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しおりを挟むその日、澄月は白家当主に就任したことを報告しに、挨拶に訪れただけだった。
それがどうしてこんなことになったのか。
澄月は自分の容姿が優れている自覚がある。
母に似た女性めいた美しい面立ちは男らしさとは無縁で、いっそ劣等感さえ抱いているほど。
だからこそ優れた容姿になど価値を見いだしておらず、余計に現状が理解できない。
ただ一つわかることは、逃げなければならないということだけ。
だけど。
「お前、名は何といったか」
今、自分を組み敷く男に、澄月は抗うすべを持たなかった。
立場も、膂力も魔術や道術の腕前だって、この男には遠く及ばない。
しかし、このままこの男のなすがままでいることは酷い危険性が感じられて。
どうすればいいのかと必死に頭を働かせながら、ひとまず、訊ねられたことに端的な答えを返すことにした。
抗っても無駄であるのだから、そうするしかなく。
「澄月です。白 澄月」
「澄月か……」
名乗った澄月の名を舌で転がすように反復した男は、思わず逃げ出したくなるほどの獰猛さを滲ませている。
壮年の男である。今年、さていくつになるのだったか。
それもまた、この男にとって、重要なものにはなり得ないようだつた。
自身の年齢や現在の状況などは何も問題とならず、この男の行動を妨げるものはない。
ここ、大帝国、華の先々代皇帝。
歴代皇帝の中でも五指に入るほど魔力値が高く、政治や武を始め何事においても非常に優秀かつ有能で特に魔術や道術に至っては、右に出る者がいないほど。
唯一の欠点は非常に潔癖で、特に色ごとに無関心であったこと。
男の為に開かれた後宮にも一度も足を向けることなく、誰も閨に呼ばなかったと聞いている。
剰え弟の成人を待っていたかのように、在位10年で退位し、先代皇帝に譲位した。
それは謂わば、皇帝という地位さえ、この男にとって価値がないというも同然の行い。
しかし、それでもなお、この国でこの男に敵う者など、誰も存在しなかった。
澄月自身は勿論のこと、侍従や護衛さえ、この男を止めることなどできない。
甥である当代皇帝にさえ、多大な影響力を持つという。
だからこそ澄月はこうして、この男に当主就任の報告へと訪れていて。そして。
澄月は震える体を叱咤して、どうにか辛うじて男から視線を逸らすことに成功した。
だけど感じる。
そうしてなお、男の黄金色の目が、澄月を射抜いていることを。
「澄月」
男が顔を伏せる。顔ごと視線を逸らせた所為で、露わになった首筋に口を寄せられて、澄月は慄いた。
男が醸し出す色めいた雰囲気が、澄月を恐怖に陥れる。
どうしてこんなことになったのか。
考えてもわからなかった。
この男は、色に一切手を付けないほど、潔癖なのではなかったか。だからこそ壮年となったこの年まで、独身を貫いていると聞いていた。なのにどうして今、澄月はこんな事態に陥っているのか。
「いい匂いがする。澄月。お前は匂いまで美しいのか」
惚けたように陶然と呟かれたとして、恐怖しか感じない。
澄月はその容姿の美しさゆえに、これまでこのような状況に陥ったことが幾度もある。だが、あくまでも澄月は名家である白家の嫡子。護衛もついていれば、澄月自身、魔術や道術には特に腕に覚えがあった。故にこれまで、純潔を貫いてこれたというのに。
それら全てがこの男の前では意味を成さない。
同じ部屋の中に侍従や護衛も控えているはずなのに、この男を諫められる者さえいないのである。
「お、お戯れを……」
澄月は必死に男から身を離そうとした。だが、圧し掛かられ捕らわれた体は男の手の打ちも同然で。
