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23・食事
しおりを挟む程なくして食事らしきものが運ばれてくる。
数人の使用人らしき人達がてきぱきと動いて、クッションを除けたりなどしてトレイを置くスペースを作り、そこへ次々と食べ物を並べて行った。
それは僕の分だけかと思えばどう見てもそれ以上で。どうやら僕を入れてこの五人で食事をするらしいと覚る。
少し意外だった。
そう言えば、と思い出す。
この数日、一緒に旅をしている間に印象が薄れていたのだが、シズはホセの家では決して座りさえしなかったのだ。
だが、ここでは皆と食事を囲んでいて。
(……ホセさんの家は好きじゃなかったってことかな……)
などと内心首を傾げる。
それともあそこはテーブルと椅子があり、そこに座る様式のようだったので、そう言ったことに慣れていなかっただけかもしれない。
ここではクッションなどの上に直接腰を下ろしているし、旅の途中もそう、地面に直接座る他なかった。
食事を真ん中にして、その周りに円になるように座っていて、僕の傍らには支えるようにホセ。逆隣りは背もたれのようなものがあり、そこに身を預けたフォル。
フォルの隣にネアが控えていて、ネアとホセの間にシズがいた。
勿論、円とは言っても等間隔などでは決してない。
現にホセなどは触れるほどに近いまま。
フォルとの距離だって、少し身を乗り出すと触れ合えるだろう程度、
逆にネアとシズの間はそれなりに開いている。
並べられた食べ物は、見慣れているものや初めて見るものなどいろいろとあった。
その中でも果実らしきものを盛りつけた皿が一番大きく、ここが砂漠の只中であることを考えるとなんだか少しだけ不思議に思う。
ホセが白く平たいパンのようなものに手を伸ばす。
近くに置かれていた器から豆を煮た茶色い何かをパンで掬って取り、僕へと差し出した。
「ほら、デュニナ」
匂いからも、茶色いそれがホセの家で口にしたことのあるものだと知る。
「あ、りがとう、ございます……」
あむと口に運ぶと、以前食べたのよりもおいしくて、自然顔がほころんでしまう。
そうしたらなぜだかそんな僕を皆が見ていることに気付いて。
なんだか恥ずかしくなって俯いた。
「ああ、申し訳ございません、神人様。あまりに……お可愛らしく」
非礼を詫びてきたのはネア。僕は慌てて首を横に振る。
「いえ、そんなっ……! でも、あの……いつも、一緒に食事をしていたと思うのですが……」
共に旅をしていたのだ。今更ではないのかと控えめに訊ねると、ネアはふるりと首を大きく横に振った。
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