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第2章
2-5・彼と過ごす、日常⑤
しおりを挟むまるで自分の根幹が崩れ去っていったみたいに感じられて。自分の中のぐちゃぐちゃになった気持ちを整理するために、少しだけ時間が欲しかった。
俺が家を飛び出して冒険者協会に行ったのはそんな理由。
そこだと相談に乗ってくれるって知っていたから。
実際に、職員のお兄さんはとても親身になって話を聞いてくれた。
それで、俺が魔法とか魔術だとかが得意なことを知って、少し頭を冷やすためにも時間を置くのもいいのかもしれないと言ってくれて。あとは、その時、たまたま協会にいた冒険者のアーディさんという人が、力になってくれることになったのだった。
きっと心配しているだろう家にも連絡を入れてくれることになり、俺は周囲の大人に甘えて、少しだけ冒険者として過ごすことにした。
はじめは本当は気持ちの整理が付いたら家に帰るつもりだったんだ。
あんまり長く、家出しっぱなしであるつもりなんてなかった。
でも、冒険者としての活動は面白かったし、わだかまりはなかなか消えなかった。
家に帰りたくない、そう思って、ずるずると帰るタイミングを引き延ばして、それで。
ルーシーと会ったのはそんな時。
家を出て、数ヶ月ぐらい経っていたと思う。
ルーシーはかっこいいお兄さんだった。
俺に弟はいたけれど、兄はいなかったから、兄さんがいたらこんな感じなのかなと思ったりもしていた。
ルーシーは優しくて、かっこよくて頼りになって、そして俺とずっと一緒にいてくれた。
一応、せめて連絡ぐらいはと周りから、何よりルーシーにも促されて、家に手紙は送ったけれど、でもまだ帰る気にはなれないまま。
はじめは、帰らないのは気まずいだとか、気持ちの整理がつかないだとかいう理由だったのが、いつしか帰ったら今のようにルーシーと過ごせなくなるのではないか、なんて思うように変わったのはいったいいつぐらいだったことだろうか。
それぐらい俺はいつの間にかルーシーと離れたくないそんな風に思うようになっていた。
それは気まぐれに旅をするようになって、国境を越えて隣国に来ても変わらなくて。今では泊まる宿も、今回のように家を借りる時も、同じ部屋で過ごしている。
実は寝台もほとんど一緒だ。
そちらのきっかけは確か、たまたま宿が1部屋しか空いていなくて、ベッドも一つしかなくて、俺は子供で小さいから、同じベッドでも大丈夫だろうという話になって、それで。それから。
ルーシーは俺を抱きしめて寝ると安心するのだと言っていた。
それは俺も同じだから嬉しい。
今ではもうルーシーと離れるなんて考えられないぐらいになっている。
俺は結局ただの家出少年で、でも叔父さんとか弟とか、何より両親のことを考えると、やっぱりどうしても家に帰る踏ん切りがつかなくて。ルーシーとも離れたくはなくて。
今では多分きっと、ルーシーと離れたくないだなんて理由の方が大きくなっているような気がする。
ああ、俺はなんて悪い子なんだろう、そう思う。
でも、今の俺はそれぐらいにはルーシーと離れたくなくて堪らないんだ。
ずっとずっと一緒にいたい。
ルーシーも同じように思ってくれていたら嬉しいなと、俺は今では密かにそんなことまで思うようになっていた。
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