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53・夢うつつ④
しおりを挟む―神人殿は?
―また、眠ってしまわれたのですね。
―やはりここだと……。
―番と離れたままでいるのも、おそらくは。
―だが、そうはいっても、
―あちらも探しているのだろう? なら、
―もし、他の者が偽っていたら……。
―それこそ、神人殿に分からないはずがない。ホセ。お前はどうやら思う所があるようだが、私たちは、
―フォルこそっ! フォルこそデュニナを求めているのだろう?! 初めから保護だなんだとっ、
―否定はしないさ。だが、選ぶのは神人殿だ。
―しかし、
―ああ、それよりも、ほら、来たぞ。
―私が。
―頼む。シズ、あとどれぐらいかかる?
―然程には。もう近い。
―ふむ? なら何とか持つか?
―ギリギリだな。
―ホセは神人殿をしっかり抱えておくように。
―言われずとも。
僕はまた眠ってしまったのだろう。
なのに、皆が話しているのがわかった。
だけど目が明けていられなくて。
と、気配が揺れたかと思うと、影が撓んだ。
何者かからの襲撃と、それを迎え撃っているのだろう喧騒。聞くも悍ましい呻き声は、果たしていったい何のものだったのか。
わからない、わからないまま、辺りはいつしか静まり返ったようだった。
僕はただ、ぎゅっと抱きしめるように抱え込まれたまま。
―ああ、デュニナ。
縋るようなホセの声を聞いた。
僕は何も返せない。
辺りは相変わらず僕の番の甘い匂いで満ちていた。
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