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30・治癒魔術と軽食②
しおりを挟むお腹の音をグローディに聞かれた。
それはなんだか、ばつが悪くなるような羞恥を俺にもたらせた。
恥ずかしい。そう思う。
知らず、頬を赤く染めた俺を見てか、グローディは小さくくすりと笑って。
「ミーシュのかわいいお腹がお返事してくれましたね。軽食を用意させます。シェスも呼んで共に。いかがですか?」
柔らかく訊ねられ、気まずく思いながら小さく頷いた。
グローディは寝台から降りようとしている俺の意思を違えず汲んで、ごくごく自然な仕草で支え、手伝ってくれる。
まるでエスコートでもするかのように、恭しく傅かれた。
自分の格好を確認すると、昨夜とは違って着た覚えのない寝間着のような姿。
誰が着替えさせてくれたのだろうかと一瞬思って、そんなの、一人しかいないだろうと思い直した。否、貴族だとシェスは言っていたから、使用人がそうしてくれたのかもしれないけれど。
「起きるのでしたら、着替えなければなりませんね。少しお待ちください」
俺が自分の服装を気にしていることに気付いたのか、それとも初めからその予定だったのか、グローディは俺を寝室の隣のくつろぐためだろう部屋へと促し、そこのソファへと導いてから、俺が腰を落ち着けるのを確認した後、一言いい置いて何処かへと歩いていく。
為すがまま背中を見送ったかと思うと、すぐに戻ってきたグローディは、手に服らしいものを抱えていた。
着替えはどうやらグローディが手ずから手伝ってくれるらしい。
「もう夕方になりますから、簡素なもので良いでしょう。こちらをどうぞ」
差し出された服はどうにも見慣れないように思える。だが、よくよく考えると、昨夜気が付いた時に来ていたものと似た印象の、下衣とシャツだ。
今の寝間着が膝下まである、前にボタンのついたネグリジェのようなものなので、きっとそれよりはいくらかすっきりした印象になるだろう。
何も言わずとも自然と俺の着替えを手伝うグローディの様子は妙に手慣れていた。
いったい誰を、こうして手伝ってきたのだろうと、なんとなく面白くない気分になって、だけどすぐに、誰を、だなんて決まっていると思い至る。
レシア様だ。以前の俺自身。おそらくグローディはもうずっとこうして俺の世話を焼き続けてきたのだろう。
それはもう献身的に、ずっと。
なんだかもやもやした。
でも、それをどう表に出せばいいのかわからない。
ただ、俺が面白くない気分になったのを敏感に察したグローディは少し困ったような顔をして、俺は今度は逆に、なんだかひどく申し訳ない気持ちになったのだった。
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