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43・辿り着いた答え
しおりを挟むそんなシェスの微笑みに後押しされるように、俺は考える。
自分自身のことだ。
俺はグローディが好きだ。
その気持ちだけは揺らがない。
わけのわからない嫉妬心を抱いてしまうぐらいに、俺はとにかくグローディが好きなのだ。
でも、グローディが俺を好きではないこともまた分かっていた。
シェスは、否、グローディ自身も否定するかもしれない。
だが、グローディが好きなのはレシア様だ。愛しているのも、また。
俺が俺になったのはつい昨日のことで、それでレシア様じゃなく、俺を選んで欲しいだなんて、そんなことが無理なことぐらい、俺はちゃんとわかっていた。
だからこそ嫉妬してしまってならないのだから。
ならばいったいどうすればいいのか。
考えた。
嫉妬してもいいとシェスは言う。
そして、そういった嫌な感情も、抱いてしまって、もやもやしたり、苦しくなるなら、シェスに向かって吐き出せばよいと。
それは俺はよくない事だと思うのだけれど、そんなのただの理不尽な八つ当たりだとしか思えないのだけれど、シェスは構わない、そういうのだ。
多分その理不尽な八つ当たりを自分にぶつけて欲しいと、そう。
なんとなく、気持ちが軽くなった気がした。
自分を肯定されるというのは許された気持ちになって、心が落ち着くようにも思えた。
ぐるぐる、ざわざわ、荒れるばかりだったこの心が、だ。
俺は多分、きっとまだ嫉妬するだろう。
こうしてシェスと話していても、自分がもうもやもやしないだろうだとかそんなことは全く思えない。
でも、少しだけ気持ちがすっきりしていた。
見えてきた何かがあるようにも思えた。
「……シェス」
呼びかける。
まだ、考えはまとまっていない。
だけど、呼びかけた。
それはおそらく、俺自身の、考えをまとめる為だった。
「はい、なんですか?」
シェスは穏やかに首を傾げた。
俺の言葉を、待ってくれている。
その変わらない穏やかさに後押しされ、俺はゆっくりと口を開く。
「俺、グローディが好きなんだ」
好きで好きで、堪らない。
自分でも、なんでこんなに好きなのかわからない。でも好きだった。
「ええ」
シェスが小さく、だけど確かに頷いた。
シェスは俺を否定しない。俺のことを何も。それはきっとグローディも同じだ。
「だから俺、グローディに、俺のこと、好きになって欲しい」
だけどシェスは、流石に、俺のこの発言には固まった。
多分、わけがわからないのだろう。
だってきっとシェスの中で、グローディはちゃんと俺のことが好きだから。
でも俺は、そんな風には思えない。
言葉を、付け足した。
これできっとわかってくれると信じて。
「俺、レシア様じゃなく、俺のことを。好きになって欲しいんだ」
昨日までの俺ではなく、今の俺を。
シェスも、なんとなく俺の言いたいことが分かったのだろう、
「あー……」
なるほど。
と、言わんばかりの声を上げた。
少しだけ考えて、やがて頷く。
「うーん、いいんじゃ、ないですかね……僕は正直、それはちょっと難しいかもしれないと思いますが、でも、いいと思います。うん。そうですね、ええ、頑張ってみましょう」
そしてやっぱり、そんな風、俺の言葉をただ肯定してくれたのだった。
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