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キオクノカケラ
第5話
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「李砂行くぞ~」
「ちょっと待って~」
一人になった家に拓弥が迎えに来た
李砂はバタバタと慌てて家を出る
「おはよう拓弥」
今までとは違い笑顔の溢れる明るい声が響く
出て来た李砂は昨日までのまじめな制服の着こなしではなくスカートの丈は短くなりシャツのボタンも2つほどはずしたラフな着こなしに変わっていた
軽くヘアメイクもしていて垢抜けたようにさえ見えた
「・・・おはよ」
「どうかしたの?」
李砂は首をかしげる
「なんでもないよ。行くぞ」
「うん」
李砂は拓弥の腕に自分の腕を絡めた
記憶を無くすまで当たり前のように李砂はこうして腕を絡めていた
その懐かしい感覚に拓弥は一人喜んでいた
「ねぇ、記憶失ってた間の記憶がすごいあいまいなんだけど・・・」
「?」
「私どんな子だったのかな?」
李砂はためらいながらたずねた
「何で?」
「ん~制服とか部屋の中とかイメージが・・・」
「暗いやつだったな」
「・・・やっぱり?」
「自信がなくておどおどして・・・でもずっと俺だけを真っ直ぐ見てた」
「・・・」
李砂は黙り込む
「あれもお前の中の一面なんだろうな?」
「拓弥・・・」
「でも俺の横で当たり前のように笑ってくれる李砂が戻ってきただけで十分だよ」
拓弥はそう言って笑った
「昨日電話で亜紀と話してたんだけどね」
「ん?」
「モデルしてるって?」
「あ~」
拓弥は気まずそうに視線をそらす
「かなり迷ったんだけどな、モデルすりゃお前が何か思い出すかと思ってさ」
「・・・そっか、モデルの話よくしてたもんね・・・」
「あぁ。読者モデルとか載せたがってたろ?まぁ今してんのはそういうのとはちょと違うけどさ」
「あ、聞いた。スポーツブランドでしょ?見てみたいなぁ・・・」
「マネージャーに言ってみるよ」
「本当に?」
「あぁ」
「やった。拓弥大好き」
そう言って見せた笑顔は本当に幸せそうだった
「・・・こりゃ学校のやつたまげるな」
「え?」
「何でもない」
「え~気になる」
「気にすんな」
二人で笑いながら話していると拓弥は突然頭をはたかれた
「いって・・・?!」
2人が振り向くと俊がいた
「な~にじゃれてんだよ?」
「何だお前かよ」
「おはよ~俊」
「おう・・・ってかお前化けたなぁ?」
「?」
李砂が不思議そうに拓弥を見た
「・・・見た目」
「え?」
「別人みたいだな」
俊が笑いながら言う
「・・・そんなに違う?」
「あぁ、典型的な地味~な優等生だったからな。俺としては今のほうが声かけやすくていい」
「何だそりゃ?」
拓弥が苦笑する
「おはよ~」
「あ、亜紀おはよ」
同じく後ろからかけられた声に3人が振り向く
「昔の李砂だ」
「え~?」
「やっぱその方が李砂っぽい」
「亜紀までそんな事言うなんて・・・私そんな別人だった?」
「もう別人の域超えてるって。記憶なくすと性格まで変わるって初めて知ったわ」
亜紀は笑いながら言う
「これは周りの反応楽しみだな」
「言えてる。文句言ってた皆絶句するよ?本当の李砂はこんなにいけてるんだから」
「亜紀?」
李砂が困惑する
「大丈夫。私達がついてるから」
わけの分からないまま亜紀の言葉にうなづくしか出来なかった
実際門をくぐるなり周りが自分たちを見て何かささやいているのは分かる
「おい拓弥!」
「ん~?」
「誰だよその子?聖はどうした?」
誰かがそう言うなり李砂は困惑し3人は笑い出した
「どうもしないって。なぁ李砂」
拓弥は笑いながら言う
「・・・」
「・・・まさかこの子?!」
今度は声をかけてきた方が困惑していた
「あれ~瑞希新しい彼女?めっちゃ綺麗」
「本当だ~。ひょっとして同じモデルさんとか?」
「何だ拓弥聖から乗り換えた?」
「瑞希お前もやっぱり聖じゃ物足りなかったのか?」
声をかけてくる人皆が今の李砂を別人だと思っているようだった
