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32・治癒魔術と軽食④
しおりを挟む着替えが済んだら促され、そのまま部屋を出て向かった先は食堂だった。
向かう途中に使用人に指示を出し、呼び寄せたのだろう、程なくしてシェスが顔を見せる。
グローディに寄り添われながらでもきちんと一人で、席に着いている俺を見て、シェスが少しばかりほっとした顔になった。
「よかった。目が覚められたんですね」
ついでに、おそらくちゃんと起き上がれていることも喜んでくれているような気がする。
どうやら随分と心配をかけていたらしい。
だが、それはいったい何に対する心配なのだろうかとちらと思ったが、口には出さないことにした。
「もう時間も時間ですけど、軽食をと思って。ミーシュは昨夜から何も食べていませんし、おそらく貴方がいた方がいいでしょう」
グローディがそう言って席に着くよう促す。そこで俺はふと、グローディのシェスに対する態度に違和感を覚えた。
どうしてだろうか。まるで目下の者に対するような口調だ。
二人を改めて見比べると、やはりどう見てもシェスの方が年上に見え、だから俺はシェスはグローディの兄か叔父ではないかと思っていたのだけれど。
否、そういう関係性の兄弟だったりするのかもしれない。だが。
「ありがとうございます。でも珍しいですね、僕の同席を許して下さるなんて」
「ミーシュにはおそらく、今はその方がいいでしょうから」
「なるほど。変わりませんか」
「ええ」
続けられたやり取りに、俺はますます混乱することになった。
口調と態度がどうにも、グローディの方が上なのである。
ただ、思えばシェスは俺に対しても、敬意をもって接している様子を見せていた。
立場が違うとでも言うかのように。
混乱する俺に気付いたのだろう、シェスがにこと笑いかけてくる。宥めるような笑みだ。
「ミーシュ様、不思議そうな顔をしてらっしゃいますが、何もおかしいことはございませんよ。ご安心下さい。ですが、二人だけで話してしまってお気を悪くさせてしまっていたら、とても申し訳ないのですが……」
へなと困ったように眉尻を下げるのへ、俺はふるりと首を横に振る。
「いや、それは全然、ちっとも。ただ……」
グローディとシェスを見比べる。やはりどうにもよく似て見えた。血縁関係は疑うべくもないほどに。
「気になっていらっしゃるのは私の立場ですよね。今、お伝えしても問題ございませんか?」
そう、問いかけてきたのは、俺自身に受け止める心づもりがあるかどうかの確認のためなのだろう。
俺はこくりと頷いた。
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