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41・青年の正体②
しおりを挟むそれでは確かに魔力も少なくなれば、身分も平民となるだろう。
辛うじて王家の血を汲んでいる、と言う言い方からして、おそらくはその時点で、嫁ぎ先は高位貴族ではない。そこから更に、下級貴族、そして平民と血をつないで来たとなれば、それで王家並みの魔力など、残っているはずがなかった。
むしろそうなってさえ王家の血を汲んでいると把握されていることの方が不思議だ。
新たな疑問が顔に出たのか、リシェが小さく苦笑する。
「あはは。まだ不思議そうな顔をしている。本来なら、彼はただの平民なんだ。でも困ったことにこの国には今、確実に辿れる王家の血を引いている人間が、彼の他にはいない。正確に言うなら俺と、一応まだ辛うじて存命な父、そして彼の母と彼。そのたった4人だけ。他にはもう誰もいない。もっと探せば、もっと更に薄い血を汲んでいる存在なら見つかるかもしれないけど。でも、彼でもう6代、代を重ねているからどうかなぁ……」
彼より薄いとなれば、それはもはや血を継いでいる云々の話ですらなくなることだろう。そんなことはサフィルにもわかることだった。
と、言うより、王家の血を引いている人間がそのたった4人しかいないだなんて。
サフィルは知らずきゅっと眉をひそめた。
王族と言うだけでも何人いるかわからないナウラティス、否、サフィル自身、自分の兄弟の数さえわからないことを考えると、信じがたい話である。
もっとも、サフィルの事情は大変に特殊ではあるけれども。
なにせ母が特殊である。
ただし、母自身、伯父を筆頭に兄弟は多いと聞いていた。もっともその半数近くは養子ではあるのだそうだけれども。また、養子とはいえ、全員、少なくとも王家の血脈ではあるのだとか。
その更に父母を思っても少なくとも4人などで兄弟は多く、血が途絶えることなどあり得なかった。
サフィルにとってはやはり、理解しづらい感覚である。
だが、同時に母に心酔していて、他に目移りなどせず、サフィル以外には子供のいなかった育ての親と言える子爵を思った。
サフィルは正確に言うと彼の子供と言うわけではないので、彼の血筋は途絶えることとなる。
しかしそれでも親戚は存在したはずだ。
流石に4人だとか、そんなにも少ない数のわけがない。
それも、6代さかのぼってさえそれだなんて。
リシェは少し苦い顔で、更に続けて話し始めた。
「チェアデュ王家は情けないことに代々子供の数が少なくてさ。それでなくても、相手がなかなか見つからないんだ。俺も兄弟はいないし、父も同じ。代々そんな風で、2人以上、子供が出来ることが稀なんだ。必然親戚がいなくなってしまって」
どうやらチェアデュ王家と言うのは、ずっと子供の数が少ないらしい。
それはサフィルが初めて聞く話だった。
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