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31・治癒魔術と軽食③
しおりを挟む幸いにして、渡された服は着るのに困るような複雑な服ではなかったので、それほどグローディの手を煩わせずに済んだ。
俺の想定しているような服装と一番違うように感じられたのはボトムスだろうか。
股上が深く、余裕を持ったつくりになっているようで、下腹部を概ね覆ってしまえるようになっていた。
おそらくは俺の腹が膨らんでいるからなのだろう。
グローディが慣れた様子で締め付け過ぎないように調整してくれる。
見下ろすと異様に大きくなったお腹。
それでもまだ大きさは控えめだということで、もっと更に膨らんでくるのだという。
こんなに大きく見えるのに。でも確かに、そう言われると、先程夢に見た俺の腹は、もっと大きくてはち切れそうになっていた。
あれぐらいまで膨らむのだろうか。なんだか恐ろしいと思う。
ここに子供がいるという。
レシア様とグローディの子供。
なのに、今、この子供を宿した体を使っているのは俺なのだ。
気味が悪かった。
なんだかわけのわからない何かが其処にあるように思えて、怖くて堪らない気持ちになる。だけど、同時に、本当にここにあるのが子供だとして、その子供を、俺が今、どうにかしてしまえるかもしれないという事実もまた怖かった。
男なのに、子供を宿していることと、その子供をどうにかしてしまえること。どちらがより怖いのかというと、俺にとってはどうやら後者のようなのだから、わけのわからない存在が自分の体の中にあることの方は飲まなければいけないのだろうとそうも思う。
わけがわからなくて怖いからと言って、排除すると考えると、そちらの方が怖いのだから、仕方がない。
自分の腹を見下ろし、難しい顔をする俺を、グローディは過剰に構ったりしなかった。
むしろある程度は触れないようにしている節さえある。
もしかしたら、昨夜、説明を拒絶した俺に、何処まで何を伝えるべきなのか、どう接すればいいのか。グローディも判断しあぐねているのかもしれないと思った。
かと言って、過去の俺のことを思うと、否、過去の俺とグローディのことを思うと、面白くない気持ちが拭えず、やはりそれを匂わせられるようなことは知りたくないと思ってしまう。
それはきっと俺の我が儘だ。でも、どうしても嫌だと思う衝動を抑えられない。それはきっとグローディにも伝わっているのだろう。
だからこそ今もグローディは余計なことを俺に言わないようにしているように感じられた。
そしてそれは間違いなく、グローディの俺に対する気遣いなのである。
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