝福の解放を拒む、帝王のしてきたことを許せないと怒ってくれる、アリシャナは俺のかけがえのない存在です。正直それ以外はどうでもいいとさえ今は思える。だからもう全て忘れましょう」
エイドリアンはそう言って笑う

「…すまない…感謝する」
帝王の言葉に会場が静まり返った

「良かったですね父上でも、ここからが本題ですよ?」
その静寂を破ったのは意味ありげにそう言うマックスだった

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