「・・・あの~私聖李砂なんだけど・・・」
「「「「「・・・はい?」」」」」
李砂の言葉にその場に居合わせた皆があらためて李砂を見た
「冗談・・・」
「え~っと?」
李砂は拓弥を見た
「くっくっ・・・やっぱこうなったか」
拓弥は大笑いしていた
「ちょっと拓弥?」
「言ったでしょ李砂『周りの反応楽しみだ』って」
亜紀も笑いながら言う
「それは聞いたけどこんな反応ってあり?」
「まぁ李砂の気持ちも分からんでもないけどな」
俊も笑いながら言う
「私一体どんな人間だったのよ・・・?」
李砂はため息混じりに言う
「・・・ねぇどういうことなの?」
「話が見えねんだけど?」
「あはは。確かにそうだろうなぁ。でもこれが本当の李砂だよ」
「「「「「「え~?」」」」」
再び皆が悲鳴のような声を上げた
「李砂いっそ自己紹介からしたら?」
「・・・わかったわよ~」
亜紀の言葉にそう答え皆を見回した
「私は聖李砂。昨日無くしてた記憶を取り戻したところ。あと半年もないけどあらためてよろしくね?」
李砂は気を取り直して笑って言った
「そういう事だ。一時的に記憶を無くしてただけでこれが本当の李砂なんだよ」
拓弥は勝ち誇ったように言う
「拓弥そんなの自慢にならないから」
李砂は苦笑して言った
「それよりいい加減行かなきゃ遅刻になると思うんだけど?」
「え?」
皆が時計を見ると予鈴のなる2分前だった
「やば。皆急げ」
拓弥の言葉に皆が走りだす
「ちょと待ってよ聖さん記憶取り戻したら運動神経までよくなるってどういう事よ?」
誰かが叫ぶように言った
「そういやそうだな」
「え?」
「お前体育最悪だったから」
「うそ~?」
その言葉に皆が笑い出す
「あ、お前の下駄箱こっち」
「ありがと。よく考えたらクラスとかも・・・」
「俺と一緒。ちなみに席は隣な」
「本当に?よかったぁ」
そんな2人のやり取りに違和感を覚える人間はいなかった
しばらく戸惑うことは沢山あったものの李砂は少しずつ自分らしさを取り戻していった
何度も見た夢は自分自身を解放するためのキオクノカケラだったのかもしれない
Fin
「ちょっと待って~」
一人になった家に拓弥が迎えに来た
李砂はバタバタと慌てて家を出る
「おはよう拓弥」
今までとは違い笑顔の溢れる明るい声が響く
出て来た李砂は昨日までのまじめな制服の着こなしではなくスカートの丈は短くなりシャツのボタンも2つほどはずしたラフな着こなしに変わっていた
軽くヘアメイクもしていて垢抜けたようにさえ見えた
「・・・おはよ」
「どうかしたの?」
李砂は首をかしげる
「なんでもないよ。行くぞ」
「うん」
李砂は拓弥の腕に自分の腕を絡めた
記憶を無くすまで当たり前のように李砂はこうして腕を絡めていた
その懐かしい感覚に拓弥は一人喜んでいた
「ねぇ、記憶失ってた間の記憶がすごいあいまいなんだけど・・・」
「?」
「私どんな子だったのかな?」
李砂はためらいながらたずねた
「何で?」
「ん~制服とか部屋の中とかイメージが・・・」
「暗いやつだったな」
「・・・やっぱり?」
「自信がなくておどおどして・・・でもずっと俺だけを真っ直ぐ見てた」
「・・・」
李砂は黙り込む
「あれもお前の中の一面なんだろうな?」
「拓弥・・・」
「でも俺の横で当たり前のように笑ってくれる李砂が戻ってきただけで十分だよ」
拓弥はそう言って笑った
「昨日電話で亜紀と話してたんだけどね」
「ん?」
「モデルしてるって?」
「あ~」
拓弥は気まずそうに視線をそらす
「かなり迷ったんだけどな、モデルすりゃお前が何か思い出すかと思ってさ」
「・・・そっか、モデルの話よくしてたもんね・・・」
「あぁ。読者モデルとか載せたがってたろ?まぁ今してんのはそういうのとはちょと違うけどさ」
「あ、聞いた。スポーツブランドでしょ?見てみたいなぁ・・・」
「マネージャーに言ってみるよ」
「本当に?」
「あぁ」
「やった。拓弥大好き」
そう言って見せた笑顔は本当に幸せそうだった
「・・・こりゃ学校のやつたまげるな」
「え?」
「何でもない」
