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3・王宮にて
*3-8・何故かすんなりは進まない
しおりを挟む初めは触れるだけ。
しだいに絡みつく。唇を食み、次には舌で。
「はっ、ん……」
息を継ぐためだろうか、緩められた間をこじ開け、口の中を舐っていく。
唾液が甘い。どこか、苦いくちづけなのに、どうしてこんなに君は甘いのだろう。
びちゃ、唾液が絡みつく音がティアリィを侵していくようだった。
「ティア、リィ……」
時折、角度を変えて。あるいはそのままねっとりと。唇が腫れそうなほど、執拗に繰り返すくちづけの合間に彼の名を呟く。
ティアリィ。
僕は興奮していた。
ああ、君に触れている。触れて、触れて、剰え君にくちづけて。
胸がいっぱいになる。君が、愛しくて。それがどうしてか、切なくて。
ティアリィは僕を拒まない。抵抗などほとんどなく、抗わず、僕のなすがまま。
混乱している、というのはあるだろう。僕を嫌ってはいない。それも、理由の一つ。後は、なんだろうか。なぜ、彼は拒まないのだろう。なぜ、こんな、いっそ受け入れるかのように僕に応えて。
否、何でもいい。拒まれてなければそれでよかった。もう、それで充分な……はずだった。だから僕は。
ティアリィの方から僕に、縋りついてきてくれる。僕を、求めてくれているのではなくとも、僕を、受け入れてくれている。
僕はもうそれだけで堪らなくて、思いの丈を込めて、彼を抱きしめた。
幾度となく唇を塞いで、吐息ごと奪って、口の中を味わう。唾液に絡めて魔力を乗せ、彼からも同じものを受け取った。甘い。どれだけ、そうしてくちづけていただろうか。ふと、二人揃って息を吐いた時には、僕の息も、ティアリィのそれもすっかりと上がってしまっていた。
体が熱を持つ。ティアリィを求めて下肢が固く、漲っている。
自然、荒くなりそうな息を努めてゆっくりと吐き出しながら、彼から目を離さないまま、自らの衣服を寛げていった。
火照った体が空気に触れ、少しひんやりと感じられる。だが、そんなものでは少しも冷めず。
見下ろしたティアリィはしどけなく蕩け、僕の脳を痺れさせるような色気を滴らせている。
真白い肌が眩しい。ああ、全てにくちづけたい。
今から僕は、この、極上の肢体を暴くのだ。ああ、そう思えばもう、僕は。
ティアリィ。
ティアリィが、僕を見ていた。露わになっていく、僕の肌を、何らかの期待が籠ったかのような熱を帯びた眼差しで。舐るように、僕を見ていた。
興奮する。すでに固くなっている下肢が、今はもう痛いほど。脳が痺れ、息が荒くなる。
僕を、熱を帯びた眼差しで見ていたティアリィがごくり、一つ小さく息を飲んだ。だが。
ティアリィの眼差しがゆっくりと、僕の上を這い、降りて、そして……――止まった。
視線の先は、僕の、痛いほど張り詰めた下肢だ。すでにトラウザースを窮屈そうに押し上げている。
ティアリィの視線はそこから動かない。
ん? ティアリィ?
「で……でん、か?」
僕が呼ぶ前に、ティアリィの声が僕に届いた。僕は応えるように首を傾げる。
「どうしたの? ティアリィ」
ティアリィはどう見ても僕の其処を凝視していた。まさか今更、我にでも返ったのだろうか。だが、僕はもう逃がせない。
もう一度彼の上、伏せようとした顔は、どこか、怯えたような彼の眼差しによって止められた。
ティアリィ?
「あ、あの、ちょっとお伺いしたい、ことが……」
ティアリィの声が、少し掠れている。いったいどうしたというのだろう。何が、聞きたいのか。
「何かな?」
努めて慎重に息を吐いて、彼を、出来るだけ安心させられるように柔らかく促した。
ごくり、改めてティアリィが唾を飲み込む。
ティアリィの、先程のくちづけですっかり真っ赤に晴れ上がった艶やかな唇が震え、微かな声を僕に聞かせた。
「えっと、あの、今から、何処まで……何を、」
ティアリィの問いは本当に今更と言えば今更で、こんな雰囲気でこんな状態の僕を前に、いったい何を言っているのだろうかと思うと、僕は自然と深く笑みを浮かべていた。
ティアリィの視線は、僕の下肢から離れない。
つまり、ティアリィだって、今から僕がしようとしている行為をしっかりと認識しているということだ。
ああ、ティアリィ、今更、何を聞いているのだか。
「何処まで、何を、ってそんなもの……勿論、僕は君を、全て貰い受けるつもりだよ。言っただろう? もう、堪えられないって」
柔らかく告げた。
逃がさない。
もう、逃がさない。
逃げたいのなら、もっと全力で抗わなければ。
それでも離れないティアリィの視線に、少しだけ苦く笑う。
「気になっているのは、これかな?」
言いながら窮屈なトラウザースと下着から、僕自身のそれを取り出した。途端、ぶるんっと、勢いよく反り返り、力強く天を向いてしまう。興奮しきった僕自身なのだが、それほどにティアリィが気にするものなのだろうか。
確かに見る限り、ティアリィのそれとはどうも大きさや他も随分と違うようではあるが。
ティアリィがぎょっと目を見開いてそれを見ていた。
珍しい表情で、僕は笑ってしまう。ああ、君はそんな顔も見せてくれるのかと、そう思って。
不安なのかもしれない。きっと、ティアリィはこんな経験などないだろうから。とは言え僕だって、座学以上のことなど知らないのだけれど。
「大丈夫だよ」
僕は彼を安心させるように、努めて穏やかに告げた。
大丈夫。君に痛い思いなんてさせないから、僕に任せていてほしい。だって。
「君も知っているだろう? 僕の得意なのは身体操作だよ」
ついでに言うと、治癒も苦手ではない。彼女の妹ほどではないが。
たとえもし万が一、彼を傷つけてしまうようなことがあっても、僕なら治せるのだから問題はなかった。ティアリィ自身だって治癒魔術は得意だったはずだ。
否、そもそも、彼を傷つけるつもり予定自体がないのだけれど。
僕の言葉にも、どうしてかティアリィは不安そうな顔をしたままだった。
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