「戯れなどではない。余はこれほどまで誰かを欲しいと感じたのは初めてだ」
言いながら男の舌が首を這う。
男の手が、服を乱して澄月の体を弄った。
「ひっ」
欲を灯すいやらしい触れ方は澄月に恐怖しかもたらさない。
「悲鳴まで愛しい」
男は縮こまり強張る澄月に構わず、好き勝手に澄月の肌を舐め、乱暴な手つきで布を裂きつつ、澄月の体を暴いていく。
「お、おやめくださいっ……お許しをっ! 陛下!」
「陛下ではない」
ついには明確に拒絶の言葉を吐く澄月を、男はぴしゃりと跳ねのけた。
更には呼び方さえ指摘する。
「余の名は玉冴だ。お前には特別にその名を呼ぶことを許そう。さぁ、余の名を呼べ、澄月」
そんな風に指示されて、澄月に抗えるはずはなく。
「玉冴、さま……」
震える唇でようやく男の名を口に乗せる。
澄月の言葉を聞いた途端、男があふれんばかりの喜色を宿しての他これでもかと伝わってきた。
「ああ、そうだ、澄月。愛しい花よ、余の花。澄月」
「あっ、あっ、ぃやっ! おやめください、玉冴さまっ……! 玉冴さまっ……!」
がしと、容赦なく股間を握られ身悶える。痛いほどの力。澄月を慮る気持ちなどまるでない。
それでいてぎゅむぎゅむと刺激を受けると、痛みと恐怖に縮み上がっていた其処は僅かに反応を見せ始める。
「はは。いやだという割には感じているではないか、澄月。愛い奴よ。なんと淫らな体なのか。それを含めてもなお美しいとは」
男の言葉に、ますます辱められているような気持ちになった。
居た堪れなくて頬が赤らむ。
男の言うように、確かに萌し始めている自分自身がどうしようもなく恥ずかしい。
怖いのに。痛いのに、どうして。
調子づいたかのように男の手指は勢いを増し、澄月の股間から手を離したかと思うと、滑るように更にその奥を暴き始めた。
「あっ!」
指だ。
男が指を、澄月の後ろに無理やり押し込んでいる。
痛い。
これまで感じたことのない痛みだった。
先程の刺激で滲み始めた先走りが後ろにまで滴り、多少の湿り気となって入るようだったが、そんなもので足りるはずもなく、本来何かを受け入れるようには出来ていないはずのその場所は、男の指を拒むように喰い占める。
「凄い締め付けだな、痛いぞ、澄月。もっと緩めろ」
「ぁっ……ぅ……お許し、を……玉冴さま……」
言いながらも男は澄月の体の抵抗になど構わず、強引に指を動かし始める。
男の指をくわえさせられた胎内の皮膚は引き攣れて、じくじくと疼くような痛みを澄月へと訴え続けた。
我慢できないほど壮絶な痛みではなく、だが無視できるはずもない違和感。
「何を許せというのだ。許すものか。この美しさで余を一目で虜にした。それがいかに罪深いことなのか。この身でとくと味わうといい」
いつの間にか男は息を荒げ、そのような言葉を澄月に浴びせかけ、強引に躊躇なく、澄月の腹を解していく。
「ぁっ、ぁっ、おやめくださいっ、痛い、玉冴さまっ……」
押し込められた指は引かれたと思えば増やされ、いったい何をどうしたのか、いつの間にか澄月の腹の中からは水音が聞こえ始めていて、音にでさえ、澄月は犯された。
「痛がる様も美しいな? 澄月」
澄月。
何度も名を呼ばれ、乞われ、すっかり暴かれ切った下肢はもはや男を妨げる何かになどなり得ず、男にぐいと足を開かれ、片足を抱え上げられる。
腰が、男と触れていた。男自身の、それと。
「ゆ、玉冴さまっ……! それだけはっ! それだけは……」
「澄月」
怯える澄月を男はむしろ酔うように楽しんでいた。
うっとりと澄月の名を呼んで、男がぐっと、腰を押し当てた。
「ぁっ、ぁあああっ!!!」
それはただの衝撃だった。
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