「え~気になる」
「気にすんな」
二人で笑いながら話していると拓弥は突然頭をはたかれた
「いって・・・?!」
2人が振り向くと俊がいた
「な~にじゃれてんだよ?」
「何だお前かよ」
「おはよ~俊」
「おう・・・ってかお前化けたなぁ?」
「?」
李砂が不思議そうに拓弥を見た
「・・・見た目」
「え?」
「別人みたいだな」
俊が笑いながら言う
「・・・そんなに違う?」
「あぁ、典型的な地味~な優等生だったからな。俺としては今のほうが声かけやすくていい」
「何だそりゃ?」
拓弥が苦笑する
「おはよ~」
「あ、亜紀おはよ」
同じく後ろからかけられた声に3人が振り向く
「昔の李砂だ」
「え~?」
「やっぱその方が李砂っぽい」
「亜紀までそんな事言うなんて・・・私そんな別人だった?」
「もう別人の域超えてるって。記憶なくすと性格まで変わるって初めて知ったわ」
亜紀は笑いながら言う
「これは周りの反応楽しみだな」
「言えてる。文句言ってた皆絶句するよ?本当の李砂はこんなにいけてるんだから」
「亜紀?」
李砂が困惑する
「大丈夫。私達がついてるから」
わけの分からないまま亜紀の言葉にうなづくしか出来なかった
実際門をくぐるなり周りが自分たちを見て何かささやいているのは分かる
「おい拓弥!」
「ん~?」
「誰だよその子?聖はどうした?」
誰かがそう言うなり李砂は困惑し3人は笑い出した
「どうもしないって。なぁ李砂」
拓弥は笑いながら言う
「・・・」
「・・・まさかこの子?!」
今度は声をかけてきた方が困惑していた
「あれ~瑞希新しい彼女?めっちゃ綺麗」
「本当だ~。ひょっとして同じモデルさんとか?」
「何だ拓弥聖から乗り換えた?」
「瑞希お前もやっぱり聖じゃ物足りなかったのか?」
声をかけてくる人皆が今の李砂を別人だと思っているようだった
「・・・あの~私聖李砂なんだけど・・・」
「「「「「・・・はい?」」」」」
李砂の言葉にその場に居合わせた皆があらためて李砂を見た
「冗談・・・」
「え~っと?」
李砂は拓弥を見た
「くっくっ・・・やっぱこうなったか」
拓弥は大笑いしていた
「ちょっと拓弥?」
「言ったでしょ李砂『周りの反応楽しみだ』って」
亜紀も笑いながら言う
「それは聞いたけどこんな反応ってあり?」
「まぁ李砂の気持ちも分からんでもないけどな」
俊も笑いながら言う
「私一体どんな人間だったのよ・・・?」
李砂はため息混じりに言う
「・・・ねぇどういうことなの?」
「話が見えねんだけど?」
「あはは。確かにそうだろうなぁ。でもこれが本当の李砂だよ」
「「「「「「え~?」」」」」
再び皆が悲鳴のような声を上げた
「李砂いっそ自己紹介からしたら?」
「・・・わかったわよ~」
亜紀の言葉にそう答え皆を見回した
「私は聖李砂。昨日無くしてた記憶を取り戻したところ。あと半年もないけどあらためてよろしくね?」
李砂は気を取り直して笑って言った
「そういう事だ。一時的に記憶を無くしてただけでこれが本当の李砂なんだよ」
拓弥は勝ち誇ったように言う
「拓弥そんなの自慢にならないから」
李砂は苦笑して言った
「それよりいい加減行かなきゃ遅刻になると思うんだけど?」
「え?」
皆が時計を見ると予鈴のなる2分前だった
「やば。皆急げ」
拓弥の言葉に皆が走りだす
「ちょと待ってよ聖さん記憶取り戻したら運動神経までよくなるってどういう事よ?」
誰かが叫ぶように言った
「そういやそうだな」
「え?」
「お前体育最悪だったから」
「うそ~?」
その言葉に皆が笑い出す
「あ、お前の下駄箱こっち」
「ありがと。よく考えたらクラスとかも・・・」
「俺と一緒。ちなみに席は隣な」
「本当に?よかったぁ」
そんな2人のやり取りに違和感を覚える人間はいなかった
しばらく戸惑うことは沢山あったものの李砂は少しずつ自分らしさを取り戻していった
何度も見た夢は自分自身を解放するためのキオクノカケラだったのかもしれない
Fin
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